親友に頼まれる
実況配信を始めてから3カ月、配信を続けていくことで登録者数はそこからジワジワと、本当に数人数十人レベルで増えてはいったが、収益化している人たちは本当すごいなと思えるほどに収益化は遠かった。
そんなある日の放課後、高スペック男子直人が相談してきた。
「新さ、ゲーム得意じゃん? あれやってる? 最近流行ってるOPEXってやつ。渋谷駅に広告あるやつ」
「渋谷なんて行かないから渋谷に広告があるかは知らないけど、やってるよ」
「おー、流石ゲームだけは最先端」
「陰キャ界隈でも最先端だよおれは多分」
「なんか妹の友達の姉ちゃんがさ、高校生で個人でバーチャル配信者やってるらしく、OPEXの配信やっていきたいけど下手すぎて流石に可愛いだけでは乗り切れないらしく、タダでちゃんと教えてくれる人を探してるんだと」
「妹の友達の姉ちゃんってもう他人じゃん…そもそもおれも人に教えるほどうまいわけでもないし、直人以外のリアルな人とちゃんと話せる気がしない」
「まーそういわず、親友のお願いだと思ってさ? ここで親友じゃないって言われたら俺傷つくよ?」
「ぐ…いつもお世話になっています………。でもリアルに本当そんな教えれるほどうまくないんだって」
「おれがやってたウォートナイトと一緒でランクあるんでしょ? ランク帯どこなの?」
「……………………………」
「どうせキャラ名「アーク」か「Ark」か、それに「0620」の組合せだろ?調べたらわかるんだぞ?(ニヤニヤ)」
俺はほとんどのゲームを、「アーク」「Ark」使えない場合に誕生日の「0620」の組合せのアカウント名で登録している。
最初のゲームでアカウントを作るときに考えた結果、小さい頃に呼ばれていたあだ名「あっくん」を少しもじったものにした影響で、他のゲームでもそれを使っていた。
「くっ…………。前シーズンは、ギリギリだけどdest帯でした……」
「へーー。それがどんなもんかわからんけど、とりあえずデスト帯というところらしいよっと。」
そう言うと直人は、スマホを操作した。恐らく妹に送ったのだろう。流石にその妹の友達に手を出しているとは思いたくない。
「お、速攻返事来た。えー…『全プレイヤーのTop500人以内の人だよ! めちゃくちゃうまいってこと!』ね。なるほど、予想通りすげーじゃねーかーーーー!」
俺が実況配信しているOPEXは、3人1チームのチームでの撃ち合いゲームで、試合の結果に応じてポイントがプレイヤーに割り振られる。
そのポイントによってランクがわけられ、あまり離れたランクの人と試合することにならないようにするランク制度が導入されている。
ランクは、ブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→ダイヤ→ミスリル→デストロイヤーとなっており、デストロイヤー以外はさらに細かい区切りがあり、一定のポイントを超えることでランクが上がっていく。
デストロイヤー帯だけは、一定のポイントではなくポイントの上位500人が集まるところである。
それまでは、一人でやることが多く、それでもミスリル帯までは必ず行っていたんだが、前シーズンは後半でデス帯のフレンドの人に呼ばれることが多く、それに引っ張られて俺も初めてデストロイヤー帯となった。
珍しくスクリーンショットなんかも撮っちゃったし、なんだかんだ嬉しかった。
「いや…まぁ前回はまぐれというか…フレンドに助けてもらった感じだし…」
「いやいや、助けてもらったからって、そういうランクに簡単になるようなもんでもねーだろ?」
「まぁ…それはそうではある…」
く…、直人のやつどんどん逃げ場を無くしていきやがる…。
「んじゃ教えてやってよー! なっ?」
「う…わかった…とりあえず一回やってみるけど、上手くできなかったら断ってもらっていいから…」
「わかったわかった! そこらへんは妹に伝えておくわ! んでこれどうしたらいいん?」
「アカウント教えてくれたら、俺からフレンド申請送るから俺のアカウント名からフレンド申請来たら許可してもらえたら後はこっちでできるかな」
「おっけー、んじゃ後でお前のアカウントLIMEで送ってくれー」
「わかった…」
「ってか相手の人バーチャル配信者だからパソコンだと思うけど、お前パソコンでもできるの? 他のゲーム機とパソコンで出来るの?」
「OPEXはゲーム機をまたいだマルチ接続はできないけど、俺実はほとんどパソコンでやってるんだわゲーム。だから大丈夫。」
「おーまじか! ガチ勢じゃん!」
「親が理解があったから、小学校の時にゲーミングPC買ってたからな」
「ま、これで問題もなくできるってことだしよかったよ!」
「うまくできなかったら本当断ってもらっていいからって伝えてくれよ」
「わーったよ! とりあえずサンキューな! これで妹の先輩の可愛い人紹介してもらえるぜ!」
「おまえ…」
「ちょっと派手目らしいんだけど、めちゃくちゃスタイルよくて可愛くて近隣の高校でも有名らしいんだよ!」
そんな流れで、急にバーチャル配信者の人にゲームを教えることになった。
しかし他校の女子を紹介してもらう為の妹との取引を、おれを使って成立させるとは中々効率のいいやり方だよな…なんて思いながら帰りの電車に乗った。