喋れる気がしない
莉乃愛の件が解決した翌日、あげはさんの中の人、中里雪菜さんと会う日だ。
莉乃愛から今朝、デートに行くと言われ、俺がそのヘッドショットのような一撃でダウンしている間に莉乃愛は学校に行ってしまった…。
どうしよう…。
俺がそんなことを思いながら学校に行くと、直人が話しかけてきた。
「今日だな! 楽しみだな! どんな子かな!」
と直人はワクワクした感じで話してくる。
ああ、そうだ…。
今日の放課後に、白風あげはさんの中の人の雪菜さんと会うんだ。
そう思うと一気に緊張してきた。
単に相談にのるってだけなのだが、雪菜さんは恐らく同学年だと思われるが、同年代でこれほど話したことがある異性はあげはさんもとい雪菜さん以外存在しない。
莉乃愛だって、最近話し出したばかりで、雪菜さんの方がこれまでに色々話してる。
アークとしてだけど…。
俺リアルでちゃんとちゃんと話せるだろうか。相談にのるんだから何か発言しないと…
急にそれが不安になり、俺は衝撃的な緊張に見舞われた。
「し、知らない…」
「なんだ緊張してんのか?」
「今直人に言われて衝撃的な緊張に見舞われた」
「んだよ、わかってたことだろ」
「休日は色々あって考える余裕がなかった」
「へぇ、珍しいな。何があったん?」
「まぁそれはいずれ…」
その日の授業は一切頭に入ってこなかった。
そして放課後、
「新、いくぞー」
「お…おう……」
「お前まだ緊張してんの?」
「朝からずっと」
「いやいや、授業もあったろうが!!!!! ってかお前、よく考えたら女子に会うっていうのにそのまま行くの?」
「それは問題ない」
「いや、お前の問題じゃなくてーー(笑) せめて髪切ってくるぐらいしろよぉーー」
「それは問題ない」
「壊れたロボットみたいになってんじゃんーーーーー!」
「やっぱりやめようかな…」
「もーーーほら行くぞーーーーー」
直人にそう言われて引っ張られながら、俺達は指定された新宿のファミレスに向かった。
指定されたファミレスの前まで来て、
「ほら、もうついてるかどうか連絡しろよ」
「なんでおれが」
「いやだっておれどっちも連絡先知らないし。妹ちゃんとは会ったことはあるけど」
「くそ…使えない…」
「いやいや、今日一緒に来てる時点で結構使えてるはずだろぉーー」
「う…ありがとうございます。」
「ほれ、連絡しろ」
『ファミレスの前まで来ましたが、もういらっしゃいますか?』
『あと10分ぐらいで着きます!』
「あと10分ぐらいだそうだ」
「んじゃ先はいってようぜ」
「わかった」
「いや、先はいってるって連絡しろよーー! おれ相手だったらそれぐらいのレスポンス出すだろうがぁー!」
「はっ…問題ない」
「問題しかねーよ…」
『先に入ってますね』
『了解しました! 妹が八代さんを知っているそうなので、中に入って見つけます!』
「連絡した。妹さんが直人を知ってるらしいから中に入って見つけると」
「いや、それおれもさっき言ったじゃん…」
そうして、ファミレスの中に入って適当にポテトを頼んでドリンクバーを取りに行って待っていると、それらしき女子高生が2人店に入ってきた。
ちょっと待て。これだけ陰キャなおれがこの距離でもわかるぞ。めちゃくちゃ美人だ。二人とも。
「おー来た来た。こっちー」
と言って直人が手を振った。
「ほら、お姉ちゃんこっちだってー」
「あ、うん」
そう言って二人は席まで来て座った。
「彩春ちゃん久しぶりだねー! あ、ドリンクバー頼んでおいたからなんか持ってきていいよー」
「お久しぶりですー、流石、気が利く! お姉ちゃんいこっ!」
そう言って二人は鞄を置いて、ドリンクを取りに行った。
妹は彩春さんというらしく、セミショートぐらいの黒髪に二重の大きな目でどことなく少し猫っぽい感じがする。
雪菜さんと比べると少し背が小さく、制服をお洒落に着崩した感じで、スラっとしているけど不健康な感じでもない。
そして雪菜さんはというと、セミロングくらいで少し茶色というか色素が薄め(?)な感じの茶色?黒色?という感じの色で、彩春さんと同じく二重の大きな目で、雪菜さんは猫っぽいという感じではないが、とにかく顔が小さい。
もうなんというかただの美少女だ。
それ以外に表現のしようがない。
そして、制服は特に着崩しているわけでもなく、華奢な感じで、そして制服の上からでもわかるが結構胸がある。
もう美少女というかモテる要素を全て詰め込んだような感じなんだろうこれは。
「新、やばいぞ」
「…」
「彩春ちゃんも可愛かったからお姉さんも可愛いのではと思っていたが、想像をはるかに超えてきた」
「…」
「なぜバーチャル配信なのかわからないってか、もはやそのまま芸能人レベルだぞこれは。親父の事務所に入れる」
「…」
直人の親父さんは、2代目の芸能プロダクションの社長でそこそこ有名なタレントさんを抱えており、直人は小さいころからそういう人たちをよく見てきていた。
「おい、おーーーーーい。あらたさーーーーーーん」
「……………………喋れる気がしない」
「いや、まぁ普通でも無理なのに、ありゃ芸能人レベルだ。それが急に訪れたら確かにな…おれは慣れてるから大丈夫だけど」
そう言ってると、二人がドリンクを取って戻ってきた。




