【菅谷莉乃愛視点】兄貴
あっくんのお父さんが兄貴の働くホストのお店の偉い人に話してくれて、今回の問題の人に対処してくれることになった。
そして当日、元の家に行くと、なんだか超高級そうな車がずらっと並んでいて、それだけで私はびびった。
そして、咲夜さんと言う人が家に向かうと、あのアホそうなくそホストが出てきた。
顔を見ただけで嫌悪感がある。
なんだかあいつに触られた胸が未だに気持ち悪く感じてしまう。
でも、あっくんが前に立ってくれてるから今は大丈夫。
きっとあっくんが守ってくれる…。
絶対大丈夫だと言われてるけど、あっくんがいるだけで心強い。
そしてそのくそホストは、咲夜さん達に色々ドラマの夜の世界の人みたいな感じで怒られた。
その光景を見たら、本当にあるんだ~なんて思って逆に落ち着いた。
そして、あっくんと一緒に兄貴とも会った。
会ったと言っても、一言話しただけだけど。
小さい頃は明るくて虫が大好きで、私のことも可愛がってくれていた。
私もお兄ちゃんお兄ちゃんと言っていて大好きだった
時々お兄ちゃんぶって自慢してくるのは少し嫌だったけど…。
でもお母さんが死んでから随分と変わってしまった。
家にもあまり帰ってこなくなり、たまに家に連れてくる友達のような人も明らかにガラの悪い人ばかりだ。
私はお母さんと死ぬ前にした約束だけは覚えてたから、そうはならなかったけど、一歩間違えるとああなってしまっていたかと思うと怖くなった。
そしてお店に行くと、ドラマで見るようなホストさん達に囲まれて、あの蓮と言うくそホストは素っ裸にされていた。
とても見れない…。
わたし、いうてこんなんだけど、男の人の裸なんて海やプールで見るぐらいだ。
あれとはなんか違う…。
そう思って、私はあっくんの後ろに隠れた。
あっくんはひょろっとしてるけど、なんだかその背中は逞しく見える。
昔からゲームばっかりしていて、数日一緒にいるけど今もゲームをやってるみたい。
でもなんだか堂々としていて頼りになる。
あっくんだってこんな経験したことないはずなのに…。
そして会長さんに握らされた100万円。
別に警察に言ったりするつもりなんてなかったし、私に関わらないでくれたらそれでよかったんだけど…。
大人の世界って感じだ。
兄貴はお店には来ていなかった。
一体何やってるんだろう。
本当自分が蒔いた種だって言うのに…。
私はあんな人間には絶対にならない!
そしてあっくんの家に帰って、お父さんとお母さんに提案されて、そのまま一緒に住むことになった。
なんだか久しぶりに家族っていうものを感じた。
やっぱりあっくんのお母さんのことは小さい頃から知ってるし、すごく心が安らかになる。
そして次の日、出がけにあっくんに日曜日のデートに行こうと言い放ってきた!
ふふふ、あっくん素材はいいんだから、わたしが活かしちゃう!
わたしがそんなことを思っていると、車を運転するお父さんが話しかけてきた。
「新のことありがとねー」
「あ、いえ、うんうん、大丈夫!」
「しかしあの新を、よくこの短期間であそこまで喋れるようにしたね~」
「勢いで強引に押し切った!」
と、親指を立ててバックミラーにニコッとすると、バックミラー越しにお父さんとチラッと目が合って、二人で「あはは」と笑った。
暫くすると、見慣れた街が見えてきた。
ついこの前まで、ここに住んでたのに、もうなんか随分前に住んでたところみたい。
そんなことを思っていると学校についた。
車を降りて職員玄関から入り、担任の先生を呼び進路指導室に移動し、ことの顛末と今後あっくんの家でわたしを預かるということを、お父さんが伝えた。
一通り話を聞き終わると、先生がわたしの方を見て、
「菅谷は本当にそれでいいのか?」
「うん、むしろそれがいいの! ほらわたし家族という家族が小さいときになくなっちゃったじゃん? だからさ、やっぱり家族ってものにいい感情なかったんだ。でも、数日一緒に暮らして、家族っていいかもって思えてるからさ。」
そう私が話してると、お父さんが横でうんうんと頷きながら聞いていた。
「というわけなんで、引っ越しはするけど転校はしないんで、またよろしく先生!」
「そうかそうか。学校の方には私の方からうまく説明しておきますんで。いざって時に親権がどうのとか言ってくる人がいるので…」
と、お父さんの方を向きながら話すと、
「ええ、よろしくお願いします。何かあればご連絡いただければ、こちらでもできることはやりますので」
「はい、わかりました。よろしくお願いします」
「では、いくつか書類を取ってきますので、こちらで少々お待ちください。あ、菅谷。お前はもう教室いっていいぞ」
「りょーかい! んじゃ行ってくるねお父さん!」
「ああ、いってらっしゃい。帰りは電車だから気を付けるんだよ」
「りょーかい!」
そう言って、進路指導室を出て教室に向かった。
なんだかずいぶん久しぶりに感じる教室をみつけ、ガラッとあけると、既に登校していたクラスメイト達がこっちを見た。
「りーーーーーーーーのーーーーーーーーあああああああああああああああ」
と言って、華蓮がダッシュで抱き着いてきた。
「おっつ…。久しぶりだね華蓮―! 会いたかったよー!」
と、抱きしめ返した。
「りのあーーーー、転校とかするのかと思ったーーーーー」
「いやいや、転校しないよ! 引っ越しはするけど! ってか半分ぐらい引っ越し済みだけど!」
「ええ? どこに住むの?」
「んーとね、詳しいことは土曜に話すけど、知り合いの家に住むことになったんだ。」
「んー転校しないならいい!」
と言って華蓮と話していると、クラスメイトが久しぶり~とワラワラと話しに来た。
あ~日常に帰ってきたんだな~と実感した。
その日は、休み時間はずっと華蓮が引っ付いていて、あれやこれやと質問されつつ過ごした。
帰り、前の家に帰りそうになったが、今日から駅だと思い駅に向き直って初めての電車通学を新鮮に思いつつ家に帰った。




