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特定してくれ

4人でLimeで話していると、他愛もない会話で緊張の緒が切れたのか雪菜さんが眠そうだと彩春ちゃんが言うので、通話を終了した。


そして暫くすると、研究室のドアが開いて鬼気迫る表情の直人が入ってきた。




「な、直人終わったんだ? ど、どうなった?」


「新、頼みがある」


「え、頼み?」


「まだ実害が出ていないから警察が動かないかもしれない」


「あぁ、確かにあり得そう」


「だがそれを手を合わせて待つだけでは怖い」


「そうだね」


「指紋もない。靴跡もない。唯一、うちの玄関前の監視カメラの映像にそれらしき人物が映っているらしいことは警察が言っていた」


「そうなんだ」


「解析して特定してくれ」




なるほど…。




「特定したらどうするの?」


「弁護士が民事的に対応する」


「なるほどね…わかった。やったことないけど、やるよ」


「斎藤教授にも頼めないか?」


「もちろん頼むよ」


「頼む。皆の安全は俺が対策した。ただ解決に向かっているわけではない」


「わかったよ。斎藤教授に連絡する。監視カメラのデータもらってきてくれる? あとりのあに帰らないことをうまく説明しておいて欲しい」


「わかった」


「データはできればストレージにアップロードじゃなくて、データそのまま欲しい。後、監視カメラ本体の仕様が知れると嬉しい」


「了解」




直人はそう言うと足早に出ていった。


俺は斎藤教授にすぐに電話をかけた。




「湯月くんこんな遅くにどうしたんだい? 何か閃いたかい????」

「教授、力を貸してもらえませんか? 俺の友達でVゲージに所属する有名な動画配信者の子が脅迫されているんです」

「脅迫?!?!」

「はい。今朝からそれでエンゲージはてんやわんやなんです」

「そうだったんだ…」

「ただ、まだ実害がないから警察が動かないかもしれないと。そして、犯人を特定し得るかもしれない唯一の方法は監視カメラの映像しかないと」

「……そういうこと…。いいよ、今からそっち行くね。とりあえずサーバーを起動しておいて」

「了解しました」




俺は電話を切り、直ぐにサーバーを起動した。


そして考えだした。


画像解析はやったことない。


だが、出来ないってことはないはずだ。


それに斎藤教授は、シンポジウムの発表的にドンピシャじゃないのか?


でも解像度を高い状態に戻すことと、特定することは違う。


恐らくそこに追加解析が必要だ。






考えろ。






斎藤教授が来るまでのこの時間も無駄にはできない。



俺は少し考えて、まずは研究室にあるオンプレのラックサーバーから、ホログラムディスプレイ開発のためにテスト的に保存していたアプリケーションを撤退させ、構成を組みなおす。


この研究室のラックサーバーは高スペックではない。


仮に高解像度の画像を解析するとなると、恐らく止まるかものすごく膨大な時間がかかる。


高スペックサーバーが必要だ。




俺はそう考え、クラウドサービスのサーバーにアカウントを開設し、研究室のサーバーと接続を確立させだす。


決済は…面倒くさいし俺のカードでいいや。




するとそこで研究室のドアが開き直人が入ってきた。




「これ。監視カメラの映像データが入ってる。あと仕様書探すの時間かかりそうだったから、とりあえずメーカーと型番だけさっきLimeしておいた。警察は23:30ぐらいで止めてたって警備員が言ってた」




そう言って俺のデスクの上にSSDを置いた。




「ありがとう。今斎藤教授もここに向かってくれてる」


「まじか。ありがてえ。りのあちゃんには俺から連絡しておいた。今から行くって言ってたけど、流石に邪魔になっちゃうからってたしなめて、明日朝送迎で迎えに行くから、その時着替えとか持ってくって言ってたわ」


「そっか。了解」




直人はそういうと直ぐに研究室を出ていった。


直人は直人で事務所の社長としてやることがあるだろう。


そっちはもう直人に任せるしかない。


俺は俺が出来ることをやる。




そう思いながら、クラウドサーバーを設定していると研究室のドアが開いて斎藤教授が入ってきた。




「さっき八代君に会ってザックリ概要は聞いたけど、結構危険な感じなんだね」


「はい…教授も遅い時間にありがとうございます」


「いやいや! 逆に今まで研究ばっかりで、こうやって直接人の役に立つようなことはやったことがないから、なんだか燃えてきたよね!」


「ありがとうございます…これ、監視カメラのスペックです」




俺はそう言うと、ディスプレイをくるっと回して斎藤教授の方に見せた。


斎藤教授はあごに指を置きながらディスプレイを見る。




「ふむふむ…。こりゃー元の画質も期待できないかもしれないねぇ」


「やっぱりですか…」


「こうなってくると、解析して拡張させてって感じかなぁ」


「一応クラウドサーバーも準備しておきました」


「本当湯月くんは優秀だねー。どれ、まずは映像データをできる限り最高解像度に戻そうか」


「はい」


「湯月くんは、私がシンポジウムで発表したアプリケーションファイル送るから、それをまずこっちのサーバー環境で動くようにして。ただ、あれ、あのままだと時間かかりすぎるから、バッチの書き換えが必要かな」


「了解です。そこら辺手を付けますね」


「言語大丈夫?」


「はい、シンポジウムの後勉強したんで一通りはできます」


「いやー、本当こういう子が入りたくなるような大学にならないかなぁ日本も」


「す、すいません…」


「いやいや! それじゃあ始めようか!」




こうして俺は斎藤教授と監視カメラの映像から犯人を特定するアプリケーション開発を開始した。

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