【中里雪菜視点】デビュー配信
そうして迎えた初配信。
「おねーちゃん緊張してるー?」
そう私のベットに寝そべりながら彩春が話しかけてきた。
「緊張してるって言うか、ちゃんとできるか心配…。ちょっと前までパソコンとかもちんぷんかんぷんだったから…」
「確かにねー。でも一応設定はそれでいいんでしょ?」
「うん、大丈夫なはず…」
「とりあえず私はスマホで見てるね!」
「うん、なんか変なところあったらLimeして。パソコンで見れるからさ」
「おっけー!」
そう言うと彩春は私の部屋から出ていった。
さて、いよいよだ。
見てくれる人なんているのだろうから。
とりあえず、見てもらわないことには前に進まないので、今日の動画タイトルにはJKはいれよう…。
なんかJKに縋ってるみたいだけど…。
今まで、何もせずとも、良くも悪くも注目されてきた。
それがまさか、どんな人なのかもわからないJKという言葉を頼ることになるとは思わなかった。
でも、それが自分が望んだものだ。
JKを入れることで、男性が多くなりそうだけど、そもそも見てもらわないことには前に進まないので、今回はいれる。
そして私は、
『リアルJK新人バーチャル配信者『白風あげは』デビュー配信』
と言うタイトルで動画配信を始めた。
「こ、こんにちはー。個人で本日デビューします、白風あげはと申します。よ、よろしくお願いします!」
と動画配信を始めた。
暫くすると、視聴者数が1、2、3…と増えていき、一気に30人ぐらいになった。
「あ、見ていただいてありがとうございます! 本日デビューする白風あげはです。今後ゲーム配信等していきたいと思いますので、是非チャンネル登録よろしくお願いします」
と話すが、もちろん何も返ってこない。
な、何か話さなきゃ!!
「あ、一応、私、リアルJKになりますので、学校の時間は配信できないのですが、夕方から夜にかけて毎日配信します!」
「そうだ、昨日このアバターどうですか? 高校の友達の知り合いに作ってもらったんです! かわいいですよね~」
と私が白風あげはの出来上がった経緯や流れを話し出すと、初めてコメントが来た。
『もんた:いい声。登録した』
「あ、もんたさんチャンネル登録ありがとうございますー!」
すると更に、もんたさんが、
『もんた:なにか登録してくれた時の挨拶みたいなの考えようよ』
と提案してくれた。
「あ、確かに! ありがとうございます! そうですね~…チャンネル登録ありがとう! ようこそー! とかですかね?」
と、少し考えながら話すともんたさんが、
『もんた:あげはの庭園にようこそとかは?』
「あ、ありがとうございます! いいですね! 白風ですし、なんか雰囲気があってます! じゃあ、「チャンネル登録ありがとう! ようこそあげはの庭園へ~!」にします!」
『もんた:いいね』
「もんたさんチャンネル登録ありがとう! ようこそあげはの庭園へ~!」
と私は、アバターがニコッとするようにして言った。
『もんた:いいね。その顔舐めたい』
げげげ…めっちゃいい人かと思ったら全くそんなことないじゃん!!
これどうしよう…。
さっきまで1対1に近いやりとりをしてたから、なんか無視するのも気が引ける。
私が少し返答を考えてると、なんと他の方がコメントをくれた。
『チャンヌー:新しい子狙ってきもいことすんなよ』
と、もんたさんへのコメントを書いてくれた。
「あ、いや、でも、もんたさん、ご、ごめんなさい! でもそう言うのはちょっと!」
と、謝るそぶりをしながら言った。
『チャンヌー:一生懸命だね。登録したよ』
と、チャンヌーさんがコメントくれたので、
「あ、チャンヌーさんチャンネル登録ありがとう! ようこそあげはの庭園へ~!」
すると、何人かの方が、『真面目だね!』とか『応援するよ!』みたいな感じで登録してくれて、その日はそのまま登録のお礼とコメントの質問への返答で1時間半ほど配信した。
最初からいきなり変な人が来たからどうなるかと思ったけど、とりあえずよかった…。
JKってタイトルにいれてるし、きっとああいう人は多いんだろうなとは思ってたけど…。
そうして初配信を終了して、ヘッドホンを外すと、部屋がノックされたので返事をすると彩春が部屋に入ってきた。
「おねーちゃん、お疲れー!」
「ふぅ、疲れた」
「とりあえず、最初の人きもかったねー!」
「いい人かと思ってたからびっくりしちゃった…」
「えー、あんなん男の常套手段じゃん! 相手の興味を引く話をして、引けない状況にして欲望をぶつける!」
彩春はスマホを握りながら力説した。
「欲望って…」
「欲望だよ! リアルだってネットだって男は男! 今まで通りじゃおねーちゃんのままだよ!」
「そ、そうだね! ああいうのも毅然と対応していかなくちゃね!」
「そうそう! その調子!」
「いろは、ありがとね!」
「うん! でもさ、案外チャンネル登録されるもんなんだね」
「やっぱりJK効果かな」
「まぁ中身がわからない以上、それはあるかもねぇ。おねーちゃんの声ってJKぐらいの感じがする上に優しいし」
「そうなのかな…。自分じゃわからないや」
「ずっと聞いてきた私が言うんだから間違いなし!」
「それはそうかもね(笑) いろはの声は、元気が出るよ!」
「それはなんとなく、私自身がわかっちゃうんだけど(笑)」
そう言って二人で笑った。
そして私は、配信のアーカイブのURLを白風あげはのSNSに投稿した。
今後JKと言っていくかはわからないが、どうせうまく隠したりなんてできなそうなので、SNSの説明欄にもリアルJK配信者であることを記載した。
そんな白風あげはのデビュー配信は、チャンネル登録68と言う結果だった。




