~この時、駅まで残り約150メートル~
男「え、なになに?気になるじゃん!」
ずっと前を向いていた草食系男子が一瞬振り返ってエスコートしながら、でもまたすぐ前を向きなおす。
店「いやいや、お前わかってるでしょーがwwアレだよ、アレ!ちょっと期待してるだろww」
女「うーん、言っていいものか、言ったらモヤモヤさせちゃうかもしれないし、どーしよう」
店「いやいや、そこまで言ったんなら言えよwwアイツ期待してるってww」
「え、モヤモヤ?なにそれ、ホテル行きたいけど実は生理パターン?もうちょっと一緒にいたい?実はドラムの○○君が好き?服に虫ついてるよ?」
一瞬で頭の中フル回転!【告る】じゃない選択肢を必死に探す妄想おじさん。それにしても、ここで真っ先に【生理】が浮かぶあたりヤバいよね…
男「えぇ~気になるけど、そっか、まぁ言いたくなったら言ってよ!」
店「はぁ!?お前、何カッコつけてんのww強がんなって、聞きたいオーラ顔からにじみ出てるってww」
「ホテル誘えよ!居酒屋行って話し聞けよ!気になって聞くまで帰れないって言えよww」
「ってか、この女の子強くね!?マジでホテル行こうって言いそうな雰囲気…いいなぁ」
「初々しすぎるってwwオッサンはもう胸キュンだって!」
一語一句違わずどこかで聞いたことあるようなやり取りにテンションは爆上がり!突っ込み所満載で心の中ではお節介が止まらない!そして、なにより胸キュンがたまらんのです。
自分だったら キタ――(゜∀゜)――!! って、心の中でガッツポーズしながら顔がニヤけてしまうのをバレないようにするのに必至だろう。
今までの経験からこの先の展開を勝手にあれこれイメージし、どう動くべきか下衆な考えをめぐらせる。下心とは別にスカウト気分にも面接気分にもなってしまうだろう…
正直、この仕事が長くなってから女性を見る目が某広告サイトの覆面調査員のような目で見ている自分がいる。例えそれが友人であっても身内であってもだ….
頭の中で容姿、言動、仕草などに点数を付ける…お前は何様だと思いつつ本気で自己嫌悪に陥る。
話しを戻す。
女「うん、そーだよね、言わなきゃだよね…言うつもりだったんだもん」
男「ははは、大丈夫だよー」
女「ちょっと気持ちの準備させて!」
男「いいよ、無理しなくても!」
店「そーだよ、早く言えよ!ここで言っとかなきゃ後悔するぞ」
「大丈夫じゃねーよ!チャンス逃すぞ、もったいないぞ」
絶対強がってるのにすかした態度で前を向く草食系男子と、うつむき加減で時折上目遣いに彼の背中を見つめるカジュアル系女子。二人の周りにはいわゆるアオハル的な空気が漂う、そこに連なる下衆いオッサン一人。
エスカレーターはそんな二人と一人を駅に向かって運んでいく。