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東方転移物語  作者: 御狐
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第1話 透き通るような憎しみに溺れる狐娘

「…ん。」

ここは…どこ?何だかとても…気持ちいい。よくわからないけど…ずっとここに居たい。

だってさ、ここなら誰もいないから。誰も…私を傷つけないのだから。

…私の名前?何で訊くの?どうだっていいじゃない。

…ダメ?……そう。わかった。名前を言えばいいんだよね?

私は、水狐すいこ。ただの女の子。

…もっと教えて欲しい?しょうがないなあ。

まあ、いいよ。私はね…(妖怪)なんだ。お父さんが(雪の精)で、お母さんが(化け狐)なんだ。

あと、私…水を操れるんだ。私の周りにある水を自由に操れるの。

…すごい?…えへへ。すごいでしょ。

…あ!そういえば前にもこんな感じで(人)に褒められたんだ。それが嬉しくて、私…頑張ったんだ。

例えば、雨が何日も降らなくて困っている村のみんなの為に、小さな雨雲を作って雨を降らしたり、干してあった洗濯物から水分を取って早く乾くようにしたりしたんだ。

みんな喜んだんだよ。「助かった」「奇跡の子だ!」って。みんな私の為に、神社を作ってくれたの。

私嬉しくなってまたさらに頑張ったの。

今度はいつでも水が手に入るように…川を作ったんだ。大きな大きな川を作ったらきっとみんな喜んでくれると思って、作ったんだ。

だけどね、その川が大きすぎて村が流されちゃった。…みんなすごく怒ったんだ。「恐ろしい」「悪神だ!」って。それで、私はどこかに連れていかれて…。それから?どうなったんだろう?

…ねえ。君は…何か知っている?

『…知っているよ。』

…ねえ。教えて。

『…いいよ。じゃあゆっくり目を開けてみて。』

…わかった。開ければいいんだね。……じゃあ、いくよ?

・・・・・・・・・・

…私は、ゆっくりと目を開けた。目の前に誰かがいる…(人)だ。

その(人)達は笠をかぶっていて、黒い着物を着ていた。手には錫杖が握られている。…この(人)達って確か…お坊さん?だっけ?…何をしているんだろう…。その(人)達は私の視線に気づき、顔を歪めた。

「-!まずい!気づかれた!」

「なんだと!?く…。あと少しで退治できたものを…」

え…今、退治って言った?

「しかし、どうする?【水禍の邪狐】をこのまま野放しにするわけには…」

「ここでこの者を止めなければ、また大勢の人が無残に殺されてしまう。」

【水禍の邪狐】って私の事?大勢の人が殺される?それもまた?いったいどういう事。

わからない。誰か教えて。教えてよ。ねえ…ねえ!

「ぬ!こ…こいつ…抵抗するのか!…仕方ない、苦しむかもしれないが我慢してくれ!」そう言いながらその(人)達は錫杖を強く握り、ブツブツと何かをつぶやく。途端に激しい頭痛が私を苦しめる。

何をするの?痛い…やめて!い…痛い痛い痛い痛い……痛い!!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

…痛い…痛いぃ…痛いよお…何で…何で?私が何をしたっていうの?私はただみんなに褒められたっかっただけのに………。なんでこんな…こんなめにあわなきゃいけないの?わたしは…みんなのためをおもったのにぃ…ひどい…ひどいよおみんなひどいよおなんでわたしがこんなめに?なんで…なんでなんで…。


ナンデワタシガコンナメニアウノ?ミンナノタメニガンバッテキタノニ…


……

………………………………………………

…ユルセナイ…ゆるせない…許せない…。

都合のいいときは感謝する癖に都合が悪くなった瞬間に私を責める(人間)が許せない。

私を利用するだけ利用して最後には簡単に捨てる村のみんなが許せない。

私を産んでどこかに行ってしまったお父さんとお母さんが許せない。

自分のことしか考えない自分勝手な(妖怪)が許せない。

散々助けてやったのに…私を助けなかったみんなが許せない!

全員殺してやる…。

「!? ま…まずいぞ!!!こいつ…暴走してーーー。」

うるさい。しゃべれないようにしてあげる。

「---!!!?!!?」

あ…首…どっか行っちゃったね。まあこれで静かになった。

「!!?! よ…よくも!」

…お前もうるさい。消えちゃえ。

「ガアア…。」

すごい。私こんなこともできるんだあ。下…なくなっちゃったね。

「おのれ…この者を苦しませず退治しようとしたのが間違いだった…。兄上達が間違っていた。この者は【水禍の邪狐】…。同情などすべきではなかったのだ…。」

お前たちは同情なんてしていなかったんでしょ?結局は自分のことしか考えていないのでしょ?溺れちゃえ。

「…無念。」

さてと…これで私の邪魔をする(人)たちは消えた。全員…この世にいる全ての者を殺してやる。

「あはは…はは…は あはははははははははははははははははははははははははははははははあははあはははははははあああはははははは!!!!!!!!!!!!」

何でだろう。なんだか笑いがこみあげて来る。まあいいや。

「あははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!」

笑っているとなんだかすっきりしてきた。笑うだけ笑って暴れるだけ暴れて…

「もうどうにでもなっちゃえ」









 ち…ちくしょう!ちくしょうちくしょうちくしょう!!!!!!よくも…よくも阿空あくう兄ちゃんと海吽かいうんを…【水禍の邪狐】め…お前だけは…お前だけは絶対に逃さない!何としてでも倒してやる!だが…どうやって倒す?今の俺は虫の息だ。腹から下がなくなった。【水禍の邪狐】を倒す力はない。だけど倒す。何としてでも倒したい!死んでいった兄弟と犠牲者の為にも。

『…【水禍の邪狐】を倒したい?』

誰だ?

『【水禍の邪狐】の暴挙を止めたい?』

…止めれるのなら。

『【水禍の邪狐】に殺された兄弟達の仇を取りたい?』

…ああ!取りたい!何としてでも取りたい!

『…じゃあこの呪文を言って。』

この呪文?何の呪文だ?

『これ』

ー!?な…なんだ!急に頭に思い浮かんだぞ!…もしかしてこれか?

『…そうだよ…言って。』

……わかった。

「はるか遠くの世界の果ての果てにある。幻の桃源郷…[幻想郷]。我、山翔やまとが命ずる。我らをその世界へ導き給え。」

『繰り返して。』

「はるか遠くの世界の果ての果てにある。幻の桃源郷…[幻想郷]。我、山翔が命ずる。我らをその世界へ導き給え…。」

『もっと。』

「はるか遠くの世界の果ての果てにある。幻の桃源郷…[幻想郷]。我、山翔が命ずる。我らをその世界へ導き給え!」

「! 何をしているの!まさか…また私をいじめるつもり?……許さない!死ね。」

【水禍の邪狐】が手を振り上げる。すると地面から水柱が現れ俺の体を貫く。意識を失いそうになる。俺はもう…。いや…まだだ!このまま死んでたまるか!こいつも道ずれにする。

俺は最後の力を振り絞って呪文を高らかに宣言した。

「はるか…遠くの世界の…果ての果てにある。幻の…桃源郷…[幻想郷]。我、山翔が命ずる。我らをその世界へ………導き…給え!!!!!」

瞬間、俺と【水禍の邪狐】そして兄弟達の亡骸は黒い光に包まれ…


消滅した。


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