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ともあれ人族は滅ぼすべきである(竜並感)  作者: こるつ(滑らか味)
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建国するドワーフと空前の鉄器ブーム

 大陸を寒波が襲う。


 北半球は氷で閉ざされ、人族の生存圏は大きく後退した。


 そのような時代においても強者は生きる。生き残るための最善を尽くす。



 その最たるものがとあるドワーフの一団であった。


 洞窟に潜み、ひっそりと腕を磨いてきた。

 物を作らせたら抜群の腕前の部族であった。

 その業物でもって食料を豊富に確保し、他の部族とも深い繋がりがあった。

 夏が来て秋が来た。冬備えは盤石だった。


 次の年、春は来なかった。



 他の一族も糾合し、行くあても無い旅に出た。

 寒波は徐々に悪くなる。

 獲れる獲物も減っていく。

 重ねた毛皮は厚くなる。



 一面の銀世界。もはやこれまでかと思われたその時、雪原に異質な大岩が点々としている土地に出 た。

 まるで道のように、どこかへ招いているかのように、連なっていた。

 大岩を辿っていくと、その密度は増していく。


 彼らは秘境(?)への道を辿っていった。



 旅は報われた。


 巨大な山があった。飲んではいけなそうな魔を含んだ川があった。

 黒々とした山々には、豊富な鉄鉱と魔性の鉱石があり、横穴は十分以上に広く。

 なんと竜の素材がゴロゴロ転がっていた。


 山の麓には神獣と思しきものの膨大な食べ残しがあった。それに群がる動物は数えきれない。

 この辺りは魔獣が少ない。それは幸いではあったが強者の残滓が弱者を払っているようで、不気味 に感じられた。



 彼らは適度に獣を狩った。

 山を掘り進めた。

 ”なぜか坑道があった”ため掘り進めるのは楽だった。


 魔の強い地質の内に世にも珍しい鉱石が出た。これを魔鉱石と名付け、なんとか加工しようと工夫 に工夫を重ねた。

 魔鉱石は潤沢だった。


 いつの間にか世代は変わり、鉄など片手間に加工できるようになった。



 狩りの時代は終わった。

 高性能な農具が乱造され、大規模な農業がおこなわれた。

 何せ肥料は神獣である。寒冷にも関わらず、豊作が続いた。

 飲んではいけなそうな水は魔水と呼ばれ、何かと加工に用いられた。


 やがて寒冷期は終わり、一層の繁栄がもたらされた。

 山には竜が祀られていた。



 こうして人口が増え、次々に他の部族も合流しさらにドワーフは増えた。

 ドヴェルグ王国万歳、と誰かが言った。すると皆口々にドワーフ万歳! 王国万歳と言った。

 部族の長より王が選出された。時の王は新天地を目指した部族の長の子孫であると言われている。

 古ドヴェルグ王国歴元年。ドワーフ、鉄器時代入り一番乗りである。



 以上をつぶさに目せ付けられた我は、そのまま大人しくして今に至る。

 我は古巣に竜鉱脈を回収に来た。これをむんずと引っこ抜きさて去ろうとした矢先、このドヴェル グとかいう小さき者たちがやってきた。


 我は咄嗟に鉱脈を腹に敷き、我関せずを通してやり過ごそうと試みた。

 ところがどうだ。待てど暮らせど奴らは去らない。

 挙句奴らはこの地に定住したではないか。

 それも腕がいいわ、気骨があるわで厄介この上ない輩である。


 我もここに至ってはいない振りを徹底し、開き直ってどうにか奴らの「技術」を盗んでやろうと目 を光らせていたのだが。


 気が付けば奴らに「祀」られていた。



 おかげで銅や鉄を道具にする絡繰りは大まかに分かった。木の細工も遠目に見た。身に着けるもの は我らには向かんと分かったが、ここで見た多くの「技術」は役に立つだろう。

 この危機的状況を抜け出せるのならばだが。



 小さき者たちのうち最先端の群れのど真ん中。どう帰還したものか・・・。

 いや、いっそ堂々と帰還してしまって代役を据えるか?

 ここでいない振りを続けて幾年、言葉も多少は覚えたのだ。


「そこの」

 祀りを執り行うと思しき者に声をかける。

「は、はい! 国龍様?」

 警戒せしまったようだ。

 これはいかん。誤解を解かねばならない。


「私少しの間ここ空けるヨ。でも心配ないネ。我らすぐにモドル。」

 これでよいだろう。



 眼下に見えるは「国」の姿。我らが目指すものの形である。


 あとに据えるものには連絡役が要る。孤立無援では厳しい役割だ。

 空にもいくつか必要だろう。つぶさに観察するのだ。

 こういうものを小さき者たちは「スパイ」・「諜報」というらしい。


 小さき者たちの技術だ。我らも行おうではないか。



 ここに、竜とドワーフとの奇妙な共存関係が構築される。

 竜は観察ついでに魔物を狩り、ドワーフは竜に守られる格好となった。


 ただし、ドワーフたちは知らない。

 竜が技術を盗み取っていることを。


 弓を作るために「世界樹を植林しよう」

 鋳造を行うに「魔鉱石は住んでいれば生えてくるから楽でいい」

 鍛造にあたって、金属の単位は「一山」


 竜もまた、鉄器時代に入らんとしていた。いささか格好のつかない形ではあるが。






 竜谷は揺れていた。

 竜たちの熱意によって。

 飽くなき探求心によって。

 少なくとも我にはそう感じられた。

 さっきまでは。


 ドヴェルグ王国にスパイを置くという我、黒竜の陰謀により竜の住処である「竜谷」に鉄器の生産 技術が流入した。

 竜谷には4大元素に2大元素を足した6属性+1犠牲者(氷竜)が住む。

 連山の悲劇、白竜の暴走とも呼ばれた悲しい事件の末、我らは自然破壊を自重するようになった。

 そのストレスたるや、日に日に喧嘩が増え、流れる血の量がちょっとシャレで済まなくなって来た くらいのものである。

 そこにもたらされた「鋳造」「鍛造」技術である。

 我らは大いに鋳り造り、造っては鋳溶かした。火竜種は古株から新参者まで引っ張りだことなっ  た。鋳造には精密な火力が必要であった。

「第一次鋳造ブーム」である。


 鉄資源の枯渇問題の発生とそれに伴う自然破壊。

 我の憂鬱の始まりがこれだ。


 我らはこの巨体である。造るものもそれ相応。

 しかしそれは一時おさまる。

 きっかけは魔鉱石という「真なる鉄」の発見による。


 我らは魔を放っている。魔は物質を変質させる。特に「始まりの竜」まで至ると放って置くだけで 質の高い鉱石を量産するほどだ。すなわち魔鉱石とは、魔を含んだ鉱石のことであり、魔を浴びす ぎて鉱石化してしまった可哀そうな岩石のことでもある。


 第二の発見が金属を加工可能な品質まで引き上げた、あるいは金属が我らにも加工可能な硬度と  なった。

 魔鉱石に我らの一部(喧嘩の結果)が加わった。

 すると驚異的な硬度を誇る鉱物が生まれた。

 我らはあらゆるものを溶かしては自らの一部を混ぜた。

 多くの特徴を持つ金属が生まれた。

 これが「第一次次鍛造ブーム」である。

 我らは大いに鍛いて造った。


 ここに反対元素の法則が唱えられた。

 我らの主な金属加工技術は「ブレス工法」であるが、件のブーム時においては単に少し低温が良い とされてきた。

 しかし素材を混ぜるとなると話は変わる。

 爪牙はまだしも鱗となると、単に高温であれば良いわけではない。素材を混ぜ合わそうと高温にす れば、元となる金属が蒸発してしまうのだ。

 そこで素材の対となる元素のブレスによる工法が主流となる。

 効率的に素材は分解され、鋳造の際により高度な金属が作成されるからだ。

 これが反対元素の法則である。

 ここに「鉄の中の鉄」すなわち「鋼」が再現されたのである!


 こうして事態は収まるかに思われた。


 第一次「槍・弓矢ブーム」


 大木という大木は切り取られ、弓か槍かに加工された。木という木は尽くが矢になった。

 もはや回復不可能なまでに環境を破壊した。禿げ上がる山。乱造される砂漠。

 我らもこれは不味いといつもの会議が開かれた。



 我にはしかし秘策があった。

 「各々方、世界樹よ。あれを連山が内に植えてしまえば薪も材木も取り放題。おまけに弓の材料に なる。アールフだのエルフェンだのと精霊どもが騒ぐというが、未だその姿を見せないではない  か。なに、上の枝だけすこーしもらって来るだけの話。大森林までひとっ飛びという寸法よ」


 これには皆顔を見合わせて

「「黒竜の、たまには考えることもできるのか。」」


 と来るものであるから我らはさっそく段取りを決めた。


 風竜(頭のまともな者)を実行犯

 白竜(山が絡まなければまとも)を補佐

 地竜(顔のまともな者)が司令官

 陽動役に我(最高に賢い)と火竜(抑え役と言われていたが何を抑えるのだ?)

 精霊との交渉に水竜(数万年に一言しか話さない)

 万が一の守りに氷竜(新参者のくせに猛烈に強い)


 いざ大森林へ。

 我は真っ先に飛び出した。今日もすこぶる好調である。

 大森林へ一番乗りを果たした我は陽動に徹するのみ。

 陽動か。

 エルフェンだかアールフだかの里を襲う振りでもすれば良いか。


 ・・・

 木が邪魔で里も何も見えん。どうしたものかと思っていると火竜が追い付いてきた。

「火竜の。陽動とはどうする。相手を欺こうにも欺く相手がおらんぞ。」

 火竜は答えて

「黒竜の。木でも抜いてみるか?槍・弓矢ブームの足しにはなろう。」

 我はそれに

「木を抜くはいいが、いくら我らとて世界樹は抜けそうにないとは思わんか?」

 火竜は答えて

「ならばやってみようじゃねえか!黒竜の。」


 とは言ったものの、流石は世界樹びくともしない。

 これはもはや樹木の類でないのじゃないか、そのように思うもここは意地だ。

 さてこれは全く木でもなんでも無く実際のところ大陸だと思い始めたころ。


 風竜が来て言った。

「まだこんなところにいたんですか? 早く帰ってきてください。計画は万事整っています。」

 どうやら陽動とは体のいい厄介払いのことらしかった。


 戻ってみると、竜種総出で植えたらしい世界樹の若木が群生している。我らの魔が成長を促したよ うだ。

 こうして世界樹の植林という大事業は我の居ない間に完遂されたのである。



 竜谷より吹き降りる魔は今日も七龍連山が内側を魔境たらしめる。

 魔獣はより大型に。神の創りし獣は家畜同然。


 我らは心を一つにして思う。


 ついに小さき者たちに追いついた。いざ建国の時。









一話にまとめてみました。大分読みやすくなった・・・のか?

章ってなに…

わたしには何も分からない。

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