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ともあれ人族は滅ぼすべきである(竜並感)  作者: こるつ(滑らか味)
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食料問題のはた迷惑な解決方法

 我が道具として用いた山や龍鉱はともかく、岩は好評であった。

 獲物に落とせばそれで足りる。もちろん高さの加減は要るが。

 狩ることは不可能とされた神獣の類も大岩を落とせば楽なものである。

 若い竜には荷が勝つような大型の魔獣も、上空からの一撃である。


 失敗したとて岩が減るわけも無し。またぞろ拾って落とせばよい。

 死闘を繰り広げるでもなし。各地で一方的な狩りが繰り広げられた。

 食料が増えた。各群れでは、強者は神獣を分かち合い、弱者は強敵を食い散らした。

 そういうわけで、再び竜は増えた。


 増えたは良いが、このままでは資源が枯渇する。

 そもそも世界の各地に散った理由は、我らが増え獲物が減ったからである。


 我ら「始まりの竜」は集まって食料問題を議論した。

 論議はまとまらず、紛糾した。

 あわや乱闘か、という時に報告がもたらされた。


「小さき者の一部は小型の動物や魔獣の類を従えている(ように見える)」


 我はこれに光明を見出したのだ。

「始まりの諸兄、こう考えてはどうか。まずは我らの力で神獣・大型魔獣の類を捕らえておく。しばらくすると奴らは増える。増えた分だけ食すればよい、と。」

 皆、そろえて道理であるとうなずいた。


 風竜は問うた。

「して、その方法は?」

 我は答えて

「山を連ねればよい。我ら竜族で山を運んで獲物が外に出られぬようにするのだ。」

 白竜は大いに反対した。

「世界の摂理、自然の理に反することを無暗に行ってはなりません。我らは我らの範疇で生きるべきなのです。」

 地竜は言った。

「大地は生きておる。今ある連なった山には大地の力が作用したってぇことよ。我らの力をもってしたところで、大地の力を作れるたぁ思わんよ。」

 火竜、風竜は沈黙を保った。


 我はしばらく考えて、火を噴く山を思った。あれならば、どうだ? 大地に火を噴かせれば・・・

 いや、()()()()()()()()()()()()、どうだ?

 大地には厚みがあるという。それは道理だ。大地は生きている。それも道理だ。我らは山の連なる姿を実際に見てきたのだから。

 火を噴く山はどうだ? あれを連ねてしまえば、いや大地に眠る炎を丸ごと引き出してしまえば・・・


 我はまさに天啓を得た。

「火噴き山があろう。火を噴かせることは容易かろう。ならばあれを連ねてしまえばよい。点を線で結び火を噴かせればよい。大地は動かせん。しかし穴を穿つことはできよう。」

 風竜は言う。

「灰が舞うでしょう。向こうしばらくは氷の時代を迎えるでしょう。しかし我らは天を衝く吐息を持つ。」

 白竜はノリノリで言った。

「山が連なる姿を始めから見られるとすれば、どれほど素晴らしいでしょうか。まして無から連山が形成されようというのです。否やはありません。ええ。もちろんですとも。ええ。やはり山はいい。」

 白竜は山について語っていたが、地竜は言った。

「水竜を避難させなきゃなるめえ。奴さん、凍っちまって氷竜になっちまうかもしれねえよ。大地の奥底をひっくり返そうってんだから、何が起きても不思議はねえ。」


 世界最大の魔境、「七龍連山」、またその奥にある「竜谷」はこうしたいきさつから誕生した。


 今日も火山が増えていく。竜たちは地にブレスを吐き続け大地を根気よく削る。

 時間はたっぷりあった。そして誰もが暇だった。

 五属性の竜が大地を削り、地の属性竜が噴火を制御した。

 やがて連山の形が見えて来たころ、当初の予定と比べてその火山の「囲い」は長大であった。

「始まりの白竜」は極めて満足気であったという。


 世界は突然氷河期になり生物は巨大化していく。竜たちは望外の収穫に喜び、人族は対応を余儀なくされる。


 結局避難してきた水竜の群れには、氷竜が混じっていた。

 開口一番、水竜は言う。

「黒竜の、寒い。」

 誰が犯人か的確に見抜いている。


 誰もが言った。

「おい、水竜がしゃべったぞ」

 この一事を号令として、火竜を中心とした一団が空にブレスを吐き散らし、突然始まった氷河期はやはり突然終わりを迎えた。



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