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SINRA  作者: 空想
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V,その女子は突然現れ消える


「勇人くん! あなたという人はどうして先生をこんなに困らせるのですかぁ!?」


 身長180cmの長身で、勇人の頭上からずかずかと説教を唱えるのは、1年3Bの副担任のディナ・エルフ・シー先生。

 しかしながら、この先生に説教をされても、いまいち説得力がない、と勇人は思うのであった。

 身長180cm……とは言っても、頭の大きさはだいたい4頭身ぐらいの大きさなのである。つまりは身長と頭のバランスが悪い。しかも、超ロングな緑のワンピースのウエスト辺りに、リボンの付いたベルトを装着しているのだが、そのウエストの位置が頭一個分のところにあり、上半身と下半身の比率が2:10というスタイルが良いのか悪いのかという驚くべき体形なのである。


「聞いてるんですか、勇人くん!? 先生だってもちろん怒りたくないんですよ?」

 先生が勇人に顔を近づけると、また身長が5cmほど伸びた。すごい迫力である。

 顔はものすごく幼く、小学1年生と言ってもいい。


「目の下にそんな大きいくままで作ってっ、先生は秋休みだからと言って、夜中の午前2時まで遊び騒ぐなどという猿事を許可した覚えはありません!」

 さっきから先生の身長が伸び縮みしている。床まで届く長いワンピースの下には、足元どころか、『脚』というそのものが存在していない。

 脚がないわけではない。ないわけではないが、それはウエストから大体頭一個分強ぐらいのところで終わっている……。

 

 『妖精』


 それが先生の正体である。

 人間とも思えない体形に見えるのは、先生が浮遊しているからであり、特別脚が長いとか、突然変異した超スタイル抜群外国人というわけでもない。

 実の先生の身長は100cm……あるかどうかぐらいなのである。


「先生? なんでそのこと知ってるんですか……?」

「ばっちり! しっかり! くっきり! スキャナーに映っていましたよぉ!?」

 げっ! と勇人は思わず絶句する。

「先生、恥ずかしかったんですよ……? 我が学校の生徒があんな遅くまでドンちゃん騒ぎしているのを見られて……」

「でも、先生は俺の担任でも副担でもないし……」

 そう。この先生は勇人の担任でも副担任でもない。

 なのにどうして、この先生が遅刻、秋休みの夜遊びを注意するのかと言うと、勇人のクラス、1年1組は担任が存在しないのである。その他に、2年1組、3年1組も存在しない。その理由は、単に必要がないから。だから代わりに時間の空いた先生が説教をしているというわけである。

「担任でも副担任でもなくても、学校の職員には間違いはありません! 幸い、教師(私達)も生徒会メイジャー忙しくてそれどころではありませんでしたけど……」

 勇人だけではなく、恐らく他の学校の生徒らもこの秋休み、騒ぎまくっていたのだろう。それで、この街の治安維持組織の生徒会メイジャーや先生たちも忙しくて、勇人たちまで気が回らなかったのだ。

「まぁ今回は補導もされませんでしたし、授業も始業式と脳診断レベルチェックだけ受けられなかったので、大目見て、補習はなしにしておきます」

 勇人は安堵のため息を漏らした。

「しかし!」

「!」

「今度あんなことをして、他の学校の生徒会メイジャーや先生にお世話になったとしたら、これから高校卒業までづうぅっと補習ですからね!!」

「は、はい……」

「わかったら、とっとと解析室に行って、脳診断レベルチェックを受けてきてください。もしかしたら、先生のクラスになるかもしれませんよぉ?」

 と、先生が冗談交じりに言う。もちろん勇人としては絶対お断りだが……。 


バンッ! バンッ!


「な、何事ですかぁ!?」

 突然の銃声音に勇人も先生もビクッとして、辺りをキョロキョロ見回す。


「先生!」


 突然空から降ってくるような女の子の声に勇人は硬直した。

 その制服の上からやや短い白衣を着た女生徒は立っていた。目の前に立っていた。

 上から落ちてきたわけでも、向こう側の廊下から来たわけでもなく、勇人がまばたきをする一瞬のうちにその女生徒は勇人の目の前に現れたのだ。


「ど、どうしたんですかぁ、島尻しまじりちゃん!?」

 さすがの先生もあまりの突然さに驚きを隠せないようだ。

「恒例の夫婦喧嘩が始まっちゃって、始まっちゃって、大変なんです!」

「またですかぁ!?」

 夫婦喧嘩? このポニーテールの女子は何を言ってるんだぁ? と勇人が突っ込みを入れようとしたところで、

「とりあえずとりあえず、二人は私が体育館へ移動させました」

「ありがとうございます島尻ちゃん! では先生は急いで他の先生に報告してくるので、それまで他の生徒の安全をよろしくお願いします!」

 先生は水平に地面を浮遊移動しながら、職員室へと急いで向かって行った。

 勇人はその会話のやりとりを理解できなかったので、詳しくこの女子に尋ねようと肩を叩いた。

「なぁ――


 その時、その一瞬、その瞬間に、勇人は体育館にいた。


「――夫婦喧嘩って……え? えぇぇぇぇ!!」


 勇人の叫び声は体育館中に響き渡った。

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