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SINRA  作者: 空想
19/19

XVIII,無



戦闘に注意


 

「自分をも守護できないとは、守護霊として失格だな」

「……」


 動かない。


「次は、お前だっ」

 死神は嫌味ったらしく、大鎌の刃先に垂れた、勇人と死神にしか見えない裕のそれを口へと運ぶ。だが、


 それでも動かない。


「人間の魂は、オレらと違って一つに繋がっている……。身体のどこかに刃先がかすっただけで、『死ぬ』ぞ?」

 そう言いながらも刃先を勇人に向ける。


 でも絶対に動こうとはしない。


 死神は鼻で笑い、

「死ねっ」

 死の大鎌ソウルキラーが勇人を頭上を襲う。が、

 裕と同じように、腕でその攻撃を防ぐ。

「言ったはずだぞ? 守護霊とは違い、お前ら人間は身体のどこかに刃先が当たっただけで死ぬと、」

 そういう死神は笑っていた(のだと思う)。

 当然、勝利の笑みだ。

 勇人がその大鎌に傷を付けられた時点で死んだのと同じ。

 あとは斬り払うだけ。魂を剥ぐように。

「任務完了」

 ――そう言って、勇人の魂ごと腕を切り裂いた。

 当然、勇人はもうただの人形。

 魂のない。空っぽの人形。

 青白い魂は刃先に引っ張られて抜けた、

 

 ――はずだった。


「っ!?」

 その大鎌に付いていたの赤い血だけ。魂などと呼ばれる代物は、ない。

「――なっ! ……一体、どうなって……」


「――美味しかったか」


 その時だった。

 勇人が始めて死神に対して言葉を発した。だがその言葉は『無情』。死神並み、或いはそれ以上の無情な声だった。

 死神に襲い掛かったのは『恐怖』でも『疑問』でもなく、『戸惑い』。

 突然の言葉に数歩後ろへ下がる。

「――魂は、美味しかったか」

 死神はここでやっと理解する。自分が魂を食ったことについての感想を求めていることに。

「……。ああ、美味かったぞ」

 それを知って死神の声から戸惑いがなくなったどころか、その声からは余裕が感じられた。が、


「そうか」


 と、瞬時に死神の前に移動した。

 もちろん、何の力も持たない勇人がそんなことをできるはずがない。

『できるはずない』からこそ、死神はイライラする。

「なっ! こ、こいつ……。人間ごときが生意気なっ」

 大鎌を円を描くようにして横に振り回す。

 その刃先は勇人の左腕を貫通して、脇腹に刺さる。

「ふんっ。これでホントに終わりだ!」

 と、その刃先を勇人の身体から抜き取る。だが、


 魂は姿を現さない。


「ありえない! こ、こいつ……まさかっ……!」

 死神にとうとう襲い掛かった『恐怖』。

 魂を削ぎ取るこの『大鎌』が、魂を抜けないということは絶対にない。だとすれば、死神にとって最悪の人間ということを結論付ける。


 魂が無い。


 瞬間、血で塗られた右腕の拳が死神の顔面を直撃する。

 死神は一回転して地面に叩きつけられる。

 

 ビキッ。


 そのとき、死神の髑髏どくろ顔にひびが入った。

 欠けたその仮面から覗く青い目。

 だが、勇人はこの死神の中身が人間だろうが、幽霊だろう、神様だろうがどうでもいい。

 ただ『壊したい』だけ。

 死神の方に足を進める。


「――なぁ? 死神の魂って奴はどんな味がするんだぁ?」


 無論、それは勇人の言葉ではなかった。勇人の中にいる何かが言葉を発しているように感じる。

 その瞬間、仮面から覗く青い瞳は恐怖で満ちていた。

 勇人の血が流れるその右手が死神の顔をがっちりと掴む。同時に徐々に仮面が壊れていく。


「――俺が味見してやろうか?」


 その目には生気などない。

 人形のようなその目に、悪魔のように笑う口はもう『勇人』ではなかった。

「や、やめろ!」

 悪魔はその言葉を聞こえないようにして、赤い手を死神の口の中に入れ、

 瞬間、

 常人には聞こえないうめきき声が森中に響き渡った。



 ☆



「はぁ!!?? 死なないとはどういうことだっ!?」


 少年が近所迷惑ではないかと思うほどの大声を上げる。『近所』とは、少年が今いる病室の隣のことである。一応個室ではあるが、そんな大声を出されては、地下にある監禁病室に連れて行かれそうな勢いだ。

 翌朝。

 両腕に包帯を巻いた見る限り不機嫌な少年――『勇人』はそこにいた。

 生きている。

 どういうわけか、気が付くとこの病室にいた。

 彼自身、裕が自分に倒れこむところまでしか覚えてないらしいのだが、あの死神を倒したのは勇人なのである。

 ……『倒した』というよりは、『封印した』と言ったほうが正しいかもしれない。

 まぁともかく、勇人も生きていたが、彼もまた生きていた(という表現もおかしいが……)。


「そうだぁ。俺はもともと生きてないわけだし、魂が抜ければ魂を呼び戻せばいいことだ」


 裕は呆れながら言った。

 彼の斬られた右腕には包帯どころか、傷跡すら残ってはいなかった。上半身の方は制服でわからないが、どうやらこの分ではそれも治っているらしい。

「――まぁそれも、お前が死神を倒さなきゃ、それも出来なかったんだけどなっ」

 裕の口角がややつり上がる。

 だが、その笑みを勇人は素直に喜べなかった。

 自分は本当に死神を倒したのだろうか。なんの力も持たない自分が、本当に死神を倒したのだろうか。

 記憶のない勇人にはそんな自分が凄いことをしたのかが信じられなかった。

(まぁ、裕を助けられたのなら良かったけど……)

 そんなことを考えたところでどうにかなるという話でもないので素早く話題を変える。

「あっ、そういえば、よくあんなカッコいい台詞が言えたよな〜?」

 それは当然嫌味であり、『よくあんな気障きざな台詞が言えるよな〜?』と遠まわしに言っているのであった。

 無論、その言葉とは勇人の心を動かした、『俺はただ勇人を守護するだけだ』である。

 それを聞いて裕は顔を赤らめて、

「い、いや〜、なんと言うか……。あの時はムキになっていたと言うか……」

「お前、徐々に無感情キャラを崩してきてるだろ?」

「そんなことはない」

「またまた〜?、そんないきなり無表情に答えたって、この森羅勇人にはお見通しだぞ?」

「そんなことはないっ」

「だいたい、話題によって感情のスイッチが入れ替わるのはどうかと思うのだが……?」

「そんなことはない!」

「カレーは怒、おやつは嬉、猫は楽、死神は激怒。喜激怒楽ってやつだな。ははっはっ」

「だからそんなことはないと言ってるだろっ!!」


 フッギャアアァァアァアァアアアアッ!


 勇人の入院生活は1週間引き伸ばされた。


第1部は完結です♪ 読んでくれた方本当にありがとうございます。

さて次回からは、いたらんSS的なことを挟んで、第2部に入っていきたいと考えています。

それで一つ注意とお願いがあります。

今回もそうなんですが、残酷な描写及び性的な描写を入れる場合がある《予定》です。しかしながら、最初のところに警告するほどのものでもありません。小学生にわからない程度であり、わかる人ならわかる程度で描きます(性的に関しては)。残酷な描写は作者が独断で判断し今回のように警告をとりあえずいたしますので、その警告がどれだけ『長い』のかにご注目いただければ、そのグロさのレベルがわかると思います……、はい。


 ごめんなさい。もう少し話は続きます。


どうでもいいのですが、今日をもって作者は高校生になりました! なので、更新スピードが速くなるか遅くなるかはわかりませんが、今までより若干変化するのでご了承ください……。

それと……、

 

 PVが3000突破しました!!!


ありがとうございます、ホントに。

だけど、感想ください……。お願いします。

励みなるので、よろしくお願いします。


長々となりますが、あと少しの辛抱を……


入学の日に合わせて、最後あたりは急いで書きました。なので誤字脱字や表現不足があるかと思いますが、それは感想も含めてご報告していただけると嬉しいです。


5/5更新 この『SINRA』は休載8月まで休載することになりました;;

     思った以上に高校生活が忙しいので更新が週に1……月2回……できるかどうかぐらいで、夏休みまで後回しにして一気に更新したいと考えています。それまでの間は、新連載でもしようかなぁ……とか考えてみたり^^;

     でも更新速度は良くても週1が基本になることは確実かと……

     (新連載の方が人気だったらそっちをメインにしてみたり……Σ( ̄A ̄;

     どちらにしても、今後もよろしくお願いしますm(__)m

 

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