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「リィ、お前との婚約は今日をもって破棄させてもらう!」


「…はぁ?」


「だからっ、お前との婚約は破棄すると言っているんだ!」


「はぁ??」


「だからっ俺はもうお前の様な女と婚約者だなんて耐えられないんだよ!」


いや、違う。

ききかえしている訳じゃない、目の前の婚約者の阿呆さ加減に驚いているのだ。


「はあぁぁ???」


「俺は、この場で新しくアイリス・フリジアと婚約を結ぶ。俺が求めてたのは彼女の様に奥ゆかしく、かげながら支えてくれるような女性だったんだ…お前とは全くの正反対だ!」


いやいや、だから違うって理由をきいているわけでもないんだよ?


婚約破棄?どうぞご勝手に。


元々私が望んだものではないし、そちらが資金援助をうちに頼むため両親をなんとか説得して、結ばれたものだ。


別にこの男に好感が芽ばえている訳でもない。


むしろこちらとしてはしつこく資金援助を迫ってきた相手が自爆して清々したよ。





…婚約破棄を発表するのがこの場じゃなかったらなぁぁあ!!?

この男、婚約者の誕生パーティーに盛大にやらかしてくれた。


プレゼントは大恥だよってか?

笑えねぇよ!


「どうした、リィ?正論すぎて何も言えないか。大体お前は女だというのに慎ましさの欠片もない。魔術戦でも定期試験でも俺の上をいきやがって…少しは婚約者の顔をたたせようと言う気はないのか!?」


おぉ…更なる自爆。なんて前時代的な考え方の男だ。


新しく婚約者になるというアイリス嬢に同情的な目を向け、心の中で励ます。


強く生きてくれ、アイリス嬢…


てか、恥ずかしくないのかこいつ。


何気に婚約者に何も勝てない無能な甘ったれ坊ちゃんだってこと会場中の皆さんに宣言しちゃってるよ?


アホかこいつ。あっアホなんだった。


「おい、きいてるのかリィ。」


「あっはい、婚約破棄でしたっけご勝手にどうぞ。」


誕生パーティーに盛大に恥を晒されたことには恨み言を言いたい気分だが…


まぁ、婚約破棄については両親も笑って許してくれる…いや、喜んでくれることだろう。


「えっ…」


「どうしたんです?もしかして自分が好かれてるとでも思っていたんですか。…それは恥ずかしいですね。」


「なっ調子に乗るなよ、リィ!」


「リィって呼ぶの、もう止めてもらえますか?もう他人なんですから。」


「っ」


その阿呆…もとい私の元婚約者様はその綺麗な顔を歪ませながら絶句している。


周囲がザワザワして来た。


…わざわざ説明するのも面倒臭いし、正直超恥ずかしくてここに留まっていたくないのでサッサととんずらしよう。


ホント記念すべき私の誕生日にやらかしてくれたわ…


私がため息をつき、前を見上げ「じゃっさよなら!」と言おうとすると、目の前には見慣れた背中があった。


あの元婚約者様とは比べ物にならない程上質な生地で出来た衣服。


肩口から見える艶のある髪の毛は…王族の印である金色。


「ねぇリィ、何やってんのぉ?」


甘えた声を出すその男は、この国の第2王子ークレマチス・ブーゲンビリアだった。


「何って…」


彼は嫌味な程に整った顔を私に近づけた。


「もぅ、今日こんな予定があるなら先に言ってよ。そうすればもっと準備出来てたのに…」


何の話だろうか。

とりあえず、王族の彼がいてはますますここが目立ってしまう。

早く逃げ出さなければ…


「…クレマチスじゃないか。どうしたんだ?」


「ねぇ、ヘンルーダ。婚約破棄、だって?」


「!あぁその通りだよ。俺はここにいるアイリスと婚約するんだ。お前も祝福してくれるだろう?」


ちなみにヘンルーダというのは私の元婚約者様の名前だ。

長い間呼んでもいなかったから忘れかけてたけど。


それに流石は阿呆。

王子に対して馴れ馴れしく不遜な態度。

いやぁ、もはやその阿呆さは清々しいほどだ、アッパレ!


「ふーん、君がバカで本当に良かったよ。」


「えっ?」


クレマチス・ブーゲンビリア第2王子殿下は私の方へ向き、そしておもむろに跪いた。


ーー嫌な予感しかしない。

頭の中ではガンガンと警報がなりひびいている。


そして彼は言ったのだ。


「リリィ・サンタビリア嬢、私のただ1人の愛おしい人。どうか私と婚約しては頂けませんか?」


「……はぁぁぁぁあ!?」


私はつい、本日4度目となる間抜けな悲鳴を出してしまったのだった。

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