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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

櫻井と菱田

作者: 守川圭一郎



裏社会で今最も確実に仕事をこなす業者として有名な「菱田」と「櫻井」は裏社会の大物からの依頼に失敗する。冷酷で残忍で知られるその男、繁宮は人の失敗を絶対に許さないことで有名だった。仕事を失敗してしまったことをどうにかごまかしたい二人は繁宮の部下を騙し仕事が順調に進んでいると勘違いさせ、繁宮に報告させる作戦を思いつく。

本文は集合時間の3時を周りホールに櫻井が向かおうとする場面である。






校内に3限目の授業の終わりを伝える鐘の音が鳴った。隣の座席の菱田が「緊張してんのかよ」とにやにやしながら言ってきた。


「少しはな。お前は緊張しないのか」一階に繁宮の部下が来ているはずだった。


「あまりしないな」


溜め息をついてしまう。「単純なおまえがうらやましいよ。だいたいが、お前の不注意からこうなったんだろう」


「まあな」と菱田は言いながら、スナック菓子を食べている。「ただ俺のせいだけじゃない。トランクをなくしたのは確かに俺のせいでもあるけどな、そいつが死んだのは俺やおまえというよりは、そいつのせいだ。」


「そいつ?こいつのことか?」 は自分の隣、窓側の席で動かなくなった死体を指差す。


「そうだ。こいつが勝手に死んでるのがいけない。そう思わねえか。どうして死んじまったのかはさっぱりわかんねえし」


廊下を授業を終えた生徒が歩いていく。櫻井は腰を上げる。「おい、どこ行く」と菱田が不安そうに言ってきた。


「時間になった。繁宮の部下に、異常なしだって説明しないといけないだろうが。ホールに行くんだ」


「そのまま出て、逃げたりしないだろうな」


 櫻井は、なるほどそういう手もあるのか、と思った。


「ま、逃げたところで大変だろうが」

「おまえが逃げたら、俺はすぐに繁宮に電話して、全部おまえのせいにして、お前の追跡を買って出る。繁宮の靴を舐めるような感じで、尻尾振って、『あの櫻井野郎を捕まえてくるので、なにとぞ私のことはお許しを。命だけは』ってするからな」


「おまえがそこまでやるとも思えないが」櫻井は、座ったままの菱田の後ろと机の間を通る。


時刻が15時10分を周った。立ったまま前方の窓に目をやると、何人もの学生が通り過ぎる。みな同じ目的があるかのように同じ方向に進み、その無機質さは異様だった。


「あんまり過信するなよ」菱田が後ろから言ってきた。




この後、繁宮の部下に対しての言い訳は成功したが、その後菱田と櫻井は全く関係のない残忍な中学生に殺害される。




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