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8 猫マスクよ永遠なれ



 第二回放送への反響。


「柴犬のマスクが嫌で辞めたなwww 気持ちは分かるwww」

「売り出し中なのに柴犬イメージとかついたらそれは嫌だろうww」

「むしろ残った連中、色物イメージがつくのが嫌じゃないのか」

「ねこマスク先輩はそんなこと気にしない、真のヒーローだから。」

「馬鹿野郎、ミケれんじゃー様とお呼びしろ!」

「グラビア子は他の仕事全部こけたから後が無いんだよw」

「相撲取りは、あれ本物? 体形がそれっぽいけど途中で挫折した人?」

「知らんけど今の本業は芸人らしいよ。売れてないけど。」

「グラビア子ってあれで男なのか騙された。」

「いや、ゲイれんじゃーって名前が悪いだけで本当に女だって。」

「でもゲイなんでしょう?」

「だから……」


 などの内容が2ちゃんなど各地で見られた。


 総じて、やめたやつは仕方ない、ゲイ子は男女不明、ねこマスク先輩は本物、相撲取りはどうでもいいという結論で落ち着いた。



 好評だったので、オーディションの内容も放送することにした。


 録画しつつオーディション中……



「兄さん! 何を我が家の恥を全国に晒してるんですか!!」


 高甲良たかから友衛ともえが現れた!



 ちなみに彼女は既に高校は卒業して今は東京で女子大生をやってた。


 ある時、友達にこれ絶対面白いからと勧められて動画サイトを見ると……


 見たとき、思わず飲んでた緑茶を吹いた。


 すぐに情報収集を始め、オーディションにギリギリ間に合った。


 審査員側に座るアホな三毛猫マスクの姿を見つけると……


 背負っていた竹刀袋の中から仕込み杖を抜きつつ急速接近!



「おい、待てトモエ!」

「いいからそこを動くな、このアホ兄貴!」

「だから待て! 今はテレビの……」

「問答無用!」



 抜いた。抜いてしまった。仕込みから居合の一閃!


 もちろんタカシは余裕で回避するも。


 周囲の他の審査員は大混乱。



「だから今はテレビの……!」

「うるさい!!」

「録画してるんだ!!」

「うる……え?」


(バカかお前は! こんな人が多いところで真剣抜いて! 録画してなくても余裕で銃刀法違反だっつうの! ましてや録画してたら言い訳きかんぞ犯罪者!)

(え、そんな! もっと早く言ってよ兄さん!)

(言おうとしただろうが! すぐに頭に血が上って、全くお前ってやつは……!)

(ど、どうしよう! これじゃ私が高甲良流の恥に……!)

(そんなことよりお前が犯罪者になるほうが問題だろが!)

(でも……)



 スタッフは見ていた。


 乱入してきた、ねこマスクの妹らしき女性。


 若い、二十歳前だろう、そして見事な剣の腕、付け焼刃じゃない。


 長い黒髪、スレンダーな姿態、清楚な和風美少女なのも良い!


 シバれんじゃーは柴犬である。つまり犬である。犬なら侍。


 そうか、シバれんじゃーがいまいちパッとしなかったのは……


 戦闘スタイルがミケれんじゃーと似ていたからだ!


 シバれんじゃーは剣術を使うサムライ!


 それも正体は和風美少女、これで行こう!


 でもこんな可愛い子の顔をマスクで隠すのは惜しいから……


 犬耳と犬尻尾、あと化粧を少しして犬っぽく、それだけで行こう!



 結局、犯罪者になりたくなかったトモエは。


 スタッフに押し切られ、タカシにも勧められて……


 シバれんじゃーになることを承諾してしまった。



 設定としては、ミケれんじゃーはオスの三毛猫の変身した姿。


 シバれんじゃーは、由緒正しい血統書付きのメスの柴犬が変身した姿。


 ミケれんじゃーのことを兄と呼んで慕っているということに。


 柴犬に血統書とかあるんだろうかって疑問はスルーで。



 恥ずかしい犬コスプレは嫌だとか。


 ガチで雌犬の役とか冗談では無いとか。


 そもそも私は芸能界とか興味無いとか。


 そういうトモエの反論は……



 すべて、真剣を抜いて暴れる映像の前に粉砕された。


 本名はどうしても嫌だから、芸名は高良たからともえということに


 本名は高甲良たかから友衛ともえ


 芸名とは実は発音すると一字しか違わないが。


 まあ字面が違うから見てもわかりにくいだろう、多分。



 後に一世を風靡するアクション女優、高良巴、誕生の瞬間であった。




 歌舞伎のカブれんじゃー役は、売れない芸人が射止めました。


 体操経験があってアクション得意な小柄な人でした。


 なお、カブれんじゃーとスモれんじゃー、それぞれソロでやってた売れない芸人の二人組は……この番組をきっかけに組んで仕事をすることに。


 それで後々、ブレイクすることになるのだから人生分からない。




 オーディションの録画を編集した番組も好評。


 そして第三回。和風戦隊、ワれんじゃー!




 今回の敵は、カミツキガメ怪人である。


 今回から特殊メイクにも金を使って豪華に、立派な怪物に仕上がっている。


 もともとカミツキガメがモチーフだから強そうだし。



注:カミツキガメ。噛み付き亀。アメリカ原産の体長50センチを超える大型の亀。本気で噛めば人の手指の骨くらいなら簡単に切断する。また亀だけに寿命が長い。強い、大きい上に寿命が長く、日本でも自然繁殖可能なくらい生命力が強い。手が付けられない。ペットとして飼っていたのに手に負えなくなって手放した無責任な飼い主が原因で増えた。千葉県くらいでも余裕で繁殖できるらしいのでそっから西は絶望。日本古来の可愛い草亀とか生存競争で勝負にならんと思われる。



 新たな強大な敵に立ち向かう和レンジャー!


 主力の二人、ミケれんじゃーの体術と、シバれんじゃーの剣術は本物である。


 だから迫力が段違い、二人のアクションが光る!


 スモれんじゃーも頑張って敵の突進を食い止める!


 ゲイれんじゃーも扇子ブーメランとか、三味線から糸を出して罠を張るなどトリッキーな方向で活躍!


 カブれんじゃーも、歌舞伎フラッシュ!で動きを一瞬止めるとか、敵の攻撃を見事なアクションで華麗に回避するとか……脇で渋く頑張る! 売れない芸人だからな、文句など一切言わず役割をこなす!


 最後にシバれんじゃーの居合と、ミケれんじゃーのキックの同時攻撃!


 強敵カミツキガメ怪人も爆散して倒れた!


 ありがとう和レンジャー、日本の平和は君たちにかかっている!!



 今回は、日常シーンも少し挟んだ。


 普段はだらしない「兄さん」の面倒を、ちょっと怒りながらも嬉しそうに面倒を見る「妹」、シバれんじゃーの表情に人気殺到。演技してないで素だからな。


 最後のシーンでまた夕日に向かって駆け出すミケれんじゃーに。


 兄さん待ってよーっと言いつつ一人だけ同じくらいの速度で走るシバれんじゃー。



 放送終了後のツイッターは


 シバれんじゃーの女の子、超可愛い! という内容で埋め尽くされた。


 グラビア出身、ゲイれんじゃーは地味にへこんだ。




 トモエちゃん超可愛いという意見が最強だったので。


 次の回から、彼女の格好は、柴犬みたいな扮装は戦闘シーンのみで


 他の場面では全部、素のままとなった。


 これに文句言ったのは本人だけなので問題ない!



 そこで辻褄合わせるため、普段は普通に人の格好してて。


 戦闘前に変身することにした。


 なに? 設定がおかしくなってるだと?



 アホか!


 トモエちゃん可愛いからいいんだよ!!


 後から矛盾した設定が加わるなんて日本の特撮名物だ!


 そんな細かいことを気にするなんて、お前、ド素人だな!



 不自然な程、トモエちゃんの日常シーンが多くなった第四回!


 なお他のメンバーも日常シーンでは素のままである。


 だがタカシだけは例外で、マスクをつけてる。


 ただ、日常のマスクは、顔に無理なくフィットするタイプの猫マスクで


 戦闘シーンで変身すると着ぐるみの頭みたいな丸い猫マスクに変わる。



 つまり普段はリアルヒーロー、レスラーの猫マスクで。


 変身するとスーパーヒーロー、ミケれんじゃーに変わるのだ。



 リアルヒーローのネコマスクは顔の上半分を覆い、申し訳程度のネコ耳もついてるが、

余り目立たない、実際に激しく動くのに邪魔にならない程度。


 スーパーヒーローのミケれんじゃーは丸い三毛猫頭。

 だがこれにより戦闘力は十倍になる!(という設定)



 トモエちゃんが食事を作ったり、一緒にご飯食べたり、一緒に出掛けたりなど。


 ストーリー上必要か?と疑問に思われるシーンが続き。


 申し訳程度にグラビア子も顔を出して。


 この扱いに裏でグラビア子が泣き。


 相撲取りがそれを慰め。


 タカシは我が道を行き。


 カブれんじゃーは日常シーンにほとんど出ず。



 トモエちゃん以外はどうでもいい日常シーンが流れた後で。




 今回の敵はアリゲーターガー怪人である。



 アリゲーターガー。アメリカ原産の淡水魚。本場では体長2メートルを超す。その顔は

どうみてもワニそのものであり、噛む力もワニに匹敵する。淡水魚として最大最強クラス

である上に、生存能力も高く日本でも普通に生きられる。小さいうちは細長くて形が珍し

くて可愛い上に、とても頑丈で死ににくいので熱帯魚屋さんで気軽に買う人が多い。しか

し果てしなく大きくなるので家庭で飼い続けるのはほぼ不可能。飼えなくなった飼い主が

そこらの池とか川に捨てて……結果、日本でも増殖。



 見た目はほぼワニ怪人といったほうが良いが。


 違うんだ、これはアリゲーターガー怪人なんだ!と


 しつこいプロットが入った後で!



 今回から変身シーンが入る!



 「敷島の(しきしまの)!」 柴レンジャーこと、トモエちゃん。


 「大和心を(やまとごころを)!」 カブれんじゃー。


 「人問わば!」 ゲイれんじゃーことグラビア子。


 「朝日に匂う!」 スモれんじゃー。


 「山桜やまざくらかな!」 ミケれんじゃーことタカシ。



 本居宣長先生も!


 こんなふざけた番組で歌が使われるとは思ってもいなかったに違いない!



 ここから変身エフェクトが入り。


 各人に使われる時間は、トモエちゃん10秒、他の三人は3秒、タカシ5秒。


 まあそれが視聴者の需要だ、仕方ない!





 そして(中略)


 激闘の末、ミケれんじゃーのキックで怪人は爆散して倒れる!


 なお今回は、シバれんじゃーの剣は、敵の鱗が固すぎて通じず、むしろピンチになる

って感じにした。


 そうしてトモエちゃんが、やられて一回は倒れてしまう。


 そんな彼女の弱弱しいシーンもみたいって需要が多かったからだ!



 強敵との激闘を終え、タカシが夕日に向かって走り。


 それに皆がついていくのは前とほぼ同じ。


 お約束だ!









 そして。


 製作者の意図を超えて大人気を取った和レンジャーは……


 四半期だけの予定が半年に、半年だけの予定が一年に。


 さすがに一年もやったらネタが尽きたので惜しまれながら終了。



 だが終了後も、環境庁などからの真面目な広告に起用されたり。


 スモれんじゃーとカブれんじゃーの芸人コンビが売れ出したり。


 スモれんじゃーとゲイれんじゃーが結婚して大きな話題になったり。


 新人女優、高良巴が時代劇のヒロインに抜擢されたりと。


 様々な話題の中で、今でも人々の記憶に残っていた。





 そしてタカシは……




「兄さん、どうしても行くの?」

「ああ。世界にはまだ見ぬ強敵が待っている。開祖、猫丸様も世界を回って旅をして芸と腕を磨いたんだ。俺も行かねばならない。」

「私が行かないでって……お願いしても?」

「すまんな、だが俺はいかねばならん。」

「兄さんの……バカ!」



 トモエは平手打ちすると同時に身を翻して帰って行った。


 その目に涙が浮かんでいたことを……タカシは気づいていたが。


 しかし行かねばならない。



 男には、やらねばならないことがあるのだ!


 幸い、大ブレイクしていた時期に冗談みたいな収入があり。


 それを全部貯金していたので余裕はある。



 世界を回り、多くの強敵と出会うのだ!


 全ては!


 猫にゃん拳の最強を証明するために!




 最強格闘技伝説、猫にゃん拳の物語は、これからだ!!





 完

あとはエピローグです

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