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7 新たなる戦い

もうこの方向で行きます




 社長は商売人であった。


 受けるのがすべて、興行的に成功するかどうかが全てである。



 「ねこマスク」は受けた。バカ受けだった。


 もちろん同じ格好を他の人間がやってもダメだろう。


 タカシの身体能力と、長年積んできた訓練と。


 そして何よりタカシの本気度に、観客は受けているのだ。




 社長は発案者としてロイヤリティーの一部を自分の団体の収入にしていた。


 ねこマスクが有名になればなるほど儲かる寸法だ。



 もちろんプロレス興行に出して盛り上げるのにも使える。


 それだけでも相当だ、タカシが観客を盛り上げてくれるから……


 本番のプロレスも盛り上がる、良い関係になっている。


 社長としてはこの状態を維持したかったのだが……




「スカウトですか……」

「はい! ねこマスクは素晴らしいです! あれは受けますよ!」

「知ってますがね……」



 芸能プロから変な話が来た。



「正確にはスカウトと言うよりは……タイアップ企画ですね! ねこマスクさんの所属団体はもちろんこちら、我々はそれを認めたうえで、うちの企画にも出ていただきたいんですよ、一時派遣です、もちろん社長にもそれなりのお礼は致します!」

「プロレス興行優先、それは飲んで貰いたい。」

「もちろんですとも! それ以外の時間で結構です!」

「そこを飲んでくれるなら後は本人次第だが……どんな企画なんだ?」

「はい! それはですね……!」






オープニング:○レンジャーのテーマの替え歌


補足:○レンジャー。昭和の昔の戦隊もの元祖の特撮番組





番組最初の口上



「タカシはオスの三毛猫である!


 三毛猫のオスは千匹に一匹!


 正に生まれながらに選ばれた戦士であった!



 タカシは以前から日本の平和を守るために!


 ねこマスクに変身して戦い続け来た!


 だが今や新たな強大な敵が!


 ねこマスク一人では対抗できない!



 そこで秘密機関の博士は新たな戦士を呼び出した!


 タカシと共に戦う、四人の戦士を!


 もちろんリーダーは、ねこマスク改め……さらに強化された……


 その名も!


 ミケれんじゃー!(三毛猫マスクだから)



 ミケれんじゃーと共に戦う戦士たち!



 シバれんじゃー! (柴犬マスク)


 スモれんじゃー! (相撲取りそのまま)


 カブれんじゃー! (歌舞伎役者ぽい扮装)


 ゲイれんじゃー! (芸者さんの恰好)



 五人揃って、ワれんじゃー! (和風の和)」




 「和風戦隊ワれんじゃー」というふざけた企画は当初、深夜番組の一発企画に過ぎなかった。スタッフにプロレスファンがいて、「ねこマスク面白ええ!」と感心して思い付きだけで立ち上げたのだ。だから隊員の名前も大概、適当であり……ミケ、シバまではまだ良いとして、スモから既に怪しい、適当過ぎる匂いがプンプンと。歌舞伎だからカブとか、これも酷いが次よりマシ。芸者だからゲイって。ちなみにゲイれんじゃーの役者さんはれっきとした女性、それもグラビア出身の豊満な堂々たる美女だったのだが、この役以降、本当はニューハーフなのではと迷惑な疑惑を持たれるようになってしまった。



 第一回、というか予定としてはこれだけで終わるはずの一発企画、和レンジャーは日本の平和を守るため、ブラックバス怪人と激闘を繰り広げる。しかし敵は強大である、というか現実問題今更ブラックバス根絶とか無理だろ、でも特定外来生物を倒さねば日本の平和は守れない……さあどうする和レンジャー!


 と、そこで終わった。ここまでで枠が一杯だったから。


 それに本来、これは企画だけの一発花火。


 インパクトはある。キャラクターは面白い。その紹介だけで受ける。


 そしてそこで受けたら、後はオマケということで。適当に流した。


 そういうストーリーもグダグダな、いかにも深夜番組な企画だったのだ。




 ところがスタッフの予想以上に受けた。


 ていうか、あの終わり方はなんだ、ふざけるなと局に抗議が殺到。


 問題動画としてtubeにもニコにも流出しまくり。


 関連動画としてプロレスでの、ねこマスクの活躍動画も。


 一挙に、スタッフの想定以上に。


 ワれんじゃーと、ねこマスクは有名になってしまった。



 ここまで有名になったなら活かさないのは惜しい。


 そう考えるのがテレビ屋である。




 よし、あれ続けるか! とノリで決められた。


 しかし問題発生。


 学生時代相撲部だったスモれんじゃーの役者(本業は芸人)と。


 グラビア以外の仕事では全くパっとせず、この先、芸能界で生きていく目途が立っていなかったゲイれんじゃーの女優は、継続を承諾してくれたのだが。

《スペック。顔:○ スタイル:◎ トーク:× 演技:× 歌:××》


 本来は、正統派の戦隊モノとか仮面ラ○ダーとかに出演することを狙っていた若手のイケメン俳優は、間抜けな柴犬の仮面をずっと被ってなくちゃいけないのが元々嫌だったので断固拒否した。一回限りのおふざけ企画だから付き合ったんだ、続き物に出て柴犬イメージがついたら困る、そういう路線で売るつもりは無いんだと、話は分かる。


 リーダーのタカシは勿論継続。彼ありきの企画だし。猫にゃん拳の最強を世に広めるために宣伝となる活動は歓迎。ご先祖様は、猫真似の見世物芸人だったし、むしろ見世物になるのは望むところ、ショーマンシップは家伝なのである。


 またカブれんじゃーの俳優も、歌舞伎役者ぽい濃いメイクでほとんど顔が分からなくなって顔が売れないし……それに目立つのは圧倒的に主役のタカシ、次に目立つのはタカシと同じくらいインパクトある柴犬、それからパワーキャラの相撲、そして唯一の女性枠の芸者……そう、歌舞伎はメイクこそ派手なくせに完全脇役、まったく見所の無いキャラになってしまっていたのだ。

 こんな緑の人みたいな扱いだったら嫌だ、やめると、これも言い分は分かる。




 そこで第二話の内容だが。



 第一話の後半は省略のまま押し通す。


 そして……



 第二話!


 強大なブラックバス怪人の前に、シバれんじゃーとカブれんじゃー、二人の仲間が散ってしまった! だが残りのメンバーで何とか敵は倒した!


 三人だけになってしまった和レンジャー!


 だが戦いは待ってくれない!



 次の敵は、カナダモ怪人だ!


 日本中の湖や池でやりたいほうだいやってるカナダモ怪人を倒せ!


 日本古来の金魚藻を守るんだ!


 という内容になった。



 注:カナダモ。別名アナカリス。アメリカ大陸原産の水草。日本の金魚藻と形は類似しているのだが生命力が全然違う。目に見えない細胞の一片でも生き残っていればそこから完全再生および大増殖が可能なため根絶は不可能。アメリカザリガニとかウシガエルとかブラックバスとかのついでに自動的についてきて日本で増えたと思われる。琵琶湖とかでも大問題になっている。ちなみにザリガニもカエルもバスも戦後日本の食糧事情を良くするためにアメリカさんが好意で持ってきてくれたもんなので今さら文句も言えねえ。



 近くにあったカナダ藻が大繁殖して困ってる池を最初に紹介。


 その池の脇に現れるカナダモ怪人。


 これと戦う三人の戦士!


 なおゲイれんじゃーはほとんど役に立たない。グラビア出身だし。スポーツ苦手だし。でも一応、扇子ブーメランを投げて牽制に成功したことにした。


 そしてスモれんじゃーが怪人を押さえつける。


 最後にミケれんじゃー、タカシが、掟破りの……ねこキック!




 説明しよう!


 猫にゃん拳の継承者タカシの使う88の必殺技の一つ、ねこキック!


 ネコなのに蹴り? それはないだろ? バカなことを言うな!



 いいか、もしも猫だったらって考えるんだ


 まずそれが基本、それが猫にゃん拳


 この今の俺がそのまま猫だ



 猫の形をしていない、人の形をしてるのが現実とか些細なことだ


 今の俺でそのまま猫だ


 なら今の形なら今の状態なら蹴りも使うだろう


 猫は自由だから


 その自由な精神こそが重要なのだ!


(タカシが実際にスタッフに語った内容より採用されたナレーション)



 そしてタカシのキックでカナダモ怪人はうぎゃー!とか言いつつ爆散する。



 そしてその後の池からは……カナダモがきれいに駆除されていた。

(実際にはスタッフが頑張りました)



 最後に通りがかりの近所のお爺さんが……


「はー……また駆除したのか。でもまた何年かしたら復活すんだよな……」


 と今回の戦いを全否定するような内容のセリフを語り……



 だがそんなもんガン無視したタカシが


「さあ皆! 帰るぞ! にゃー!」


 と夕日に向かって走り出す。



 なおタカシが本気で走れば追いつける人間は陸上選手くらいのもんである。


 相応の体格をしてるスモれんじゃー。


 女性の上に和装っぽい走りにくい恰好のゲイれんじゃー。


 まったく追いつけない。



「待ってくれよ、リーダー!」

「待って、待ってってマジで……」



 猫走りによってあっという間に遠くに消えようとしているミケれんじゃー。


 それをヨロヨロと追いかける二人の仲間。


 このまま引きで、エンド。



 番組最後にお知らせが!



 前回の戦い(省略部分)で勇敢に戦って散った二人の仲間!


 シバれんじゃーとカブれんじゃーの俳優を公募いたします!


 一般人も業界人も誰でもOK!


 柴犬のマスクをしても平気な方!


 歌舞伎のメークをして顔が全く見えなくなっても文句言わない方!


 どしどしご応募ください!


 経験年齢性別一切問いません!





歌詞って替え歌でもダメだそうですね

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