表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

2 大陸からの刺客

似た名前の拳法が出ても別物です、フィクションです




 象形拳しょうけいけんというジャンルがある



 ジャッキーチェンの蛇拳とか映画にもなってる


 要は動物の真似をしてその動きを取り入れた拳法である



 手を蛇っぽくした蛇拳以外にも、猿の動きを取り入れた猿拳とか


 象形拳としてメジャーなのに蟷螂拳とうろうけんてのもある


 これは蟷螂とうろう、カマキリの動きを模した拳法で


 手を、指先を尖らせてカマキリぽくして


 カマキリだぞーってそのスタイルだけ聞くとコメディみたいだが



 蟷螂拳の創始者、王朗おうろう


 結構近代に近い時代、清の頃の人、日本で言えば江戸時代頃の人で


 広い中国駆け巡って最強無敵伝説、マンガみたいな実績を残している



 いやね、手をカマキリみたいに指先三本集めて尖らせるってのは


 それで目を突くためのもんなのよ


 つまり容赦なく手加減無く躊躇無く目を突けと



 あー


 そういうことできる人だったんだよ


 うん


 そりゃ強いだろうねえ



 目つきをやるときは、ピースみたいな手の形で両目を突くのではなくて


 親指、人差し指、中指の三本をまとめて


 それでどっちか片方を狙って目を突くというか……


 目を、取れ


 これを取眼しゅがんという


 そもそも目は急所だからそこに攻撃きたら誰でも反射的に避けるのだ


 漫然と狙っても大して効果は無い


 狙えるタイミングが来たところで確実に目を潰すには


 きっちり三本指を揃えて、えぐれ


 潰すとかじゃない


 眼球を取る感じで


 目つぶしじゃなくて、あくまで取眼なんだ




 なんて実戦的なアドバイス!


 うーん


 頭おかしいレベルだなあ、王郎



 さらに



 素早く目を突いて


 目突きが防がれたら


 股関節、膝関節狙って壊せと



 目を狙う、防がれる、でも意識が上に行く


 そこで金玉蹴る、これも防がれる


 でも足の態勢が崩れる


 そこで膝関節狙って壊す


 膝に力入れて立ってるのを横からグシャッと脛で押して潰すんだ!


 防がれたらまた目を狙う、または肩関節狙う、などなど……




 そういう素手の場合の究極的実戦的方法みたいのをだなー


 創始したのが蟷螂拳の王朗ね


 うーん



 手は蟷螂手と言われる目突き用の形を保って


 激しく手の攻防をしながら


 同時に足を動かして股関節と膝関節壊すの狙うとか



 いや冗談じゃなくてだな


 素手で何でもありなら


 これが最強なのかもしれんと


 思ってしまうのが蟷螂拳


 王朗すげえ




 つまり何が言いたかったかというと


 象形拳てのはバカにならんのよ



 猿拳とかだって


 それは人は動物としては猿に近いわけだしね


 猿真似をして力の使い方を工夫したら


 強くなったりもするんだよね実際



 しかし全ての象形拳を越えて


 最強なのは


 猫にゃん拳なのだ




 蟷螂拳のインストラクター


 台湾で秘門蟷螂拳を極め


 日本には出張で来た人物



 彼とタカシの攻防は


 まずは互角であった



 手足の素早い動き


 一瞬ごとに入れ替わり交差しあう技と技



 蟷螂拳は素早さに定評がある拳法だし


 猫にゃん拳も猫の手足の動きだから負けないほど速い



 だが彼は、まだ手を蟷螂手とうろうしゅにしておらず


 本気でこちらの目を狙ったりもしていない



 蟷螂拳は目を本気で狙うことにより敵に隙を作り


 隙が見えたらすかさず肩関節、腕関節を極めるか


 または股間や膝関節破壊を蹴りで狙い


 そしてそのどっかを壊して完全に体勢を崩したら


 とどめにやっぱり目を潰すという



 うーんこれ本気でやると外道以外の何者でもない


 そんな技しか無いので


 つまるとこ「試合」には向かない



 目突きがアリのルールの試合などなく


 しかし目突きがナシなら蟷螂拳ではない



 そう考えたタカシは、あえて人目の無い場所での野試合を挑んだのだが


 しかし相手の自制心が


 こちらの目を容赦なく突いてくるとか、しない


 普通に手足を打ち合う攻防だけでは


 つまり互いに本気出してないってことだし



 相手に本気を出させるにはどうしたら良いか



 一回離れて距離を取りタカシは考えて



 そして決めた



 相手に本気を出させるには


 やはり


 まず自分が本気を出さねば




 右手を猫手にして顔の横に


 左手も猫手にして胸の前くらいに


 全身を柔らかく猫っぽくしてやや斜めに


 ポーズを決めて



「猫にゃんにゃん


 猫にゃん拳だにゃー


 ふー!(猫の威嚇音)」



 決まった


 相手は


 いきなり襲ってきたクマみたいなゴツイ男が


 いきなり変なポーズを決めたのを見て固まった




「ゆくぞ


 これぞ地上最強の拳法


 猫にゃん拳!



 フニャー!」



 タカシの踏み込みの速度はこれまでの動きよりさらに一段加速されている!


 踏み込むと同時にタカシの右手は


 猫手の状態のまま全速で内から外に振られる!



 これぞ猫パンチと並ぶ猫にゃん拳の基本


 その名も


 「猫ひっかき」!!



 引っ掻くポイントは指先の爪、ではなく


 猫手にして丸めた、指の第二関節くらいで


 人差し指、中指、薬指の三本の第二関節を尖らせて爪に見立て



 そこだけで鋭く速く


 相手の皮膚を擦るように切り裂く!



 パンチとか肘とかで


 肌が切れて出血とか


 ボクシングではたまに聞く話だ


 つまりそんとき力が一点に


 肌の浅い位置に集中して、その一点から擦るように動くと


 意外と簡単に皮膚てのはパックリと


 まるで鋭利な刃物で切り裂かれたかのように、切れてしまう



 狙って肘で顔の皮膚の薄いとこを


 切るように、かするように当てると


 簡単に出血させることができる


 ムエタイなどでは普通の技だ



 「猫ひっかき」はそれらを越える技!


 意図的に素早く相手の皮膚を


 猫手の尖ったところで擦ることで


 そう、まるで猫に引っかかれたかのような


 鋭く深く


 真皮までに及ぶ切り裂き傷を与えることができるのだ!



 場所が動脈走ってるとこだと


 まじでこれだけで殺してしまう


 下手にクビ狙うとまずいので



 タカシは今は意図的に


 敵の頬を切り裂き、出血させた




 すだれのように垂らした布を


 毎日毎日、猫手の先で引っ掻く動きをする


 それを十年繰り返すと


 いつしか速さだけで、手の動きだけで


 垂れ下がった布を切り裂く動きを体得できる



 これぞ猫にゃん拳の基本の一つにして殺し技でもある


 必殺「猫ひっかき」!!!




 そして猫ひっかきはこれだけで終わる技では無い


 皮膚を切り裂くだけの技だからあくまで牽制


 これ一発で決まることなど期待しないのが実戦!



 獲物の動きが止まるまで攻撃を続けるのが猫にゃん拳!


 そう、動かなくなるまでネズミで遊ぶネコのように


 食うわけでも無いのにゴキブリ殺して遊ぶネコのように



 攻撃すると決めたら残虐に


 動かなくなるまで続けるのだ!





 まず前に構えた手でネコひっかきを敵に与え


 続けて後ろに構えた手からのネコぱんち!




 流れるようなコンビネーションに


 敵は攻撃をきれいに食らって吹き飛んだ



 どうやら気絶してしまったようだ




「ふん……


 蟷螂拳というから期待したのだがな



 所詮、最強の象形拳は


 猫にゃん拳だったということか



 まあ分っていた話だが



 では、さらばだ


 にゃー」





 タカシの捨て台詞を


 いきなりの暴漢襲撃被害者に近い蟷螂拳のインストラクターは


 聞いていなかった


 気絶してたので





 誰かに賞賛されるような戦いではない


 ただ力だけを確かめるための


 誰にも見られない暗闇での戦いを繰り返してでも



 猫にゃん拳の最強は証明されねばならない




 タカシ(高卒)の戦いは続く!



タカシの中では、敵は自分を襲う刺客です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ