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終末の運び屋  作者: 俊
骸の王
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1-3 王と弱者の戦い 《一切れのヒント》

大剣が振り下ろされる。


たとえ走って逃げたとしても、間に合わないだろう。


どう動いても対処のしようがない。


たとえ、仮に一撃目をかわせたとしても、エーテルもしくは骸の王の追撃によって絶命するだろう。


シオンは一か八かの判断で、カバンの側面に取り付けられた特殊スモークグレネードを道路の端に向けて投げる。


幻魔はエーテルと基礎能力が違うと考えられている。

生命感知に加えて、人の持つ五感に似た能力も持っているらしい。

見つかってないならともかく、先程から戦闘とうそうを続けてきた今の状況で特殊スモークグレネードが通用するとは考えにくい。


煙が吹き上がる。


骸の王の視線が煙に向く。


大剣の向かう先はシオンから煙へと変わり、大地に突き立てられる。


高速で超重力の物体が地面に叩きつけられたために生まれた衝撃波がシオンの体を叩く。


シオンの目に骸の王が死んだように動きを停止した姿と煙に群がる両手では到底おさまらない数のエーテルが映る。


シオンはエーテルを背にして痛む体を無理矢理動かしてその場を離れた。




ビルの影に倒れこんだシオンは荒い息を整えながら先程の状況を整理していた。


「さすがは幻魔と言ったところか…逃げ切れたのが奇跡だな」


ビル並みの巨体に、ビルを軽々と粉砕する力、おまけに急に現れる大量のエーテルまである。

まさしく“化け物”に相応しい奴の能力を見せつけられたシオンは軽い絶望感を感じていた。

あれ程の絶望的な力の差を知らされて得た情報は“特殊スモークグレネードが通用するかもしれない”だけだった。

今回は任務の危険性を考慮して特殊スモークグレネードが三つ与えられている。

残り二つをどう使うかが生死を分けるといっても過言ではないだろう。


「何が、王は“殺せる”だ…」


シオンはジェーンの言葉を思い出しながら、唇を噛む。

メインウェポンである銃の全く通じない不死に等しいであろう相手を“殺す”手段を思いつける人間はこの世にいるだろうか。

不死である以上無力化する手段は拘束等に限られてしまう。

仮に拘束できるとしてもあの巨体、あのパワーを押さえつけれるだけの拘束具を今の人類が調達することは非常に厳しいであろう。

シンシア達の家を支えるワイヤーでがんじがらめにできればずっとは無理でも数分は拘束できるだろう。

だが、できたところで殺せない相手をどうにかできるわけではない。

視界不良に加え、道しるべがない霊嵐の中で数分の足止めに意味があるとは思えない。

霊嵐が止むまで逃げ切ったとしてもシンシア達を引き連れて骸の王から逃げるのは厳しいだろう。

それに彼女らにとっての安全な逃げ場とはどこなのだろうか、少なくともしばらくの間、彼女らの家周辺は骸の王の徘徊エリアに入る。

シオンにとって国は逃げ場だがシンシア達にとっては違う。

彼女らを国へ連れて行けばアランの二の舞となってしまう。

つまり、シオンとシンシア達全員を救う最善策は骸の王を殺すことにある。

自分だけ生きて帰る道を選べばわざわざリスクを背負ってここに来た意味がない。

アランを間接的に殺してしまった償いなしにさらにその仲間に危険だけ残して逃げるなんて選択肢はまず排除された。


“それに、他者を見殺しにして自分だけ生き残るなんて事したら“あいつ”が怒るだろうしな”


「さて、ジェーンの言ったことが正しいとしてどうすればいいか…なにか見落としがあるか?」


シオンの目に一切れの紙が映る。

彼はその紙をすがるような目で読む。

そして、ジェーンの言葉を思い返し


「……?まさかそういうことなのか!?」


と叫ぶ。

その紙は居住区でコーヒによって角の汚れた紙、ジェーンが渡した終末聖書の書かれた紙だった。

そして、シオンの目に入った一つの文が彼の“勘違い”を修正し、正しい情報を与えた。

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