地上へ
~前回のあらすじ~
アラクネ進化からの
絶世の美女からの
大人の階段駆け足からの
ステータス確認です
突然ですが15歳で奥さんを貰いました。
実はあの後も話をしたのだが、自らの進化の時俺の奥さんになる事を望んだら人型になったそうだ。
俺もネアと一緒になりたいと思っていた事もあり晴れて夫婦になったのだが、そこは人と魔物まだ日が浅い内はぎこちなかったり、食文化が違ったり夜はネアが激しかったりと色々苦労していた。
けれど、二人とも笑顔で仲慎ましく過ごしそうこうしてる内にダンジョン生活は半年を迎えていた。
それとここがダンジョンという事もネアから聞いており現在の生活拠点は四十階層の森林地区に移していた。
因みにこのダンジョンの名前は魔物の楽園といい名前の基本魔物しか居らず弱いものは強いものに食べられるというピラミットが出来上がっているとのことだ。
しかも階層ごとに環境が違うらしく、一~十階層までは洞窟、十一~二十階層までは沼地、二十一~三十九階層までは海辺、四十~八十九階層までは森林だそうだ。
「ネアちょっと話があるんだがいいかな?」
「何でしょうヨルン様」
「明日一度外に出て母さんに会おうと思う。仕送りしたお金もそろそろ無くなるだろう、それに何の連絡もしてないから母さんは心配してるだろうし………」
「分かりました。ヨルン様なら奈落の洞穴でも大丈夫でしょうし、私は帰られるまでこの階層でお待ちしてますね」
ネアは少し表情に陰を落としたが心配かけまいと無理やり笑顔を作って微笑んでくれた。
「ちょっと待って、誰がネアを置いていくって言った?話は最後まで聞いて欲しいな」
「え?」
「俺はネアを母さんに紹介するつもりだよ?だから一緒に着いてきてくれないか?」
「え、え?でも、私魔物ですしきっと迷惑を…」
「ネーア?魔物だろうと俺には関係ないし文句も言わせない。例え誰を敵に回そうとも守るし俺は絶対にネアを離さない。それに心配しなくても母さんに至ってはきっと認めてくれるよ?そういう人だからね」
ポタポタとネアは目から涙がこぼれ落ちていく。
「ヨルンざまー」
「そんな顔しないの、綺麗な顔が台無しだよ?」
「わだじば、じあわぜでず。じぬまでいっじょにいざぜでぐだざいー」
「ははは、勿論だよ。ほらおいでネア」
偶にネアは幼児退行するけど、そこがまた可愛いだよな。
俺はネアを抱き締めそのままベットで可愛がった、いつもより激しかったのは内緒だ。
次の日、母さんにお土産等を持ってネアと共に奈落の洞穴へと向かった。
「ここが奈落の洞穴か…」
「はい、この奥に地上へと続く縦穴があります」
「普通なら無理だけどネアの能力があれば問題ないね」
ここは五十五階層の森林奥地にある奈落の洞穴。名前の由来は至っては単純、地上からは何処まで落ちるか分からない程深い闇に覆われた縦穴だから。
一方こちらからはブラッディバットが縄張りにしてる洞窟でしか無い。ただブラッディバットは集団で襲ってくるのである程度の強さが無ければすぐにミイラにされてしまう。
その点、俺とネアは問題ないのでただの洞窟でしかないけどね。
「さぁ行こうかネア」
「はいっヨルン様」
ネアと手を繋ぎまるで散歩に行くかのように洞窟に入って行った。
その頃ある街では…
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「シーナよしっかりするんじゃ!もうすぐ聖女様が来てくれる!」
「ごほっ、ごほっ…ありがとうソル……でももう疲れたわ。ごほっ、ロルフとヨルンの居ない世界なんて…辛いだけですもの、ごほっ、ごほっ」
「ならん、ならんぞ。そんな事はワシが許さん…何が何でも生きてくれ、そうでないとワシはアイツに顔向けできん。それにヨルンはまだ生きてるかもしれん、そんな時にシーナがいなくてどうするんじゃ」
この街でまもなく命の灯火が消えようとしていた。
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ある街道では…
「聖女ミナ様、後一日で依頼のあったコーワ街に到着します」
「ありがとうジル」
「しかし本当に治せるのですか?血結晶病と言えば不治の病として有名です。あの初代聖女様ですら治せなかったと言われていますよ?行って意味があるのか私にはわかりません」
「だからこそ行くのですよジル。例え治せなかったとしても、祈りを捧げ安心をさせてあげる事もできます。もしかしたら他にも出来る事があるかも知れません。意味が無い事は一つもありませんよ」
ジルは顔をしかめて聖女の言った事を理解しようとしていた。
「ふふふ・・・その内あなたにもわかりますよ」
「そうゆうものですかね」
「そうゆうものよ」
コーワ街に向かう馬車の中、聖女と見習い聖女が運命の歯車に巻き込まれるように馬車を進めていく。
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戻って洞窟内、ヨルンとネアは赤い魔物ブラッディバット相手に無双を繰り広げていた。
「ネアそっち行ったよ」
「了解です。スパイダーネット」
ネアの指先から毒性のある糸が蜘蛛の巣状に張り巡らせる。ヨルンに進行方向を誘導されたブラッディバットが次々と糸に絡まり毒で死んでいく。
「結構倒したけどまだ居るのかなぁ?」
洞窟のあちこちに死骸の山が築きあがっていた。
「もうそろそろ全滅出来ると思うのですが」
「俺が本気でやったら早いんだけどね・・・」
「絶対にやめて下さいね?洞窟が完全になくなりますから」
隣りのネアからあきれた目を送られた。
「冗談だよ....」
「そういって四十四階層を更地にしたのは誰でしたっけ?あそこには私の大好きな蜜の実がたくさん生ってたんですけどね」
「スミマセンでした」
こうゆう時のネアは怖いんだよな...素直に謝るのが得策.....そんなに睨まないでください。
「まぁ今回は許してあげます」
こんな事を繰り返しながらようやく縦穴に到着した。
「着きましたよヨルン様」
やっとか、ん?上から何か来る!?これは追われてる?どっちにしても...
「気付いてるかネア!?ネアは自分の周りだけネットを張れ、それと耐えれる準備だけしておいてくれ。俺は追われてる奴を助ける。俺の勘がそいつを助けろと言ってる気がするんだ」
「分かりました。ですが最悪自分の安全を優先してくださいね」
「分かってるよ。来たぞ!」
さて追われてるのは...!?ブラッディバット?でも色が黒い吸い込まれそうな位漆黒だ。
「俺の言葉が解るならこっちにこい、黒いブラッディバット」
よし、こっちに来たか。今の内に体内毒生成....
俺は黒いブラッディバットを抱えて丸まり全てのブラッディバットに血を吸われる様にした。
っつ!これだけの数に噛みつかれるとさすがに痛いな.....ヤバい意識が飛びそうだしこれ以上吸われるのは危険だ。
「ネア!後は頼んだぁ!」
俺は濃密な殺気を無差別に放ちその場に倒れた。
「ん....きれいだね」
「もう騙されませんよ?ホントに無茶をして、お仕置きが必要ですね」
俺はネアの膝枕を離れ今の状況を把握する。
「ネアのお仕置きなら大歓迎だね。で、今の状況は?」
「もうっ!ヨルン様が最後に放った殺気によって八割方のブラッディバットは行動不能に陥り、私が十分程度で殲滅しました。それとヨルン様は無茶をして私の膝の上で三十分程度休まれていました」
「黒いブラッディバットは?」
ネアは少し怒っているのか無言で指さした。
「治療してくれたのか....ネア怒ってる?」
「怒っていません!」
「ホントに?」
「知りません!それとヨルン様絶対に浮気しないで下さいね?もしもの時は絶対に先に相談してくださいね」
浮気?今この状況で?取り敢えず睨まないでください。
「お、おう。とりあえずルームで休ましてくるよ」
「はぁー多分無理ですね...もういいです。待ってますので休ませて早く戻って来てください」
不機嫌の理由が俺なだけに下手に触れると油を注ぎ兼ねない。今は大人しくしたがっておこう。
そして黒いブラッディバットを部屋で寝かせた俺は、これ以上ネアの機嫌を悪くさせない為直ぐに戻り糸の能力を駆使して二時間掛け縦穴を上り切るのだった。
「ん~久しぶりの地上だー」
「あまりダンジョンの中と変わりませんね」
「そりゃあ、ダンジョン内でも何故か朝昼晩があればそう思うよね。けど空気が全然ちがうよ」
「そうですか、私には余り分かりませんがヨルン様がそう言うならそうなんでしょう。所でここはどの辺りになるのですか?」
「えーと、多分コーワ街近辺の帰らずの森だと思うんだけど・・・ちょっと待ってね」
俺は糸の能力を使い近くの背の高い木に登った。
えーと、あっちが王都だと思うから・・・おっ、多分あれがコーワ街だな。
「ネアー、ここから北東の方角に街が見えるんだけど多分それが母さんの居る街だと思う」
「分かりました、ではそこに向かいましょう。幸いこの辺りには強そうな魔物が居ませんので問題ありませんよ」
俺はネアと共に母さんに会える喜びを胸に秘めながら足早に街へと向かった。
ここから運命の歯車が回り始めるとも知らずに・・・
ブラッティバット……吸血コウモリ、安直ですね(o・ω・o)