父親からの伝言
「あっ、レゲイン!」
美来は進行先にレゲインを見つけるとディネを引っ張って駆け寄った。
「あれ? お前が連れてかれてたんじゃねぇのか?」
「えっ? そうだったの?」
レゲインは呆れた笑みを口元に浮かべて美来を見た。
「ねぇ、レゲイン、バムは?」
「知らねぇよ、途中ではぐれた」
別にって言うと感づかれるか?
美来はレゲインを見つけて話した事でさっきまで追っていた者の事を忘れている。それに気がついたディネは前に出る。
「君、ロケット持った子供見なかった?」
「子供? どっちを追ってんだ?」
「ロケット」
「これか?」
レゲインはポケットからロケットを取り出しチェーンを掴んでディネの前に差し出した。ディネはそれを両手で包み取る。
「ぼくのだ……」
「何だ、ディネの母親か兄妹だったのかよ?」
「勝手に見たの!? まぁ、構わないけど、ぼくは一人っ子だよ」
レゲインから受け取ったロケットの中身を確認する。美来もこっそり後ろから中身を見た。
灰色の髪をして丸い短い耳の髪飾りを左右につけている女性がこちらに微笑みかけている。
兄妹居ないって事はお母さんかな?
そんな私の考えが読めていたのかディネはその疑問に答えた。
「母親だよ、ぼくの」
レゲインのお母さんも綺麗だけどディネのお母さんも意外と。そう言えばバムのお母さんはどんな人なんだろ?
「綺麗な人だね、優しいの?」
「うん、優しい人だったよ」
その言葉に一瞬表情の曇った美来とレゲインに気がついたディネは話を続ける。
「ぼくが四歳を三年ほど繰り返した時に殺されたとぼくは思ってる」
「思ってる? 何で疑問形なの?」
「父親が一般的に言う碌でもない人だったんだよ。あいつなら殺って当然だよ」
ディネはボソッとした様なはっきり聞こえる声でヌッとした何食わぬ顔で言った。
この人を見てるとレゲインがとても明るい男の子に見える。あ、カクランの方が明るいし普通の男の子かな?
向けられたことの無い少し嬉しそうな笑みを美来に向けられたレゲインは“は?”という目で美来を見た。
「でも、お父さん暮らしてたんでしょ?」
「ぼくも殺され兼ねないのに? 死んで直ぐ、治安の悪い施設に放り込まれたよ。ぼくの有無何て関係なかったんだ、父親はぼくが邪魔だったんだよ」
レゲインはただ聞いているだけのように居たが父親の話で少し目を細めていた。
何か、レゲインとディネって似てる様な気がする。レゲインはお母さんが死んだって思った後お父さんと暮らしてたのかな? お父さん……か。
「美来? どうしたんだよ?」
「ふぇ? 何が?」
「え……いや、別に何でも」
美来がレゲインを見て首を傾げていると、携帯が鳴った。
あ、カクランからだ。
「もしもし? カクラン?」
『いててっ、あ、美来やっと出た』
ディネとレゲインが左右から携帯を覗き込む。レゲインは何を思ったのか腕を掴み美来に携帯を耳から離させてスピーカーにして自分にも聞こえる様にする。
『その、僕とルウブが父さんに先に忠告されたんだけど』
「どっちの父親だよ……」
確かに……。
『マールス鉄でできた物を持った人が失踪してるらしいんだ。ルウブも知らなかったみたいだけど魔女の仕業って……っ!』
電話の向こう側からゴタゴタしているのが聞こえる。カクランの断末魔の様なものとルウブの軽い怒鳴り声もした気がする。
多分、カクランはルウブに殴られたり絞められてる。
レゲインとディネは次の言葉を待っていたが美来はもうダメだなと思い通話を問答無用でブチ切った。その行動にレゲインとディネは唖然とする。
「普通切るかな?」
「マールス鉄か」
「それ、ぼくのロケット……」
それでか、魔女がわざわざその辺の少女と契約するわけだ。
「ねぇ、レゲイン、バムどこいったか分かる? 喧嘩でもしたの?」




