使えるものは使う
「んで、何でこっちに来たんだよ?」
レゲインはすぐ横でこちらで起きていたことを気にする様子もないディネの方を向く。
「あの島には移動塔が繋がってないんだよ」
「そりゃあ、あそこの奴らは下との政治的交流は避けてるからだろ?」
美来を軽く締めるようにして肩を組んでいるバムはそのままレゲインとディネの間に来る。
「バ、バム、苦しいっ……」
「あそこの人たちは自分たちより上に居る者を信教するんだから、下の人はゴミ同然なんだよ」
「まじかよ……じゃあ、あの白い孔雀野郎も」
名前忘れたけどあいつ、俺らの事見下して観てたのか。
「バムっ……しまってるっ、あっ、ディネどこ行くの?」
ディネは一人で浜沿いに歩き出したが美来に声をかけられ何かを思い出したかのように戻り、美来だけを強引に腕を引いて歩き出した。
「あっ! 美来ちゃん」
「お前が手離すからだろーが、見えなくなる前に追いつくぞ」
レゲインは軽くバムの頭を叩き美来とディネを追った。
「痛いなぁ〜待ってよ」
バムも叩かれた頭を押さえながら後を追う。
ディネは美来を連れて物陰に隠れその先の様子を伺っていた。
「ディネ、痛いって、血通わなくて腕腐る」
「少し静かにしててよ、向こうに気がつかれたら牢行きだよ」
じゃあ離してよ……。私逃げるからさ、道連れにしないでほしい。
美来はいつになく不機嫌な顔をして手を引き離そうと奮闘していた。
ディネの視線の先にはドラゴンの小さいバージョンの様な生き物が離陸と着陸を繰り返している。
何あのドラゴン擬き、ディネは何しようとしてるんだろ?
「あれって何?」
「ん? あれはワイバーンだよ、島と陸の交通手段。定員は二、三人」
確かに小さなドラゴンの様な生物は背中に鞍を装着している。
「一体拝借するんだ」
美来の腕を少し引く。
この人盗む気なんだ、巻き込まれてる……まぁいいかな。
こ、ここで私が捕まっても私は必ず知らないって答える。嘘発見器にかけても無駄なんだし、私にとってはそれが真実だから。
ワイバーンが着地用の台に乗り手薄になったところを見計らったディネは美来を強引に連れてワイバーンに乗り飛び立つ。
「おい待てよ!!」
「美来ちゃ……」
ーードカッ!
バムはすぐ目の前を走っていたレゲインが何かにさらわれる様に視界から消えたのを見て立ち止まった。
「げ、ゲレイン……」
視線を横にずらすとレゲインが何故か居ないはずのツノメに押し倒されていた。
「うっ、痛えな……なっ!!」
「レゲイン会いに来てくれたの?」
レゲインはツノメを見ると押し離して脱げたフードを気にする余裕など無しに後ずさった。
「な、何でお前が居るんだよ!」
「上、私の故郷」
「ぅゎ……こいつもかよ……」
レゲインが余所見をしてそう呟くとツノメが迫ってきた。
「っ! てめぇ、この近づくな雌豚が」
近づいてくる顔を押し返して自分から離そうとしていた。
「ねぇ、遂になってる片方が存在しないともう片方も消えると思うんだよね〜」
「気持ち悪い!!」
レゲインはツノメを蹴り離し立ち上がった。服を払いフードを被りなおす。
「どうする? ゲレイン」
「どうするも、追いかけるしかねぇだろ?」
レゲインはゴミを見る目でツノメを見下ろす。
「こいつ使うか……」
「そうだね、私達までワイバーン盗む訳にはいかないもんね。大丈夫なのは」
「美来だけだな」
「何で、何でそこのパンダまで私の家に上げなきゃいけないの!」
ツノメを使いワイバーンに三人で乗っていた。レゲインは一番後ろに座りバムはツノメとレゲインの間に壁代わりとして座らされていた。
「誰もテメェの家に上がるなんて言ってねぇし」
「ゲレイン、ストーカーされてたんだね、お気の毒に」
レゲインは横に座っているバムを睨みつけた。一人だけワイバーンにまたがって座っているツノメは前を見ながらイラついていた。
「これだから記憶の続く人は嫌なの、あの子の方がよっぽど素直……!」
「ちょっと! 美来ちゃんに何か吹き込んだの!?」
バムはツノメを揺さぶる。ワイバーンの飛行も不安定になりレゲインは慌ててバムを止めに入った。




