少年とインコ
「今の音、上からだね。僕はここで待ってるよ、さすがに人の家に無断で奥まで入るのは気がひけるからね」
カクランは行ってらっしゃいというように軽く手を振っている。
玄関に勝手に入っている時点でその考えは通用しなくなってるよ、カクラン。
美来とレゲインがズカズカ階段を上がる中、バムは申し訳なさそうに後ろをついてくる。
三階まで上がりあの窓があるであろう部屋を美来が開けるのを後ろでレゲインは待っていた。
だが、美来が扉を開けたかと思うと中から何かが倒れてきて、美来がそれを避けたのでレゲインはそれに押し倒されてしまった。
「ぐわっ!?」
「ディネ、ディネ、来た」
インコは単語を叫びながら部屋の中を飛び回ったかと思うと美来の肩に止まり、美来に髪留めを返した。
「うっ……いたた、なんで扉が、!」
レゲインを押し倒したそれは起き上がり驚いて下敷きにしたままレゲインを見下ろしていた。
「ケホッ、痛えな、何なんだよ」
「ゲレイン、美来ちゃん、大丈夫? その人は?」
起き上がったのは灰色の長い髪をして灰色の丸くて短い耳を模し尻尾が右の耳についた耳当てを首にかけた男だった。
「ーーうわっ!!」
ーードタッ! ガツッ!
レゲインは押し倒されていることに驚いてい男を突き飛ばした。
「いっ……何するんだよ」
壁にぶつけた頭をさすりながら起き上がった。
インコは美来の肩から離れ男の立てていた膝に止まった。
「ディネ、大丈夫? 大丈夫?」
「大丈夫だよ、頭をぶつけただけだから」
男はインコの首を指でさすり微笑みかけていた。
「お前、何するんだよ!」
レゲインが怒鳴りつけると男はインコを肩に乗せて立ち上がった。
「何って、ぼくは扉にもたれかかってただけだから、ぼくに非はないね。それに、勝手にぼくの家に入ってきたのに逆ギレか?」
レゲインはその態度が気に入らないのだろう、男を睨みつけながら立ち上がった。
「それに、美来だけを呼んできてもらったはずなんだけど。何で君らまで来るのかな?」
「へ? 私? どこかであったっけ? 誰?」
バムは今にも殴りかかりそうなレゲインと挑戦的な目で見る男の間に割り込む。
「美来ちゃんは君のこと知らないって言ってるし、そのインコが美来ちゃんの髪留めを取るからいけないんでしょ?」
「それは当たり前だよ、ぼくが頼んだんだから。別に美来を見たのは試験の時だけだし、話もしてないからね、知らなくて当然だ」
レゲインとバムは自分より背の低い男を変質者を見る目で見ていた。男は美来の方を向き直る。
「ぼくはソリトゥーディネ・マリンコニーア、ディネで良いよ。君に頼みたいことがあるんだ」
「私なんかに? わっ!」
美来が話を聞こうとした時それをよく思わなかったレゲインとバムは美来の腕を引いて後ろに下げる。
「こんな奴の話聞かなくていーよ、戻るぞ」
「こんな変質者ほっとこ」
そのまま美来を引っ張って階段を降りると下にいたカクランは困った笑みを浮かべていた。
「その様子だとディネと何かあったのかな?」
あれっ? 先生。
キッネの奴初めからあいつの家って知ってやがった……。
「カクラン知ってたの?」
「うん、まぁ……。三人ともディネに協力してあげてくれないか? あんな感じの奴だから一人の班なんだよ」
階段の上から足音がしたので見上げてみるとディネが歩いて追ってきていた。
「先生……来てたんですか? ぼくの所には何もないって言ったはずですが」
カクランは“ほらね”というように美来達を困ったように見た。




