常識のあったバム
美来は髪を引っ張られる感覚とコツコツと硬いもので髪留めを叩かれる音で目を覚ました。
「んぅ……?」
身を起こしまだ眠たく閉じかけているめをこする。すると足の上に重みのある何かが乗った。
目線を下に降ろすと見覚えのあるインコが美来の髪飾りの片方を口にくわえている。
「あれ? 髪留め、返して」
インコは左右に首を傾げピョンピョンと跳ねて地面に降りると何度かステップを踏んで飛び立って行ってしまった。
「あっ!! 待ってよ!」
美来の声で気持ちよく眠っていた三人は目を覚ますことになった。
「何だよ……うるせぇな」
レゲインは鬱陶しそうに頭をかき片手で口元を軽く覆い欠伸をする。
バムは片腕で身体を起こしながら目を開けたときに、すぐ目の前を美来が駆け出したのを見て驚き完全に目を覚ました。
「美来ちゃん? どこ行くの!?」
カクランは狐の姿で伸びをして犬のように身体を振るわせると人の姿になり座って、立ち上がったレゲインとバムを見上げる。
バムは美来が見えなくなる前に追いかけて行った。
「おい、どこ行くんだよ?」
置いていかれそうになりレゲインも後を追うその後をカクランが。
「はぁ、はぁ、待ってよ!」
インコは悠々と高い所にある窓の枠に止まった。
美来は後を追いかけて蔓が巻きついた錆びた鉄格子の門を抜け、道だけ整理された庭に入る。焦げ茶色の木造の洋館は少し不気味な感じがする。
「ディネ、ディネ」
インコは窓枠に髪留めを置くと窓に向かって何かを呼んでいる。
しばらくするとインコは呼びかけるのを止め髪留めを咥えた。すると白い肌の人の手が窓を開けインコを招き入れると窓を閉めた。
「美来ちゃん、待ってよ、足速くなってる……」
「どうしたんだよ、いきなり走り出して」
バムとレゲインが追いかけて庭まで入ってきた。レゲインはインコの入っていった窓をじっと見上げる。バムは美来の前に出てきて髪留めが片方だけ無いのに気がついた。
「美来ちゃん、髪留めどうしたの?」
「インコに持ってかれた」
こういう事は美来ちゃんが忘れる前に聞かないと無くしたままになっちゃうね。
ーーキュイィィ……ガタンッ!
背後で突然聞こえた門の閉まる音に驚き美来とバム、レゲインはビクッと飛び跳ねた。振り返ると驚いていたのは美来達だけでなくカクランも後ろで肩を縮めて驚いていたことに気づく。
「何すんだよ、びっくりするだろ」
「何って、僕は触ってないよ?」
「は? じゃあなんでしまったんだよ?」
門が閉まった時風は一ミリも吹いてはいなかった。
「幽霊とか? 美来ちゃん、先生、何か見た?」
「うんん、何も見てないよ」
「悪霊の気配も特になかったよ?」
レゲインは前をむきなおり扉の方を見る。すると美来がその横を通って扉の前に上がりドアが開くことを確認した。
「ねぇ、ドア開いてるよ? 入っていいのかな?」
「いいんじゃねぇか? 入られたくなかったら鍵ぐらいかかってんだろ」
「そうだね」
レゲインはドアに近づき美来と中を覗いて確認した。
バムは罪悪感を感じカクランの方を見て目で確認を取るが無反応だったので諦めドアに寄った。
「広そうだな」
「うん、三階にインコがいると思うんだけど」
美来とレゲイン は躊躇うことなく中に入っていった。
中は少し埃っぽいものの蜘蛛の巣は張っておらず、廊下に本が積まれていたり園芸用の道具や土の袋が置かれている。
「人いそうなんだけど入っていいのかなぁ?」
「そんなこと言うなんて、立ち入り禁止区域に入ろうって言ったバムらしくないな」
「先生だって、教師のくせに止めるべきでしょ」
カクランは当たり前のようについてきて家の中に入っている。
ーードタッ!




