暑くても仕方がない
美来が世界に拉致をされバムやレゲインの問題も明らかになりカクランが立ち直るなどバタバタとした春が過ぎた。
六月になり段々と気温も上がってきた時、新たな問題が動く。
連載を再開します!
よろしくお願いします!!
「創造者っていうのはそれぞれの異世界に一人か二人居るんだ。その世界を想像したもので漫画家や小説家とかも創造者にはいる。もちろん独立した世界もあるけどね。創造者は想像者とも言うんだ」
カクランは暑い中腕まくりをしていつものように授業を終わらせた。
その後美来達はグループルームに入り窓やドアを全開にして椅子に座り机にうつ伏せになる。
「あちぃ……死ぬ、どうしろってんだ」
「き、きっとここの創造者の感覚では六月半ばは猛暑になりかけなんだよ……」
レゲインとバムは完全に暑さにやられているようだ。美来はただただ馬鹿だと思いながら座っていた。
なんで二人とも春と同じ服着てるんだろ? バムは元から半袖だからいいけど、レゲインは長袖でいかにも暑そうなのに。
美来は店街の服屋で自分の高校の制服に似た夏服を発注していたので今はそれを着ている。
「何で半袖着ないの?」
「あ? それは、この服しかねぇんだ」
バムは無気力にレゲインの方をじと目で見る。
「どっか行って存在そのものが暑そうに見える」
「うるせぇよ……お前のフードも暑苦しいんだ」
こんな状況でも口喧嘩に走るとは見上げた根性だと思う。
喧嘩で熱を発する前に暑さをしのぐ方法を考えてほしいぐらいだよ。
「バム、レゲイン、二人共口喧嘩に走る時点で暑苦しいよ……」
ため息交じりの美来の呆れ切った言葉にバムとレゲインは美来を一度見てため息をつき喧嘩を止めた。
「ねぇ、いい方法二つ思いついたんだけど」
バムは机の上に伏せた顔を上げレゲインに話しかけた。
「何だよ……?」
どうせロクでもないことなのだろうと思いながらもレゲインはきき返す。
「一つは、動物になれば裸だよ、涼しいんじゃない?」
「却下、俺は黒いんだぞ、熱溜め込むよ。お前なんて全身毛で覆われてるだろ」
「もう一つは、水着着たらどうかなぁ? これなら美来ちゃんにもできるし」
レゲインは呆れた目でバムを見ている。美来は夏服を着ていて二人より暑くもないので聞き流していた。
美来は突然ポケットで震えた携帯に小さく驚きながらも取り出して画面を見て立ち上がった。
「あ? 美来どこ行くんだよ?」
「外暑いよ〜、美来ちゃん」
レゲインとバムの気力のない声が美来に問いかけてきた。
「カクランが森の中の池に来いって」
美来はメールの画面を二人に見せた。
美来達が指定された立ち入り禁止の森にある池に着くとカクランが立って待っていた。
「あれ、美来だけ来るかと思ったけどレゲインとバムも来たんだ」
「先生、危ないセリフは止めた方がいいよ」
「どこのハーレム主人公だよ? 来て悪かったな」
カクランは二人の予想内の反応を見てクスリと笑った。
「冗談だよ、三人で来るって分かってた」
美来はそんな三人をよそに冷んやりとした池に手を浸けていた。池は湧き水なのだろう手を近づけるだけで冷気が感じられる、そのうえ木が影になっていて森の外より格段に涼しい。
「それで、先生は何で美来ちゃんを呼んだの?」
「ん? 別に美来を呼んだわけじゃ無いんだけど。暑かっただろ? ここ涼しいでしょ」
暑そうにしていた三人を気にかけてここに連れてきたのだろう。
「けどよ、お前、一班に肩入れしてダメだろ? 立ち入り禁止区域だし」
「くつろぎながら言われたくないな」
レゲインは池のそばに生えている木の幹にもたれかかり座って本を読んでいた。
「レゲイン」
「あ……っ!」
レゲインは美来に呼ばれて美来のほうを見た瞬間バムに池の澄んだ水を顔にかけられた。
「何すんだよ!」
「引っかかったぁ〜」
レゲインはムスッとしながら本に目線を戻す。すると前にタオルが差し出された。
「ほら、僕、丁度持ってたから」
レゲインは疑ったような目でカクランを見ながらタオルに手を付ける。
「使ってないからな」
カクランはそう言って木の根元に座る。
しばらく本を読んでいると騒がしかったのが嘘のように静かな水の音と木が風に揺られる音、鳥の鳴き声しか聞こえなくなった。
レゲインはその様子に本を読みながらもウトウトしてしまいカクッと首が倒れかけたのに驚き顔を上げた。
隣で座っていたカクランは何故か狐の姿で丸まって眠っている。ライオン並みの大きさの狐で首には十字のペンダントを下げている。
こいつ、普通の動物のサイズじゃなかったんだな……。
美来とバムは草の布団に寝転びスヤスヤ気持ちよさそうに眠っていた。
「お前らもかよ……」
レゲインは本を開き直し座り方を変えて読み続けたが周りの空気に流されたのかそのまま眠った。




