謝ってきた理由
カクランはレゲインの所に行くと問答無用で痛いからやめろと訴えかけたレゲインに刺さったナイフを引き抜き、遠くへ投げ捨てた。
すると魔法陣が消えた。
カクランは結界を解き傷を手で押さえ何かを探す。すぐ側に付いてきていたルウブのマフラーが目に入りルウブからマフラーを剥ぎ取った。
「おい!!」
レゲインの刺し傷の止血をマフラーでするとレゲインをおぶった。
「美来、バムは大丈夫かな?」
美来は頷いた。バムは怪我はしていたものの動けないほど深い傷ではなく美来の手を掴み立ち上がった。
「私は大丈夫だよ、ゲレインは苦しそうだけど」
「うるせぇ……お前もナイフ刺されてみろよ」
カクランはホッとしたような笑みを浮かべた。美来はいつもよりスッキリしたような笑みを見てもう大丈夫なんだなと思った。
「あれ? アウラーとあの、猫みたいな奴は?」
「アウラー先生を連れて表に戻るって言って行ったよ? 他の生徒も拾っていくって」
「じゃあここに残ってるのは僕らだけか、戻ろうか」
ルウブに案内をしてもらい裏世界の出口まで行く。その間マフラーを取られたルウブは時々身震いをしながら無言で怒っているようだった。
鏡を抜けるとバムは待っていた銀髪の女性を見て口をパクパクさせ驚いていた。
立てると駄々をこねたレゲインを下ろしたカクランの前にホワンは立った。
「ねぇ、バム、あの人が何かあるの?」
「あの人は、カトゥルス王国の女王様だよ」
ホワンはカクランにとても柔らかく微笑みかけた。
「カクラン、二年前の呪縛は解けたようですね。どんな噂が流れても貴方を気にしてくれたこの子達を見捨ててはいけませんよ?」
自分より数センチ背の低いカクランの頭を自分の子を撫でるようにして撫でた。
「あの時は本当に暗い顔をしていたのに、今は明るそうでなによりです」
カクランは珍しくこの状況下で黙り込んでしまっている。
美来とバム、レゲインは俯いて黙っているカクランの顔を見て笑い出した。
「ど、どうしたんだよ?」
動揺を隠しながらカクランは聞いた。
「だ、だってカクラン、撫でられて照れてる」
「よくナンパしてるやつの反応じゃねぇだろ」
「う、うるさいな、僕はこういうのが苦手なんだよ」
顔を赤くしてわざとらしくそっぽを向いた。
その後捕まえていた魔女は逃げた。
教頭は裏世界に忘れられていたのを思い出されリアドラゴンの力で何とか連れもどし教頭本人が復帰できた。
ルウブは釈放されブリザードラゴンの群れに戻ったものの未だにグラン王に腹を立てていた。ルウブが無実になったことでレゲインも咎められることはなかった。
カクランは担任として復帰しクラスが分裂されることは免れた。クラス内でのカクランに対する批判はあまりなく冷たい目で見る者も誰も居なかった。多分、二年前の話を聞いただけで実害は全く無かったからだと思う。
って、私は忘れてたから聞いた話をそのまま整理しただけなんだけどね。
美来の前で話を忘れているのを見て呆れているレゲインとバムが立っていた。
「三回目なんだからよ、さすがに覚えろよな」
「いいよ、ゲレインは教えなくたって、私が何回でも教えるしね」
レゲインはむすっとして腕を組んだ。
「ちょっといいかしら?」
突然レゲインとバムの間を割るようにしてソテが前に出てきた。
「そ、その、悪かったわね。カクランの噂を流して」
美来とバム、レゲインは“は?”と言うように首を傾げてソテを見た。少し刺さるような三人の視線にソテは息が詰まりそうになった。
「ちょっと! 私が謝っているのに何なのよ! 別に貴方達三人だけに謝っているわけじゃないのに」
聞くとソテはカクランの話を広め苦しめるだけのつもりが事が大きくなったのを申し訳なく感じカクランに謝ったが笑顔で許され罪悪感が増したのでクラス全員とアウラーに謝って回ったらしい。
そりゃあそうだろう、クロとしか仲良くしているところを見かけないソテがクラスの分裂でクロと別のクラスになってやっていけるわけがない。さすがに危機を感じたのだろう。
「もういいわね」
反応にイラついたのか踵を返し自分が取った席に戻っていった。
「もう直ぐ梅雨だね〜美来ちゃんは雨嫌い?」
「うんん、好きだよ、落ち着くし」
「雨のどこがいいんだよ、羽は重くなるしよ」
「ゲレインはね、ってコウモリになることなんてそうそうないくせに」
いつものように口喧嘩が始まった。
美来は微笑ましそうにそれを止めずに見ていた。
とりあえずここまでで終わらせようと思います。読んでくれた方ありがとうございました。
一応完結ということですが実際はまたそのうち続きを載せようと思います。気が向いたら直ぐに再開するかもしれません。
その時はよろしくお願いします。




