動揺の理由
「まさか……お前、パンテル、なのか?」
「へ〜アウラーより勘がいいじゃねぇか」
カクランそこで少し落ち着きを取り戻した。
「何でブラックドラゴンになってるんだよ、さっきまで名乗ってた名前ってそのドラゴンのか」
「そうだよ? そりゃあ本名名乗るわけにはいかないだろう?」
それを聞いていたルウブは声を荒げず怒った声で話に割り込んだ。
「てめぇ、こないだの時はオレにフルネーム名乗れつったくせに、お前こそ嘘じゃねぇかよ」
「フハハハッ当たり前だろ、身体を乗っ取る相手の名前知ってなきゃバレちまうじゃねぇかよ」
メランはそこでカクランが護符を取り出そうとしているのに気がつき蔑んだような上から目線で教えた。
「カクラン、俺はリガーティオみたいに死んでからこうなったわけじゃないぞ? 忘れたのか? 魔女と契約したのが誰か」
まさか、パンテルの奴魔女と契約した時の条件にドラゴンの体を貰うみたいな条件付けたのかよ……。
「フフフッ、お前の考えてる通りだよ、ある条件と引き換えに、魔女の手助けを借りてこいつの魂を喰ってティーアンより強いドラゴンの体を手に入れたんだよ! 乗り換えることも可能なんだぞ?」
メランはカクランの後ろで自分に押さえ付けられているルウブを目を細めて見た。
次の瞬間メランはカクランを押し退けルウブの前に来た、身の危険を感じたルウブはドラゴンの姿に変わる。拘束を引きちぎり周りに冷気を放っていた。
カクランは体勢を立て直しメランの方へ向かっていく。それに気がついたメランはレイピアで槍を受けた、レイピアは無残にも折れるとサーベルへと形を変えた。
それを見たカクランは槍をしまい剣を取り出し切りにかかった。
ルウブは人の姿に戻るとカクランが蹴りを受けたところでメランの前に出て首元を蹴りつけ、肩に足をつき反対側に着地する。
「ぐはっ!? っ……」
ルウブが槍を取り出し後ろから斬りつけると同時にカクランが前から剣で切りに行った時、メランは上にジャンプをし避けた。
ーーキンッ!
ルウブが剣を受け止めた槍の力を抜かないのでカクランは剣を引くことができなかった。
「何でお前まで戦闘に入ってくんだよ」
「何でって殺られかけてたくせに、何言ってんだよ」
メランがカクランを後ろから斬りつけに来たのに気がつきルウブを押し出して剣を後ろに回りながら振った。メランはそれを剣を絡めて折ろうとしたがうまくいかず首に軽い傷ができた。
「この剣は倉庫から取ってきた剣だから表世界のものだよ、折れるわけないだろ」
「ちっ……」
カクランの剣を払い上からさらに振り下ろす。
「初めから強かった君には俺の気持ちなんてわからない!」
剣を交えながらメランの話を聞いてはいたがそれに対する答えが出てこず無言で目を見る事しかできなかった。
「お前はいつもそうだ! 何で何も答えない!」
「僕に何を答えさせたいんだよ? お前が力を求める気持ちは分からない、分かりたくもないな。僕はお前とは違った力の求め方をしてんだ」
メランはその言葉に逆上し乱暴に剣を振るう。カクランはそれを受け止めるのにさっきより強い衝撃が腕に伝わる。
もう一発くるかと思った時、剣ではなく蹴りが腹部に入れられ不意を突かれてしまった。
メランがニヤリと笑ったのを見てノックバックされる中後ろを振り向いた。
そこには黒い影が矢のように向かってきていた。
「っ……!!」
カクランはそれを剣で弾いて防ぐも複数ある中の一本が脇腹をかすった。防ぐのを諦め足をついたりして避けた。
怒りで周りが見えていなかったメランは後ろから肩に手を置かれるまでルウブに気がつかなかった。
「終わりだよ」
「ーー!!」
次の瞬間肩の部分の服がバリバリと音を立て肩と背中に痛みが走った。
ルウブを振り払い距離をおくがカクランを攻撃していた影を消してしまった。
「っ……何をした!」
ルウブは触れただけだと言うように両手を軽く上げた。
肩に触れると手が凍るのではないかという程の冷たさが伝わった。メランはそこで気がついた、触れられた肩と背中は凍傷を通り過ぎて凍っていることに。
後ろからカクランに斬りつけられるが痛みがしない。多分凍ってしまった部分を削られたのだろう。
「ぐっ……くそっ! てめぇ!!」
後ろを向くがそのまま膝をついてしまう。意識も薄れてきた。
それを見ていた魔女は結界に守られナイフで刺された痛みにもがくレゲインを放ってメランの前に立った。
ルウブとカクランがメランを攻撃しようとした時、砂鉄に包まれた二人は姿を消してしまった。




