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来ない理由

「……バム、レゲイン居ないと二人だね」

「そりゃあ三人で食べてたからね」

そこで話題が途絶えてしまった。

何故かいつも話しているバムとも会話が成立しない。いや、もしかしたら普段から食事中にそこまで話していないのかもしれないけど黙っていると気になってしまう。

しばらくそうしていると周りが何だか騒がしくなる。

「君達」

聞き覚えのある声の主がバムの横に立ち話しかけてきた。顔を上げるとそこには少し機嫌の悪そうなグランが立っている。

「今日夕方あたりにレゲインが牢を破って脱獄したようでな。知らないか?」

「牢を破った!? えっ、ゲレインがですか?」

「レゲインがと言っただろ。まぁ、その様子なら関係はないんだろ。これで失礼させてもらう」

グランは二人を軽く疑ったように見てその場から去って行った。


翌朝、美来はバムと共に朝食を食べ寮を出た。そこまではいつも通りだった。

「あれ? バム、今日、人少なくない?」

「歩いてる人?」

「うん……」

いつもは生徒や店の人や教師が点々と歩いている道は、誰も歩いておらず鳥のさえずりすら聞こえない。

まるで私達、この場合私とバムではなくクラスの人と言うのが普通だと思う。それ以外の人が一晩のうちに消えてしまったみたいで不気味だ。

だが、教室に着くといつも通り静かにざわざわしているので特に気にすることもないだろうと美来とバムは窓側とその隣の席に座った。



カクランもその違和感を感じた一人だった。朝食を取った後に牢の外がやけに静まりかえっているのだ。と言っても朝食はほぼ残していたが。

「……もしかして」

カクランは立ち上がり鉄格子の外に手を伸ばし錠前を握る。そして、温度の高い火で熱するが、錠前は赤くなることもなかった。

「やっぱりか」

リアワールドドラゴンの能力か……? いや、ドラゴンがわざわざ出てきて意味もなくそんな事するはずない。だとしたら、これは魔女の仕業か? まずいな、僕だけがこの裏世界に連れてこられたとは限らないし……

ーードッ! ゴゴゴッ……

「うわっ!?」

考え事をしていたとき、突如砂埃を上げながらすぐ後ろの天上が崩れ落ちた。

「ケホッ、何だよ……」

丁度、カクランの牢だけ天上に穴が開き外に出られるようになっていた。

確実に僕を出そうとして表の世界で壊したよな……ちょっと殺意感じるけど。

カクランを囲むように周りに瓦礫や土が盛られている。もう少し横にずれていたら生き埋めになっていただろう。



「美来ちゃん、先生遅くない?」

「えっ? うん、本当だ……もう時間過ぎてる」

ーードカッ!

教壇の前に突然突き飛ばされたアウラーと教壇の上に座ったメランが現れた。

「フフフッ……」

皆んなは突然の事に驚いて立ち尽くしている。

アウラーはどこか殴られたのか噎せながら起き上がりメランの方を向いた。

「何で……ぐっ!」

「何で? 君は馬鹿だな普段の口調からすら俺が誰だか判断できねぇとはな」

口を開きかけたアウラーを踏みつけ蹴り飛ばした。

メランは周りを見渡すと不気味に笑った。

美来の夢の内容を思い出したバムは慌てて立ち上がった。

「皆んな! 逃げて!!」

その声で我に返った者達はドアや窓の方に寄った。

その途端メランの陰から伸びた黒い鞭のような物が切りにかかった。だが、夢とは違い体制が取れていたのでそれぞれ武器を出し弾き返した。

それでも窓やドアは壊れず耐えられるのも時間の問題だろう。

美来は窓を開けようとしたが倒れているアウラーが刺されそうになったのを見て、ナイフを剣に変え前に出て受け止めた。

「うづっ……」

「美来ちゃん!!」

バムは自分に襲いかかってくるのを防ぐのに精一杯で思わぬ動きをした美来を助けに行くことができなかった。

相手の手が引きもう一度向かって来た時、美来は動くことができず目を瞑ってしまった。

ーーガラッ! バンッ!

突然何かが解放されたように窓と扉が開き逃げ道ができた。

「シルト!」

美来が目を開けると目の前にレゲインが立っていた。開いた窓から飛び込んできたようだ。

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