詳細を聞く理由
レゲインが居なくて夢には沿わないので大丈夫だと授業を受けていた。
だが美来は不安で仕方がない。授業に集中できず足をぶらぶらさせすぐ横の窓の外を眺めていた。
カクラン、レゲイン、大丈夫かな……。
「クシュンッ……寒っ、あのキツネ薄着でこんな所によくいるな」
レゲインはふと気がつく。牢の格子は鉄製だという事に。
これって……。
鉄格子に触れて確認するとレゲインは後ろに下がる。
ーーガッ、バキッ!
大きな音でレゲインは腕で顔を隠していた。ゆっくり顔を上げると鉄格子は外側に引っ張られたように曲がり通れるほどの穴ができていた。
ちょっと音でかかったか?
牢から出ると入り口の方から人の足音が聞こえた。
まずいな……人が来る。
レゲインは相手を気絶させようと走っていく。
だが、気がつくと宙を舞っていて床に落とされた。
「無礼者! ホワン様に何をする気……」
レゲインを投げ飛ばした銀髪で猫耳のカチューシャを付けた男は隣の者に手で制され黙り込んだ。
起き上がろうとするレゲインにその人は手を差し伸べる。レゲインは驚いていて無意識にその手を掴み起き上がる。
ん? 手……。
自分をぶん投げた男が絵を差し伸べたものだと思っていたが、柔らかい手の感覚がしたので手を離した後顔を上げて驚いた。
ロングの銀髪で三つ編みにした黒い髪の束を頭に一周させ、片耳に冠のはまった垂れた犬耳のカチューシャを付けている面持ちの柔らかな女性が微笑みかけていたからだ。
「うわっ!? えっ……」
「大丈夫ですか? あの、すみませんが、カクラン・アニールさんのいる牢はどこか分かりますか?」
「え……えっと、この奥」
答えようとすると銀髪の男が前に出てくる。
「貴様、ホワン様に道を聞かれたら案内するのが礼儀というものだろ」
「なんでだよ!」
「この世間知らずめ!」
ホワン様と呼ばれた女性は困り果てたようにため息をついていた。
「ネンク、止めなさい。貴方は私の反対を押し切ってまで付いてきたというのに、子供を躾に来たのですか?」
「い、いえ……すみません」
バツが悪そうに女性の後ろに下がった。
ホワンはすみませんと言うようにレゲインに柔らかい笑みを向けた。
レゲインはまだ腹の虫が治まらないのかむすっとしていた。
「いいよ、案内すりゃあいいんだろ」
「あ、いえ、居るかどうか聞きたかっただけなんです」
レゲインもネンクもそれに対してポカンとしていた。
「私は聞いただけですよ。教えていただきありがとうございます。私はホワン・カニスです。ホワンでいいですよ、こちらはネンクです」
「はぁ……えっと、レゲイン・リフレイン」
「レゲインですね、また会いましょう」
手を振って出口に向かって行った。
カクランは牢の中で寝転んで考えていた。
何で、僕は……色んな人に恨まれてるはず。美来は僕が殺したのを知ってもなおああ言った。
けれど、全て僕のせいなのは変わりない。それに、もしあいつらが魔女とかに襲われたとして僕はもう、関係のない人を殺してしまわないかが怖くて倒せるはずがない。




