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お礼を言う理由

「けどよ、魔女と契約したって話はどうしてついたんだ?」

「僕じゃない、それは確かだよ。もう、そいつも死んだんだ。みんなの目の前で、体が引き裂かれて」

なるほど、対価が悪魔の依代だったのか。その罪すら着せられてこいつ、運悪すぎだろ。

「あいつが契約したのは僕のせいって言っても変わりない。ただ、何で僕は死刑にならずこうして生きているのか、担任が校内の牢に入れられるのか不思議だったよ」

これでいいんだ、僕は罰を受けなきゃいけない。

カクランは立ち上がった。そして三人に微笑みかけ「ありがとう」と一言言って出て行った。

バムと美来はその笑みに不安を覚え扉の方を見たまま黙っていた。

そんな重苦しい空気を感じたレゲインは更に呆れ顔になり立ち上がる。

「気持ち悪い、止めろ、そういう空気嫌いってんだろ」

多分あいつは、殺人犯って話を広げた奴を知ってていつも通り振舞ってる。

「自分への戒めか何かなんだろうけど、死刑でも望んでんじゃねぇか?」

「先生が? でも何で……他人を殺すことは警備官になるにあたって当たり前のことだよ」

「俺には分からねぇな、何があっても生き残ったのに死を求めるなんてよ」

「でもさ、カクランの霊力ならエリオスみたいに幽霊になるんじゃないかな?」

バムと美来は何を言っているんだと言いたげな目で美来を見る。

「美来ちゃん、先生をどうしたいの……」

「あいつが霊なんかになったら迷わず払ってもらうよ! 鬱陶しいに決まってんだろ」

レゲインはバム以上に猛反対した。

正直美来もそれに驚いて固まってしまっていた。

「ほら、早く行くぞ、牢獄に」

「えっ? 何で? ま、まさか先生が」

「じゃねぇよ!」

「カクランの先生に会いに行くんだよね?」

レゲインは美来に頷く。

バムはその様子を見て美来の熱を測り出した。

「ば、バム……私は平常だよ、今さっき聞いてたんだし、まだ忘れてないよ」


美来とバムはレゲインと校内の地下牢に入る。

目的の牢は黒い垂れ幕がかかっていて鍵が閉まっておらず簡単に入ることができた。

「な、何で開いてるんだろ? 本当に人いるの?」

バムは人がいるはずなのに何も見えない牢で怖がっているようで真ん中で先導していたレゲインの腕にしがみつく。

美来は何かに触れられたのを感じすぐ隣にいるバムらしき人の袖を摘んだ。

「あのな……てめぇら、俺にしがみつくのやめろ……」

レゲインの声は怒っている。だが後ろから誰かにフードを引き剥がされて素っ頓狂な声を出した。

薄暗いには変わらないが電気がつき目の前に女性の顔があった時にはレゲインは少し後ろに跳びのきかけた。

「おや? 君達、誰の許可を得てこの牢に入ってきたのかな?」

バムも美来も電気がついて周りに何人もの女性が立っているのがわかり肩を下す。

「あ、あの、カクランのことについて聞きたいんですけど」

目の前の男は美来を上目で見て不気味な笑みを浮かべる。

「あぁ、なるほど……君達はカクランの生徒なのか。私はスィミア発音しにくいから好きに呼んでくれ、君らは?」

三人が呆然として黙り込んでいると見下したような笑みを浮かべた。

「おいおい、ちゃんと答えてくれないか? 自己紹介は大切な事だよ、紹介しないのなら勝手に呼ぶからいい」

「み、美来です」

「それで、フード二人を連れて何の話を聞きに来たのかな?」

美来は何の事だか忘れてしまいレゲインとバムを助けを求めるように交互に見た。

「カクランのクラスで何があったか聞きに来たんだよ、それと、何でこの牢には鍵がかかってねぇんだ?」

「んー、フード1が質問するの? まぁいいけど」

ふ、フード1って……んじゃあバムの奴は2なのか? 何か嫌だな……。

「あの事件は魔女のせいだよ、私は命が惜しかったから教壇に隠れていたのだけれどね。カクランは襲いかかってくる相手にああするしかなかったんだよ、魔女と契約したのは豹の男の子だったかな」

何がいいのだか、スィミアは得意げにドヤ顔をして笑っていた。

「鍵がかかってない理由、私に鍵をかけたところで無意味だからね」

「どーいう意味だよ」

「エートスデュナミス……知ってるかな?」

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