一旦帰還する理由
「全く君って子は……死体になってネスに弄くり回されたいのか?」
ヤギはカクランの大体の部分を治して目が覚めたカクランを軽く叱っていた。
「そんなわけないだろ、僕が死んだらお前の解剖以外にしてくれよ、遺族への見せしめとか」
「おやおや、君はお兄さんにいびられたせいで、おかしくなったのかな?」
カクランはむすっとしてヤギとは反対側に顔をやる。
ヤギはカルテに目を通しボールペンをしまい、カクランを見て仕方なさそうに微笑んだ。
カクランも、百年近く生きててもまだ見た目に劣らず精神面も可愛らしい子供だね。
「お母さんかお父さんでも呼んであげようか」
「はあ!? 冗談じゃない! 絶対にどっちも呼ぶなよ!?」
「それはフリかなぁ?」
「フリじゃない! 父さんなんか呼べばどうなるか、ましてや母さんなんて呼んだら僕は……」
カクランは身を起こして頭を抱える。
「二度と外に出られない……ルウブの奴も嫌がるぐらいなんだぞ」
その様子を見たヤギは楽しそうに笑っていた。
本当に変わった家系なのに仲のいい家族だことで……、それでも君は自分を殺してほしいのか。
最後に同情のような目でカクランに笑いかけて病室を後にした。
「あれ? 僕、退院していいのか?」
「クフフッ、ヘルバ、君の契約者勝手な真似に出たけどいいのかな?」
「勿論、私が口出ししないのも契約の一つだもの、例えあなたが利用されようとも、ね」
何て、この女よく笑ってられるな、またあの邪魔が入ったらどーする気なんだか。
「けど、カクランが捕まったらあのお兄さんは来てくれるのかな?」
「さぁ、どうでしょう? あなたはあれが本当にドラゴンの力だけだと考えているのかしら?」
「えっ? 違うのかい?」
メランは組んでいた腕を下ろし意外そうにヘルバを見下ろした。
ヘルバは馬鹿にするように笑い、メランを見上げた。
「ドラゴンも偏見を受けているのよ? だったらティーアンである者の力も借りなければならないわ、これは、厄介な娘も出てきそうね」
「だけど、俺はどちらも殺る気だからね……」
そうだったわね、このドラゴンの頭の中には力に対する欲望とカクランを殺したいって考えしかないのだから。邪魔する奴も殺るのが普通かしら。
ヘルバは突如目の前に現れた通信用の魔法陣に驚き木の枝から落ちそうになった。
『ヘルバ、あなたの契約者の申し出に背くかもしれませんが、ある人物数名は殺してはいけないとの命令が出ました』
そんなヘルバの事をつゆ知らず相手は魔法陣の向こう側で淡々と話を続ける。
『一つは帝国の実験として、もし殺されそうになればその場で保護してください。もう一つは……あのナイフを使ってください』
「分かったわ、それだけかしら?」
『いいえ、けれど、他の話については別の部隊が担当していますので。あの帝国も我々同様に枝分かれした未来を捕まえに向かっているのです』
ヘルバは魔法陣の上を手で軽くあおいだ。魔法陣はサッと消え通信も途絶える。
「メラン、あなたは自由行動で構わないわ。私は一旦、城に戻ってピースを揃えてくる」
そう言うと目の前に青い魔法陣を出現させそこへ入っていった。




