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石を渡す理由

ーーガチャッ

「いいか、絶対に扉に触れんじゃねぇぞ」

「う、うん。何で?」

「……悪りぃ、忘れろ」

美来に注意してもすぐ忘れるな、無駄か。

レゲインは美来にバム抜きで話をしたいと言われ仕方なく部屋に入れた。

「うわぁ……何かすごい……」

「あんまり物に触るなよ」

レゲインの部屋は黒に近い紺色の壁紙と星の散りばめられた夜空の様なじゅうたんが引かれていた。薄暗く本の詰まった本棚で狭くなっていてパソコンなどゲーム機が一箇所に集められていた。

意外と整頓されてる……レゲインって軽い潔癖症なのかな?

思えば惨劇の起きた町でもレゲインは服の汚れなどを気にしていた。

「お前、今、整頓されてるのが意外とか思ったろ」

「えっ、だって、グループルームの机とか乱雑に物置かれてるし」

「あれは作業してるからだよ、んで、相談って何だよ?」

美来はレゲインに勧められたアンティークな丸テーブルの前に置かれていた木の椅子に座る。

レゲインはパソコンの置かれたダンス付きの長テーブルの空いているところに腰をかけた。

何でそこに椅子あるのにそっちに座るの?

「あのね、その……夢の話なんだけど、何か見たものが現実でも起きるし、その夢を今もまだ覚えてるの」

それでか……“けど何でバムじゃなくて俺に相談すんだよ?”なんて聞いても忘れてるか。

「ん……んで、お前はそれをどうしたいんだよ?」

「えっどうって……何でこうなったのかなって、特にどうこうしたいわけじゃないけど」

「って! お前!」

レゲインはある事に気が付きたち上り美来との間の丸テーブルに手をついた。

「こないだ忘れたっつった夢の内容覚えてんだな!?」

美来はその事をすっかり忘れていて話してしまった事に気がついた。

「あっうん、覚えてる」

「はぁ……お前な、忘れる事、普通に忘れて嘘つくなよ。で、その夢で俺はどうなったんだ?」

息を吐き丸テーブルからてを話して机にもたれかかる。

「レゲインのお母さんにナイフで刺されてた」

「それで俺を止めたのか、お前はその夢を見たくねぇのか?」

その質問に困り果てる美来を見たレゲインは机の引き出しを開け黒い石を取り出して美来の前に置いた。

「これは?」

「想像石の想像源が無くなった石だ」

想像石は機械などの原動力として使う時は石自体の想像源が使われるため無石となる。

「もし、夢が見たくねぇならこの石を持ってろ」

「えっ……うん、分かった」

その説明を紙に書き美来に渡した。

美来は部屋から出るのにドアノブに触れようとした時、慌ててレゲインが後ろから手を伸ばしドアノブを先に掴んだ。

「うえっ?」

「危ねぇだろ、俺以外が触ると爆破すんだよ、俺の部屋荒らす気か」

ドアを押して開け美来を外に出す。

「絶対にドアノブを回すなよ? また明日な」

「うん、ありがとうって、ケーキでいいよね?」

「あ? あぁ、別にいらねぇよ。また明日な」

美来はにっこりして頷き部屋に戻っていった。

レゲインは携帯を取りある人物に連絡した。

「言われた通り無石を渡しましたよ。……連絡した理由? “しろ”って言ったのはあなたでしょう?」

電話の向こうから嫌味が聞こえてきたので一方的に通話を切った。

美来の夢は多分、想像源の増えすぎた影響で予知夢になってんだろ。それを抑えるには想像石の無石に想像源を吸収させるしかない、けどそれは想像源の最大値を減らすわけじゃねぇし、石も想像源を吸えば想像石に戻る。

応急処置みてぇなものか。キツネたちに知らせたほうが懸命だと思うんだけどな。

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