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置いていかれる理由

バムは一通り美来を探して教室に向かっていた。捜している途中にエリオスに会い美来が教室に居ることを聞いたからだ。

「もう! 美来ちゃん何で置いてっちゃうの!」

あれ? ゲレインにも言ったんだから美来見つけたら連絡させてくれるんじゃないの?

だが、よくよく考えるとレゲインがそこまでしてくれるはずがないという結論に達した。

「あれれ? バムじゃないの、カクランの生徒の」

後ろから話しかけられ振り向くとアウラーが居た。

「アウラー先生……どうして? いつもは動物の世話してるのに」

「それがね、カクランが体調崩したみたいでね……二年前の生き残りがカクランって誰かが広めたせいだよ」

バムはその話を聞き息を呑んだ。

「そ、それって、学級崩壊の話……」

アウラーはいつもの優しい笑みで頷いた。

「夕食後でもいいからカクランのところに行ってあげてくれないかな?」

「私達がぁ〜? アウラー先生が行った方が効果的なんじゃないの?」

「うんん、残念だけどカクランにとって私はその辺にいる女の子と一緒にしか見えてないから、あなた達三人の方が効果的だよ」

あれ? アウラー先生……まるで先生のこと好きみたいな心配の仕方だなぁ〜。

「……分かったぁ〜、後でゲレインと美来ちゃんに言ってみる」

アウラーはバムににっこりしてお願いねと一言告げ先に教室に向かって行った。

バムも急ごうとした時、また別の人に後ろから声をかけられた。

「バム、頼みがあるのだけれど、聞いてくれるかい?」

振り向くと、シューネがのんきに歩いてきていた。

「何? もう直ぐ先生が教室に着くから急ぎたいんだけど」

「それなら、手短に」

シューネは一旦咳払いをして態勢を整えて改めてバムの方を見る。

バムはシューネの話を聞いた後、表向きは冷静に振る舞ったが心の底ではフツフツと怒りがこみ上げてくるのを抑えていた。

「それは、絶対に嫌! そんな言われ方して誰が誘いに乗るの? しばらく話しかけないで」

さすがに全てを抑えることはできず、そう言うとバムはスタスタと早足で教室に向かって行った。


この日の授業は空間の扉についての説明だった為、拷問のような実習は行われなかった。

美来はそれなりにメモりながら昨日も見た夢の事を考えていた。

あの夢……正夢とか予知夢とか私が見るわけないし。

だが一番引っかかっていたことはそんなことではなく、その夢をただでさえ物忘れの多い自分が毎回違うはずの夢の内容をここまでくっきり覚えていることだった。

レゲインはいつものようにぼーっと頬杖をついて授業を聞いていたが、盗み聞きをしてしまった事を考えていた。

それは、今朝の事、美来が先に行ってしまったのでバムと俺はそれぞれ離れて朝食を食べていた時のことだ。近くの机で食べていたシューネたちの班がある話をしていた。

俺達の班からバムを自分の班に勧誘しようということだった。

多分、もうバムには話しただろうし。その話を断る理由がバムにあるか? いや、魔女の子供に人間の美来、そんな班にティーアメンシュであるバムが止まる理由なんて思いつかねぇ。

今のうちに別の班員探すべきだろ。

そうこう考えているとアウラーが目の前に立った。

「レゲイン、何をぼーっとしているの?」

こっそり舐めていたキャンディを口から引き抜かれた。

「んっ! あ、え、えっと……」

「話聞いてたの? 何の話をしてたかわかる?」

「えっと、空間の扉……だよな?」

「そうだよ、はい、飴までなら許すけどちゃんと授業聞くようにね」

レゲインの前に口から引き抜いた棒のついた飴を差し出す。レゲインはまだ注意をされて落ち着かない状態で飴を受け取り、アウラーが前に戻っていくのを見て口に戻しため息をつく。

何だよ、美来だってぼーっとしてんのに何で俺だけ注意されんだ?

美来の方を見ると、頬杖をついてノートの上でペンを振っていた。

って、あの先生、これでノート取ってるって勘違いしてやがる……。

美来はこっちを見ているレゲインに気がつきどうしたのと目を合わせたので、レゲインは別にというように前を向く。

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