休んだ理由
あれから二日だった日美来とバム、レゲインは校長に朝早く呼び出されていた
「と、いうわけだ君たち何か知らないかね?」
バムと美来が顔を見合わせているとレゲインが説明する。
「俺らがその場所から下へ落ちるまでにそこに死体なんてありませんでした」
「そうか……もういっていいぞ」
レゲインはお辞儀をして早足で出て行ったのに。バムと美来も同じようにしてレゲインの後を追う。
廊下に出るとレゲインはフードを被っていた。
「ねぇ、レゲイン? 何でフード被るの? それに、教室と道違うよ」
美来がふと聞くと、
「顔見られたくねぇから…今日は休む」
と答え早歩きになる。
「美来ちゃんほっときなよ、ほら……」
バムが続けて何かを話そうとすると美来とレゲインが足を止めるのでバムも止まり前を見た。
「おはよう未来ちゃんバム……とレゲイン」
前からポケットに手を入れ手を軽く上げてカクランが歩いてきた。
「今日も可愛いね」
その一言でバムと美来が固まっていた。
あれ? カクランってこんなんだったの!? ナンパしてたもんね。
美来は口に出さないようにしていた。
小声でバムがとんでもない事を聞いてくる。
「ねぇ、美来ちゃんこの先生写真に閉じ込めていいかな?」
「うん、構わないよずっと女の子のそばに居られるならねぇ」
美来より先にカクランがニコニコしながら嬉しそうに答えた。
それを見てバムは引いていた。
「ひっ…」
レゲインは何故か挑発するようにカクランに言った。
「で、何だよ?用ねぇなら通せよな」
「な、何だよ? 別に、ただ、お前らに今日の授業はねぇって伝えに来ただけだよ」
カクランは機嫌が悪くなったのだろう口調が怒っている気がする。
「でも何で?」
美来が聞くとカクランはうつむき仕方なさそうい話す。
「ほら……昨日死んだの一人じゃないんだよ。僕もちょっと見に行かないとね、危ないのにねー」
そして、歩いて行った。
「これで、教室行く意味ねぇな」
レゲインはそれだけ言って歩き出す。
「まってよ!」
美来は慌ててレゲインについて行くのでバムも仕方なくついて行った。
グループルームにつくとレゲインは中に入っていく。二人も入るがバムは中を見て驚いた。
「ふぁっ!? えっ? えっ!?」
入り口には魔法陣の描かれた紙が貼られていて、教室の端には魔法陣関係の本が積まれいる。向かい合わせに置かれた机の奥二つをレゲインが独占しているようだ。
その隣の二つの机には写真集らしきものが積まれている。レゲインの斜め前にら美来が座った。
「あぁ……ちょっと!! 美来ちゃんゲレイン! この数日間の間にどうやったらこんな状態になるの? アイドルオタクと魔法陣オタク! この部屋に私の要素だけ全く無いじゃん!」
バムが一人で騒いでいるがレゲインは全くの無視だ。
「えへへ……こないだ入ったらレゲインがここまでやってたから私も好きにしようかなって」
恥ずかしそうに美来はそう答えた。
「寮の部屋じゃ本が収まらなくなった」
無視かと思いきやレゲインは本を読みながらそう答え姿勢をかえる。背もたれにもたれ足を組んだ。
「美来ちゃん? この写真集」
「これね、こっちの世界の人のだよ、多分最近買ったんだと思う」
「私も何か持ち込む!」
そして空いたスペースにカメラと白黒写真やカラー写真が置かれ机の上にはそれ以外に竹とカッターなどが置かれた。
そして美来の斜め前に座った。
「ねぇ、美来ちゃん」
「なに?」
「一緒にさ依頼受けてみない? 一応成績にも関わるらしいし、やって損はないよ!」
バムは身を乗り出して美来を誘う。
「え……いいけど私役に立つ?」
「役に立たないことないよ居てくれればいいんだから!」
ただ単に一人が嫌なだけのようだった。
するとゲームをやりだしたレゲインが口を挟む。
「依頼は原則グループ全員で行くことになってんだよ。俺、今は行きたくねぇから」
指がせわしなく動いているのを見ると手強い敵と戦っているのだろう。
「ゲレインはゲームから手が離せないだけじゃん!」
バムそう言うとレゲインは全くの無視だ。
また言い争いが始まりそうな感じがする。
「ね、ねぇ、レゲイン」
美来が間を割って話しかけるとレゲインは手を止め美来を見る。フードを被っているせいか暗くかんじる。
「えっと……ここにいる時ぐらいフードとったら? 私達レゲインの顔見てるわけだしさ隠してもいみないじゃん?」
しばらくジーと美来を見ていたが黙ってフードを外した。
バムは少しムッとしたように言う。
「ゲレインって友達いるの?」
嫌みのように聞こえたがレゲインはいつも通りに答えた。
「居ねえよ人避けてたのに居るわけねぇだろ」
バムは聞いてはいけないことを言ってしまった気がして目をそらして謝った。
「な、何か……ごめんねゲレイン」
「別に、気にしてねぇけど……ケホッケホッ」
レゲインはいきなりむせ出したのを見てバムと美来は慌て出す。
「わあ!? レゲインだ、大丈夫!?」
「ごめんって気にしてたんだね」
「ち、ちげぇよ……喉やっちまったんだよ」
レゲインは喉をさすりながら小さい声で話す。
そういえばレゲインさっきから声いっつもより小さかったなぁ……。
「こないだみたいに、一日にあんなにも話したことねぇんだよ、下手したら声出さずにいた日もあってもう少しで声が枯れそう」
友達居ないだけでここまでなるの!よかった……友達居て。
美来はほっと胸をなでおろしていた。
「今は?」
「居ねえ、一人で居るの知ってんだろ……って!」
レゲインは話しているとコピーした依頼書を持った美来とバムに脇を抱えられ引きずられていた。
「離せよ! ケホッ……」
諦めてフードを被り引きずられる。
「夜中に殺られてんだろうに……昼間に探しても見つからねないだろ……ん?」
カクランが森の中を歩いていると水色に透き通った石を見つけた。
「これは……! 暖かい、てことは生きてる奴の魂を無理やり」
「あら?落し物拾ってくれたの」
「!?」
突然背後から声がしたので振り向くと女性が立っていた。
「へぇ……魔女かな? やっぱり可愛いね、女の子は」
「そうよ、勘がいいのね、それって遺伝? 怖くないのかしら? もしかして、魔女に会うのは初めてじゃない?」
魔女は不気味に笑っていた。
「ハハハッそうだね、初めてじゃない。だからなんだよ?」
カクランは笑いながらそう言った。
すると魔女はすぐそばの木に手を触れる。するとその木の枝は動き出しカクランに向かっていく。
「!?……」
カクランはギリギリ枝を避ける。
枝は更に追いかけてくる、多分動きを止めようとしているのだろう。
「っ……ちょこまか避けないでおとなしくしなさいよ!」
魔女は更にもう一つの木に触れた。枝はカクランの逃げる方向から挟み撃ちにする。
「! っ……」
カクランが枝に手をかざすとその木全体を水色の炎が纏った。
「なにを! 火……霊力か! お前、生きてる奴の霊石を」
カクランの手には水色の炎が灯っている。
「なわけねぇだろ、自分の霊力だよ」
「狐火……ウフフッ可愛いわねぇ……て事は、カクラン・アニールかしら?」
魔女は相変わらず不気味に笑いながらそう言った。
「フルネームねぇ、できればカクランだけにしてほしいな。何でしってるの?」
魔女は更に笑い出した。
「当たり前じゃない、フフフッだって人質に出来そうな人だもの」
カクランは呆れたように魔女を見る。
「馬鹿かよ、あいつが俺を人質としてみるとでも? それに今お前は人質を殺そうとしたんだぞ?」
魔女は不気味な笑いをやめカクランを見る。
「じゃあ、殺さないようにいたぶってあげるわ。二年前の話とかどう?」
翌日
「ゲレイン何もしてないのに三で割って報酬を分けるなんて!」
バムが教室でレゲインの机に手をつき抗議していた。レゲインは珍しく無視はせずにフードの中からバムを見上げる。
「ついてっただけいいだろ」
多分レゲインはついていった報酬として貰ったつもりなのだろう。
「ちょっと二人とも、喧嘩しないでよ、フフッ」
美来は止めに入るつもりだったが笑えてきてしまった。
「……何だよ」
「美来ちゃん?」
未来はレゲインとバムにおかしなモノを見る目で見られて気まずくなった。
「あ、ごめん……仲良いね」
バムとレゲインは美来を睨んで黙った。
少し遠くの席から三人を見てる人が居た。
「何、あいつら? うるさいわね」
足を組んでいかにも嫌なやつに見える。
しばらくすると教室のドアが開き先生が入ってきた。
「おはよう〜皆んな!」
だがカクランではない。頭に牛の被り物をした女性だ。
それを見たさっきの三人を見ていた女が薄笑いをして聞いた。
「あれ?カクラン先生は?」
「えっとね、今日はちょっと来れないみたいなんだよ。じゃあ、今日の授業やるね! あ、私はアウラーだよ」
アウラーはカクランのことが心配なのか表情が一瞬曇ったように見えた。
授業が終わった後レゲインとバムは美来に連れられアウラーと話に行く。
カクランのことが心配で初めに質問をしたのは美来だ。
「もしかして、魔女に殺られたとかじゃないですよね?」
「カクちゃんが心配なの? ……えっとね男子寮の上から二番目の階の102号室訪ねてみなよ」
アウラーはほっとしたような笑みを浮かべ紙とお金を渡して出て行った。
「その紙なんだよ?」
レゲインとバムは美来の横から紙を覗き見た。紙には『頭痛薬買って行ってあげて』と書かれている。
「なに、あいつ体調崩してんの?」
バカバカしいとでもいうようにレゲインは言った。
美来とバム、レゲインは紙に書かれていた通り店で薬ともう一つあるものを買いカクランの居るらしい男子寮に行く。
そこはほかかの階とは違いロビーが無くシンプルな黒と白のちょっと高そうなマンションの様になっていた。
「バム、どこだっけ?」
「えっと、あ」
「102ここだろ? 早くしろよ」
レゲインが通り過ぎたところで立ち止まりその部屋を示した。
美来がチャイムを押す。
ーーピンポーン
出てこない。
「居ないのかな?」
「でも、あの先生ここに行ってみてって……」
反応が無いことに困惑しているとレゲインがゲーム機のボタンのようにチャイムを連打し始めた。
「いるだろ?」
迷惑では無いかというほど鳴り続けるチャイムに嫌気がさしたのだろう。扉が開き不機嫌そうなカクランが出てきた。
「うっ、何だよ……うるせぇな」
上着は着ていなくてカチューシャも外している。寝癖のついた頭を抑えながらこちらを見た。気分が悪いのだろう顔色が悪い気がする。
カクランは美来達を見てハッとした。
「! お前ら、何でここに……?」
「えっと、アウラーに頼まれて薬を」
申し訳なさそうに美来がカクランに事情を話して薬を渡した。
「そう、ハハハッ。ありがとね」
辛いのを我慢した笑顔を向け中に上げてくれた。
部屋の中は特に散らかってはいなかったが机の周りにワインの瓶が何本か立ててあった。飲みかけのワインが入ったままのグラスも置いてある。
美来達が机の前に座るとカクランは飲み物を出してくれた。
「俺、紅茶苦手なんだけど」
出されたティーカップを覗いてレゲインはフードを脱いでカクランにそう言う。
「文句言うなよ」
カクランはレゲインの飲み物を取り替えることなく水道の方に行く。
バムは水道の方に歩いていくカクランを見送ってから二人のほうを向き言った。
「酔ってるから薬だったんだね」
「動物なのに飲酒して大丈夫なの?」
美来はそれを聞き不思議そうに聞いた。
顔をしかめて紅茶を飲んでいたレゲインが美来のほうを向く。
「俺らはただの動物じゃねぇだろ、人間と動物を掛け合わせたみてぇなものだし。大丈夫に決まってんだろ」
瓶を一本持ち上げてビンの底にわずかに残ったワインを横から見る。
「にしても、飲みすぎだろ、あいつ」
「レゲインは飲まないの?」
バムがレゲインに真面目に聞くと呆れたように答えた。
「馬鹿か、俺、十六歳だけど、まだ十三年しか生きてねぇぞ。十八年たたねぇと飲んじゃいけねーだろ」
「まさか、私より年下だとは思わなかったよ」
ワザとらしく驚いているようにそう言ったバムはどちらかというと喜んでいるように見える。
カクランが薬を飲んで戻ってきてベットに腰掛けた。
「ありがとね、わざわざ来てくれて」
微笑んでいたがまだ気分が悪そうだ。
「えっと、うん。何かあったの?」
美来が話題を探しカクランにそう聞くとカクランは俯いた。
「ちょっとね。魔女を見つけたんだけど、逃しちゃって」
やっぱり何かあったのか顔つきがけわしくなった。
「あっ、そうだ先生、はい!」
バムが薬と一緒に買っていたものをカクランに渡す。それを見た美来とレゲインは笑いをこらえて目をそらしていた。
カクランは受け取っりそれを見てショックを受けている。
「え!? 揚げって何だよ!俺はお稲荷様か!?」
さっきの事は無かったかのようなツッコミだ。
「あれ? 狐って揚げが好きなんだよね?」
バムは完全にとぼけたふりをしている。
「知らないよ、僕はいろんなもの食べてるから。てか、この量……はぁ、味噌汁にでも入れるか」
とりあえずカクランは大量の揚げを貰うつもりらしい。
しばらく話した後もう戻る事にして美来達がでて行くのを見送りに部屋の入り口まで出てきた。
「女の子だけでよかったのにな」
カクランはレゲインを見て言う。邪魔だという目では無いので冗談で言ったのだろう。
「引きずられてきたんだよ」
「そう、まぁまた明日な」
カクランは手を振って見送った。