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安心させる理由

カクランは片膝を立てて座り俯いていた。

「また……」

また、オレは敵でもない人を殺してしまった……オレのせいで……

自分を責めているような落ち込み方をしているカクランを見たバムはカクランの肩を叩いた。

「先生、どうしたの? この人達が死んだのは先生のせいじゃないでしょ?」

「僕は……怖くて動けなかったんだ、僕のせいだ、僕が殺ったも同然だ」

バムはカクランの武器に血の一つも付いていない理由がわかった。一度も人に当てていないのだから付いていないのも当然のことだ。

「でも魔女が殺ったんだよ?」

バムの困ったような表現を見たカクランはバムの目を見てにっこり微笑んだ。

「そうだね、ありがとうバム」

槍の手のひらサイズの持ち手を拾ってポケットにしまい立ち上がった。さっきまでのことが嘘のように明るい笑顔を三人に向けた。

「帰ろうか、この依頼の報告は僕がしておくからーーまぁ依頼主は亡くなったけど」

「どうやって帰るの? どうやってここに来たんだっけ?」

美来は移動塔からこの町に来た事まで忘れていた。だが、もはやこの町に移動塔に通じる神殿は破壊され残されていない。

「海域の外だから時間はあるし、ここから三時間行ったところに町があるからゆっくり行こうか」

「歩くの!? ……」

「休みながらでいいよ」

美来はにっこりして大きく頷いた。

遠くを見て考え事をしていたレゲインにはそんなやりとりは一切耳に入ってこなかった。

歩き始めたカクランと美来の後を行こうとしたバムはレゲインに気がつき呼んだが、それも聞こえていないようなので後ろから両手で押した。

「!? ……」

「ゲレンデ、ほら、早く行かないと置いてかれるよ?」

「え? あぁ、うん」

そう反応してレゲインは歩き出す。

バムはわざと名前を大きく間違えたにも関わらず薄かったレゲインの反応を不満に思った。


瓦礫の中でエメを抱えたダスタが立ち上がった。エメは眠らされたもののダスタに守られて生きていた。

だが、エメを眠らせた魔女は去って行ってしまった、この魔法を解くことができるのは魔法をかけた本人だけだ。魔女を見つけたところで解いてはくれないだろう。

「エメ……絶対に君を目覚めさせてあげるから待ってて……」



美来達が学校へ戻ったのは夕方だった。

学校外では一日が六十時間あるだけあって依頼から戻っても大して時間は経っていなかった。学校外も学校内も太陽は同じなので学校外で何時間経とうと夕方か昼か朝かなどはどちらも同じなのだ。

だが、戻ってからというものレゲインは人の話が耳に入らないほど考え事をしている。

カクランはというといつも通り明るく振舞っているが一人になったところを見ると明らかに様子が違った。それでもあと数回ほど見なければ美来はすぐに忘れて気がつかないだろう。

「美来ちゃん、美来ちゃん!」

「ぅぇ?」

「もう、美来ちゃんまで考え事? ゲレインもぼーっとしながら食べてるしさ」

バムが斜め前で夕食を一緒に食べているレゲインを指差したのに対してレゲインはそれに反応してビクッと少し驚いているようだった。

「ぼーっとなんかしてねぇし、今も話聞いてただろ?」

「驚いてる時点で私達はゲレインの意識の外だったじゃん!」

「なんだよ、美来だって俺らを意識の外に追いやってたじゃねぇかよ」

「美来ちゃんはいつもこうなの!」

レゲインは呆れたようにバムを見た。

いや、美来がお前の呼びかけに応えなかったことってねぇぞ……。

「美来、何であの時俺を止めに入ったんだよ?」

「あの時?」

「忘れてんだな……俺が魔女の方に歩き出した時だよ」

美来はしばらく黙り込む。

えっと……あれは夢の方だし、私レゲインの事止めに入ったの?

「その、その時のことは忘れたけど、レゲインの袖掴んだ時に見た夢でレゲインが金髪の女の人の方に向かってくの見たの、それで……」

そこで口ごもったのを見たレゲインとバムはその先の事を忘れているのだと思った。

美来は実際、覚えていた、レゲインがその女の人にナイフで刺されるのを。そこで夢が終わっていたのだ。

「えっと、忘れちゃった」

美来はその先を言わないことにした。

ただの夢に決まっている、正夢だなんてあるはずがない。そう言い聞かせるように決め付けた。

レゲインとバムはやっぱりなという顔をしていた。


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