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平手打ちの理由

レゲインが動けなくなった所でカクランが我に返ってレゲインの方を振り向いた。

後ろに立った魔女はゆっくりレゲインの肩に手を置いた。

「レゲイン……!……」

美来は魔女の真上に砂鉄でできた大きなキューブが浮いているのに気がついた。レゲインが作り出したものだと思う。

魔女の上に砂鉄のキューブが勢いよく落ちてきた。

ーードンッ!!

レゲインは前に跳びのき後ろを向く。

魔女がキューブの上に乗っているのを見て粉の状態に戻す。

魔女はそのまま粉になった上に立ち布の下で微笑みかけた。

「久しぶりね……」

聞き覚えのある魔女の声に動揺を隠しきれない。

「っ!? ……お前……誰だよ!」

砂鉄を刃のついた鞭状にして魔女を攻撃する。だが、魔女の同じような攻撃によりレゲインの鞭は粉々に砕かれてしまった。

「そんな……」

魔女はレゲインの攻撃がかすっていたのか顔を隠していた布が破けてしまったのでそれを外して捨てる。

その顔を見てバムと美来は驚いた。その面持ちはレゲインとよく似ていだからだ。

レゲインのように鋭くはないものの紫色の瞳をし、綺麗な金髪のロングヘア。

まるで大切なものを呼ぶかのような優しい声でレゲインの名前を呼んだ。

「レゲイン……まさか、私のことを忘れただなんて言わないわよね?」

レゲインはそれを見て絶句した。一度口を閉じ何とか口を開いた。

「か、母さん……なんで、何で生きて……」

魔女が一歩踏み出すとレゲインは後ずさった。

「こっちへ来なさい、そんな怯えた顔しないで……レゲイン」

一呼吸するとレゲインはゆっくり前に足を運ぶ。

バムとカクランはただそれを見ていることしかできなかったが、美来は夢の出来事が脳裏をよぎり嫌な予感がした。

「レゲイン! 行っちゃダメ!」

呼び止めてもレゲインは魔女の方へ進み続ける。そこで美来は立ち上がってレゲインの腕を掴んで止めた。

「レゲインって! 行ったらダメって言ってるじゃんか! 行かないで……」

「美来ちゃん! 思いっきり引張叩いて!」

「えっ?」

美来は止めても止まらないレゲインの前に出る。

「ごめんっ……」

ーーパシンッ!

思いっきりレゲインの頬を引張叩いた。

レゲインは動きを止めしばらく呆然としていたが赤くなった頬に触れてハッとする。

「……あれ……俺……何で」

「レゲイン? 大丈夫?」

「美来……!」

魔女が美来を後ろから攻撃しようとしているのに気がつき美来を後ろにやり砂鉄を固めた盾で防いだ。

「あらら、人間、未来の出来事を改ざんするなんて想像者以外がしていいとでも? それと、レゲイン……あの頃の貴方の魔力で私が本当に死んだって思っていたの?」

「俺は確かに母さんが死んだのを確かめたんだ! 生きてるはずねぇだろ!」

「じゃあ今貴方の前にいる私は何かしら? 今の貴方ならあの頃のようなことにはならない……こっちにおいで?」

「っ……誰が行くかよ」

何で母さんが生きてんだよ……!

ゆっくりと空が晴れ始める。それを見た魔女はレゲインに目線を移す。

「……今日はおしまいみたいね、また会いましょう私の可愛いレゲイン……」

そして背を向けて歩いて去っていった。

魔女が去った後レゲインは緊張で強張った体の力を抜く。美来に叩かれた頬がまだ赤いままでヒリヒリした。

「レゲイン……えっと、ごめんね」

「別に、助けられたも同然なのに何でおめぇが謝んだよ?」

「えっ? ごめん」

謝るなということに対して謝る美来を前にしてレゲインは呆れたように天を仰いだ。

腰に手を置いてため息をつくと美来を見下ろす。

「あのよ、何もされてねぇのにその謝罪に俺は何て反応しゃあいいんだよ。次謝ったら殴り飛ばすぞ」

こいつ、まぁ日本人には多いタイプか。

美来はそれにまた謝りかけて両手で自分の口を押さえた。

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