襲撃の理由
突然レゲインを中心に周りの土の中から砂鉄が巻き上がった。
美来とバムは吸い込んでしまわないよう口を押さえていた。
「ゲレイン! 私たちのこと考えてよ!」
レゲインはロープにつかまりもがいていた。だがロープは別の磁力に引かれ緩んでいく。
あと少し……
ロープが砂鉄として分解しレゲインは地面に落ちた。同時に周りの砂鉄も舞い落ちた。
「ケホッ……レゲイン……目に入った」
美来は目を押さえて周りが見えなくなってしまった。
美来を標的にした魔女に気がついたバムはカメラをターゲティングにして魔女の一人を照準に合わせシャッターをきった。その魔女だけその場から消えた。
レゲインは起き上がり紙を取り出す。
「アロウ」
魔法陣が展開され魔女達に矢が降り注ぐ。
バムはその隙に美来の手を引いてレゲインとその場を離れる。
「どうなってるの!?」
「見ての通り、魔女の襲撃だよ……俺らが来たのが遅かったみてぇだな」
「じゃあもっと前から魔女に狙われてたってこと?」
「そーだよ、移動用の魔法陣でも用意してたんだろこの様子だと……もう無理だな」
レゲインがそのまま先に進もうとした途端、バムはレゲインの腕を引いて引き止めた。美来は目が見えないまま走っていたので突然バムに止められて転けそうになった。
レゲインがバムの方を向こうとした瞬間、砂埃を上げながら燃えている建物が崩れてきて道がふさがれた。
「危ないって言おうとしたの」
「先に言えよ……」
「バム、レゲイン……目が痛くて開けれない」
バムはそんな美来を見て何とかしろと言うようにレゲイン止めを合わせた。
「美来、目一瞬でいいから開けろ」
美来が言われた通り目を開けた瞬間、顔に水を掛けられた。
おかげで目の痛みは何とか消え開けられるようになった。
「仕方ない、こっちの道行くぞ」
「カクラン探してるんだよね?」
「……何だよ?」
「レゲインが飛べばすぐに見つかるんじゃないの?」
レゲインが美来の問いに答えようとするとバムが割って入ってきた。
「無理でしょう? 暗闇で平気ってことは目が必要ないんだから……」
「俺は元々視力しか使わないコウモリなんだよ超音波で探ってるわけじゃねぇし」
「じゃあ探せるね」
レゲインは仕方ないというふうにため息をつきコウモリに変わって空に飛び上がった。
美来はバムの手を解き上を見上げる。
「ねぇ、動物の状態でも話せるの?」
「……一応話せるよ? 普通の動物とは構造が違うからね」
バムはレゲインを見上げた。
「ゲレイン、一人で飛んで行かないでね」
レゲインは降りてきて人の姿になりカクランがいる方向に走り出した。バムと美来はその後をついていく。
「飛んで行かねぇよ」
「飛ぶの苦手とか?」
美来はこんな所でバムとレゲインが口喧嘩を始めるのかと思いため息をつく。
しばらくすると瓦礫の中にカクランが立ち竦んでいるのが見えた。
カクランは体の横で槍を握っている右手に力を入れる。
「くそっ……何でまた……」
まるで二年前の光景見たいじゃないか……
力が抜けたようにその場に座り込み槍から手を離し両手を握りしめ涙をこらえていた。
手から離れた槍は持ち手だけの形に戻る。
「先生!」
「カクラン! 大丈夫!?」
美来とバムが駆け寄るがカクランは反応をしない。レゲインはそんな事はよそに周りを警戒していた。
辺りは数名の悲鳴が響いていて無残な死体が何体も転がっていた。
「おい、お前ら逃げろ!」
レゲインは見ていた方向からさきほどの魔女が歩いてきたのに気がつき逃げるよう促す。
「カクランっ! 早くしないと……」
「早くしろよ……っ!」
レゲインは三人の方を見た瞬間すぐ後ろに人が立ったのを感じて動けなくなった。




