行方不明の理由
「ケホッケホッ……」
レゲインは薄暗い中目を覚ました。
そして自分の腹の上に横たわって気を失っている美来をゆっくり下ろす。
まだ腹部に押された感覚が残っている多分、美来が上に落ちたからだろう。
「気持ち悪……腹でここまで気分悪くなるんだな」
上を向くが真っ暗で光すら射し込まない。
おかしい……あの森薄暗くもない明るい森だったのに。
さっきまで森の中で探し物をしていた三人は突然地面が陥没してこの場所に落ちてしまったのだ。
「なに女の子座りしてるの?」
横から目を覚ましたバムが聞いてきた。
「!? うるせー! 女だってあぐらかいたりするのに男は駄目なのかよ!」
怒鳴りながらも気にして正座をする。
「んーうるさいよ……もう少し寝させてよね……」
美来は寝言を言う。
「おめー、寝てんじゃなくて気ぃ失ってただけだろうが、ベタなボケするな」
そうレゲインが教えるとパニックになりだした。
「わぁっ!?こ、ここどこ!?えっ?死んだの私」
「みら……」
「ここって天国への道!? 薄暗いし分岐点?もしかして、地獄!?」
レゲインが言いかけた事は聞こえていない。
「美来ちゃん? 生きてるよ?」
バムの言葉は聞こえたらしく冷静に戻る。
「…本当だ脈ある」
「ねぇ、ゲレインここって森の下だよね?もう夜なの?」
レゲインはゲーム機を取り出し電源を入れて時間を見る。
「いや、まだ三時だ」
美来はそれを見て聞いた。
「あ〜携帯とか時計持ってないの?」
てか、絶対気のせいじゃないよね? バム、レゲインの名前間違えてるよね。
「持ってない」
そう真顔でサラッと言って立ち上がり服についた砂ぼこりを払う。
「ここって、何で薄暗いの? もしかして上の部分塞がってる?」
バムが上を見るが天井は見えない。
「薄暗いってか、青っぽいよね…ほら肌が白いバムは青白く見えるよ」
レゲインと美来はバムの方を見る。
「へ? 酷いよ! 私死人みたいだっていうの!?」
美来はバムに怒られた。
「青い……光……」
レゲインは考え込み出したすると突然たちあがり柱に触れる
「あ! あった、俺の想像石こんな所に……」
「ドユコト?」
美来はほおに人差し指をあて首を傾げてる。
「はぁ……昨日レゲインが言ってたじゃん、想像石は建物まで具現化しちゃうって」
呆れたようにバムがそう言った。
「えっ! じゃあその建物の中にいるの!? でも、石なんて何処にあるの?」
「だよな……石の手がかり見つけただけだよなこの建物がどんだけデケェか分かんねーしな。その中から石探さねぇといけねぇし」
あり得ないぐらい落ち込み出した、しゃがみ込んで膝を抱えている。
再起不能だ。
「美来ちゃん、出口探そうか」
バムが立ち上がり美来に手を差し出す。
美来は手を取り立ち上がる。
「うん! そうだねここに居てもしょうがないしね」
レゲインを置いてそばにある扉を開けてその奥へ行く。
「…………」
少ししてレゲインは顔を上げた。
「って!俺の事は!?待ってよ!」
立ち上がり後を追う。
カクランとアウラーは校長室のある校舎から出てくる。
「珍しいなーあの校長が外に散歩に出るなんてよ」
「そんな軽く言ってる場合じゃないよ! それっきり行方不明になっちゃったんだよ!」
ほおを膨らませてカクランに怒る。
「って言われてもよ、ほら、あのチビとか校長居なくなって喜んでそうじゃね? 校長の座狙ってるっしよ」
今度は目の前に出てきた。
「 カクラン! 何で校長には優しくしないの!?校長だって女の子じゃん!」
そう怒鳴られた。
「っ、なんだよ……優しくしたらたらしって言うくせに都合がいい時に利用しやがってよ。てか、何かあの校長苦手なんだよ」
声がだんだん小さくなっていた。
「あれ……なに?」
三人は廊下で止まる。
目の前には二体の死体とそれをむさぼる奇妙な生き物がいる。
「あぁっ……」
珍しくバムが怯えている、レゲインもだ。
「やべっマンティコアだ……」
二人とも顔が引きつっている。
「なにそれ? あれ、ライオンじゃないの?」
やばそうなので美来は小声で言う。
確かに体はライオンだが尻尾が違うサソリっぽい尻尾だ。
「な訳ねぇだろアレの何処がライオンなんだよ。早く静かに別の道にいくぞ」
すると「グルル……」気がつかれたらしい、マンティコアがこちらを向く。
「ひっ人の顔……」
お爺さんの顔で、口には血が付いているそれも一体でなく五体ほどいる
「み、美来ちゃん背中向けちゃだめだよ撃たれるから……」
尻尾の先をこちらに向けて何かが飛んでくると、レゲインは魔法陣の描かれた紙を数枚投げるそして、手をかざして唱える。
「シルト」
すると、紙に描いてあるものより大きな魔法陣が現れ飛ばしてきたものを弾いた。
「っ…やべっ」
片手をそのままにしもう片手でまた紙を一枚投げ「ボンベ」と唱える。マンティコアたちの前で中位の魔法陣が現れ爆発した。
「今のうちだ逃げるぞ」
元来た道を走り行っていない所へ行く。
「はぁ……はぁ……何あれ……気持ち悪い」
美来はもう走れそうになかった。
「美来ちゃん大丈夫? あれはね魔物の一種だよ人肉を食べる奴」
バムは心配しながらも美来の疑問に答える。
「けどよ、あの森に居たんだろうな……だから立ち入り禁止か」
二人とも息切れはしていないのに歩き出さない、美来の事を思ってだろう。
「けど、ゲレイン……あれだけの魔法、魔石無しであそこまで使えるって凄いよ」
バムが目を輝かせて褒める。
「元から魔力が高いんだよただ、俺の場合この紙がいるけどな」
紙を見せるとバムが奪い取り見る。
「んー魔法陣書かれたただの紙?」
そう言いながら破いた。
「あー!! なんてことすんだよ! 数少ないんだぞ! あぁ……俺の五分が無駄に.こいつだけは連れてくるんじゃなかった」
また、落ち込んでいる。
「だって、まさか本当にただの紙だとは……ごめんね」
謝っているが反省の色は全く無い。
「ただの紙に決まってんだろ……今持ってる紙も有限なんだよ」
にしても、紙の色が黄ばんでいるかなり前に書かれたものに見える。
「それ、いつのやつ?」
美来が聞いた。
「昔の物だよ4歳ぐらいの時のかな…多分色の感じからして、1日1時間書いてんだよ」
「もう大丈夫?」
バムが美来に確認する。
「うん、行こ」
「ふぇぇ……お腹すいたよ、どうなってるんだここは。まさか地下なのにマンティコアまでいるのだ……これじゃあ私が食べられちゃうではないか」
校長は地下をさまよっていた。
「うわあぁぁぁ! あいつ絶対笑ってる! あのチビ教頭!」
真後ろから気配がして振り向くと。
「!?」
「グルル……」マンティコアが五体いた
「うわあぁぁぁ!?」
校長は、走って逃げる。
「ひぃっ!?」
針を撃たれるがギリギリ避けていた。
「出口ぃ…」
バムは心が折れそうになっていた。
「わぁっ!?」
「きゃっ!?」
すると、曲がり角で誰かがバムに飛びついてきた。
「おい! また来たぞ!」
「まだくるのか!早く逃げるぞ」
後ろから来ているマンティイコアに気がつき走って逃げる。
「はぁ……助かった……」
美来は壁にもたれる。
「美来ちゃん大丈夫?」
走るたびにバムに心配されている気がする。
「全く、なんだね……あのマンティコアは私を豚肉みたいに見て…」
三人はピンク色の髪をした自分たちより背の低い女性をポカンと見ていた。
「ん? どうしたのかね?」
下にいるのに上から目線だ。
「ねぇ、バム、レゲイン、この人だれ?」
美来がそう聞くと2人は顔を見合わせ声を揃えて答える
「知らない」
「なにぃ!? この私をしらないだと! 仮にも私は君たちの校長だぞ! 知っていて当たり前じゃないのかい!?」
三人は怒鳴られ少し引いている。
そして三人で声をそろえて答えた。
「知らねぇよ」
「知らない」
「しらないって」
それを聞くと校長は膝をつき落ち込む。
「面倒くさそうな人がまた一人増えたね……バム」
「うん、本当に」
レゲインに聞こえていたらしく反応した。
「はぁ!? 面倒くさそうってなんだよ! 俺の事だよな!」
バムと美来は目をそらし、また声をそろえて言った。
「いやぁ?違うかなぁ……」
その様子を見ていたピンクの女性は間に入る。
「まぁまぁ、仲良くしたまえ…早い所こんな所から出て何か食べたいよ」
「想像石見つけないと出れないけどな」
まだ、校長という事を信じていないらしくタメ口だ。
「なんだと!? 想像創設された物なのか!? 危ないじゃないか! それでさっきあの部屋が青く光っていたのか」
怒鳴ってくる。三人とも、鬱陶しく思っていた。
校長が一人でブツブツ言っている間にレゲインと美来、バムはその部屋へ校長を置いて走って向かった。
「えっ? ……おい? お前たち! どこだ」
「チビの言ってたのってあの部屋か?」
レゲインは青い光の漏れている部屋を見つけてしれっと校長らしき人のことをチビという。
「れ、レゲイン、チビって……校長かもしれないのに」
部屋に近づくと足音が聞こえるので三人はそっと覗く。
「ねぇ、あれってマンティコアの大きい奴じゃ? ゲレインどうするの?」
レゲインを見る。
「俺、行ってくる……ほら、あの女神の像の手に掛かってるやつ想像石だ」
美来は目を凝らして見る
「小さいね……レゲイン!?」
見るとレゲインがドアを開け走り込んで行った。
すぐに巨大なマンティコアが気が付き針を撃ってくる。レゲインは、走りながら手に紙を持ち「コンメンシルト!」唱える。
手元に巨大な魔法陣が現れレゲインについてきて針を防ぐとすぐに消えた。
マンティコアの左に回り込むとこちらへ突進してくる。
「っ……スティック」
レゲインは二枚紙を持ち壁にタッチをしそのまま走り抜ける。マンティコアは壁に激突しひるんでいた。
その間に女神の像の足元にも同じ事をする。右側の壁にも手をつく。反対側から向かってくるマンティコアに注意しながら入り口前に立った。
紙を投げ片手で顔を覆い手を前に出す。
「シュタルクリヒト」
そう唱えると強い光が放たれマンティコアの動きが止まる。
「プンクトリーニエドゥルヒファーレン……」
さっきの手をついた場所の高さでそこを通る円が現れ巨大な魔法陣ができる。
「シュヴェールト」
するとマンティコアは斬り裂かれ、魔法陣が消えていった。
「ふぅ……」
美来とバムは外から見ていたが
「うぅっ……」
美来が口を抑え顔をそらす。バムは美来からレゲインの方を見て目を見開いた。
「ゲレイン!!」
そう名前を叫ぶ。
「えっ……!」
レゲインはバムの声に反応し後ろを向くと、一体巨大なマンティコアが立っていた
「! レゲイン」
美来も気がつく。
レゲインは口を開けて立っているマンティコアを見て青ざめた。
すると「かがんで!!」というバムの声が聞こえとっさに場でうずくまる。
バムはドアを開ける。
カシャッ……
一瞬だった、気がつくとマンティコアは足だけになっていて後ろの壁が中央だけを歪な形で残し長方形に消えていた。
レゲインは顔を上げる。
「……何が」
目に入るバムの手にはインスタントカメラが握られていた。
「はぁ……危なかったぁ〜」
バムは肩の力を抜く。
美来はバムに駆け寄るが、
「あ……」
見た事のない光景を見て声が出ない。
「何したんだよ? これ……」
レゲインがそう聞くとバムは一枚の写真を渡す。
「!……これって」
そこには今この場から消えたものが写っていた。
「私の考えたものだよ、このカメラで撮って写ったものを写真の中に閉じ込めるの」
「凄い……これって魔法なの!?」
美来は驚きから関心に変わった。
「そうだよ美来ちゃん、このカメラ自体が魔法具なんだよ」
二人でワイワイ話しているが、レゲインは写真を見て震えている。
「どうしたの? レゲイン」
美来がそう聞く。
「俺らどうやって脱出すんだよ……マンティコアもろとも想像石まで写真の中じゃねーかよ」
写真の中の想像石を指し示して怒っていた。
すると入り口から。
「落ち着けうるさいぞ……いやー見事だね久しぶりに戦ってるところ見たよ」
校長らしき人物が入ってきた。
「紙を二枚重ねて片方に粘着性の魔術をかけ上の紙を壁につけ、紙同士を結んで巨大な魔法陣をつくる……凄いね」
魔法陣が消えて床に落ちた紙を拾い上げる。
「それで……そのカメラは魔法石と想像石を埋め込んだものだね? レンズは霊石」
話しながらレゲインから写真をとりバムに渡す。
「想像石だけを取り出せるだろ?」
バムは頷き写真を床に置き写っている想像石に竹串を刺す。すると光だし想像石は元の大きさで全く変わらぬ姿で出てきた。
「さすがだよ君たち」
校長らしき人物は想像石のペンダントを拾い上げレゲインに渡す。
「……あの、何を」
「使えるのだろ?」
その問いに頷き石を両手で包み目を瞑る。
少しして、周りが光に包まれ気がつくと元いた森の中だった。
「あ……どうなってるの?」
美来は周りを見渡しそう言った。
「校長ー!」
遠くからアウラーとカクランが走ってきた。
「アウラー……」
アウラーは校長らしき人物の手を取り喜んでいる。
「よかった校長、無事で」
少し涙目だすると校長らしき人物は唖然とする三人をよそに涙目で喜んでいる。
「アウラーぁ君は私をそんなにも心配してくれていたのだな、嬉しいよ」
「本当に校長だったのかよ……」
ただのチビな生徒かと思ったのによ。
校長はレゲインを見て胸を張り言う。
「だから言っているだろう? 私が校長だと」
「大丈夫大丈夫、レゲイン、僕もこいつの事校長だって信じなかったしよ」
カクランがレゲインにそう言ったが、
お前と一緒にされたくねぇ……。
レゲインは内心そう思っていた。
「二人とも私は部屋へ戻るからな……その……死んだ奴たちをこの森から見つけてくれぬか? 確か五、六人はいたか」
アウラーは、にっこりとして了承する。
「はい! 分かりましたよ」
「あの…想像石は没収されないんですか?」
レゲインが敬語で校長にそう聞く。
「ああ、あの場所で死んでしまったやつらは、この森のマンティコアに殺されたのだからな。想像石のせいではあるまい、三人とも今日はゆっくり休むと良いだろ早く帰りたまえ」
校長は手で払うようにそう言った。
夜中、美来は布団に入り考える。
なんか、凄いもの見たなぁ……レゲインちょっとかっこよかったかも。バムも凄かったなぁ。でも、レゲイン……バムの間違い訂正しないのなんでだろ?
けれど、私は忘れるんだろうな。
そうこう考えているうちに眠りに落ちた。
夜の森の中、陥没した地面の前に人が立っていた。
「ふふふっ……さすがねぇ〜あの子の苦しむ所も見てみたいねぇ、それに、まさか校長まで引っかかるなんて。さらに、この世界の者でない人間もいるなんてね……」
すると、近くの草むらが揺れる、そこへ、針を投げつけるた。
「がっま、魔女……」
一人の教師が転げ出てきた。
「あら? 残念ねぇ……生徒ならまだ勧誘できるけど君らは話聞かないものね」
教師は言う事を聞かない体をじたじたさせながら怯えていた。
魔女と呼ばれた人は、教師を引きずり出し見下ろす。
「無理よ、だって針には毒が塗ってあるもの」
近くの木に手をかざすとミシミシと動きだすそして、教師を吊り上げ剣のように変化させた枝で切り裂く。
「ぎぁあ! やめてくれ! 頼む殺さないでくれ」
「んふふっ綺麗ねぇ……でも、もう少し声を我慢してくれるといいのにね」
不気味に返り血を受けて笑っている。
「ぐぁあっ! やめっ……」
そいつが手をかざすと教師の息の根を止めた
「はぁ、おっさんの死に顔って興味ないのよね。仕事しましょ……」
教師に石をかざすと透き通った白っぽい気体が出てきて石に入っていった。魔女と呼ばれた人は、暗闇の中へと消えていった。
レゲイン
歳、16
性別、男
種族、コウモリ
家族関係、父親と暮らしてたよ
特徴、普段はフードを深く被っていて顔を隠している
一人称、俺
一言
「バムってうるさい…美来の方が楽」
バム
歳、15歳
性別、女
種族、パンダ
家族関係、お母さん、お父さん、妹がいるよん!
一人称、私
特徴、レゲインをゲレインと覚え間違えている、笹をいつも持っている
一言
「ゲレインって面倒くさい…それにあいつに美来ちゃん取られて友達居なくならないか心配だよ…」
以上キャラ紹介でした