避けるような行動の理由
美来はシューネとペアを組まされ引っ張り歩かれていた。館に入った時は皆んな一緒に行動していたが些細な事で言い争いが始まり分裂してしまったのだ。
「全く、人の家をなんだと思っているのだか……? 美来だったっけ? さっきから何してるんだ?」
「えっ? いえ……別になんでもないです」
時折何かを避けるように廊下を移動する美来をシューネは気にしていた。
ナーゲルはレゲインと並んで歩いていたが、ナーゲルが一方的に嫌っているのでそっぽを向いている。
「何なんだよ……」
「こっちのセリフ、何でシャンじゃないんだよ? 今頃シャンは……」
「気持ち悪……っ」
レゲインはそこから黙り込みフードを深くかぶり込む。更にグスングスンと鼻をすすっているようだった。
ナーゲルは様子がおかしいレゲインが気になるのかチラチラと横を向いたりしている。
シャンはソテと当たっており、ソテにとっては地獄のような時間が始まった。
「ちょっと! 離しなさいよ!」
「嫌だ! 怖い怖い……無理だって! オレはこういうの無理なの! うわっ!?」
「きゃっ!?」
シャンは何かを避けるようにくっついていたソテごと壁にぶつかった。
「痛ぁい……何してんのよ……」
「だ、だって今、幽霊いたって」
「幽霊? 魂の欠片を見たの? シャンシャス……見えるんだね?」
シャンはソテの目を見て涙目で頷く。
バムはヴェーリとクロとの三人で歩いていた。
「私のピン留め……」
「情けないね、あんたはコールを取られたわけじゃないんだし買い直せばいいだろう?」
「わ、私のコールはピン留めも含めてなの! 見た目には影響ないけど、変異の時にフードと一緒についてきたんだから!」
「あたしなんて片耳だけ取られたんだからな!」
ヴェーリはクロを睨むように見て、バムはふくれっ面で呆れたように見ていた。
「私はソテさんの言う通りにしただけです」
クロはあくまでも自分は悪くないと言い張っていた。
「美来、さっきから何を避けているんだ?」
「えっ? そ、それは……その」
美来は言いづらそうにうつむいて指を回している。
「幽霊でも見えてるとか? もしそうならそうって言ってくれないかな? 取り憑かれたくないからな」
「それっぽいのなら、ちょうどシューネの行く道に一人います」
美来が見えていてシューネの行く先に一人いると聞きシューネは前を見た。
「え?」
「あ、ぶつかります」
それを聞いた瞬間シューネは美来の方へ慌てて飛び退いた。
美来はそんな行動をするシューネを不思議そうに見ていた。実は元の世界でも美来はちょくちょく幽霊などを見ていた。だが、それを親に言ったところで精神科か脳外科に連れて行かれるのがオチだったのでいつしか気にしないようにするようになっていたのだ。
「見えてるのなら教えて欲しい」
なんでというようにシューネの目を見る美来を見てシューネはため息をついた。
「この世界出身じゃなかったんだったな、ここには幽霊って言われる死んだ人の魂の欠片が漂ってる事があるんだ、未練や恨みの強さによって言葉を話したり会話ができたりそれぞれ変わってくるんだけど、触れると触れた者に欠片が引っかかって取り憑かれたりする事があるんだよ」
「取り憑かれたら何かあるんですか?」
「あるも何も、気が狂ったりいろいろと……未練とか弱い霊ほど普通の者には見えないんだ美来は……霊力が高いから見えてるんだろうし」
シューネがあそこまで必死に避けるほどだこの世界の霊は危険なのだろう。
ーードスッ
シューネがいきなり足を止めたので後ろで考え事をしながら歩いていた美来はぶつかってしまった。
「どうしたんですか?」
「……おかしいな? この廊下こんなにも長くなかったはずなんだ」
美来とシューネは来た方向を振り向く。
廊下の先はよく見えない。
「霊が増え過ぎたのか? ……」




