預ける理由
久しぶりに美来、バム、レゲインの三人で昼食を買って食堂で食べていた。
寮では夕食、朝食だけしか出されないが水など飲み物はあり何時でも人が一人は居た。
「どうかしてんじゃねぇのか? オレでも魔女に関係する奴は残すべきじゃねぇって思うのに」
「良いじゃん、残れたんだし。ねぇ、美来ちゃん」
美来は箸をくわえて顔を上げた。
「え? うん、退学取り消されたこと?」
バムは美来の顔を覗き込む。
レゲインは頬杖をつき呆れたように美来を見た。
「それ以外何があんだよ? どうかしたのか?」
「うん……ルウブから荷物預かったの」
「今度部屋に上がらせろってか?」
突拍子もない弄りをしだしたレゲインを異様なものを見る目でバムと美来は見ていた。
「っ……なんだよ、俺だって偶にはそういう事言うよ、変な目で見るんじゃねぇ」
「ゲレイン壊れたかと思った」
「初めから壊れてるお前に言われたくない、んで、何て言われたんだよ? 何預けられたんだ?」
レゲインの退学が取り消されたその日、寝ようとしていた美来の部屋の扉をノックする者がいた。
美来が扉を開けると、そこには茶色の木箱を持ったルウブが立っていた。
「悪いけど、説明したい事があるから……」
ルウブが後ろを見る、そこには女子寮に入ってきたルウブの動向を興味津々に監視している女子達がいた。ルウブは中に入れろというように美来の方をむき直した。
「えっと、どうぞ……」
その視線を理解した美来はルウブを部屋に上げた。
美来は部屋に人を上げた事が無かったので全く椅子や机の必要性を感じず購入していなかったため、元からある勉強机の椅子を差し出した。
「いいのかよ? お前、座る場所……」
「ベットに座るから大丈夫」
「てか、本当にここで生活してんのか? 何つーか、生活感無ぇ」
大きなお世話だと美来は思ったが無言でベットの上で正座をしている。
ルウブは勉強机に箱を置き、頬杖をついて美来を見た。
「本題だけど、この箱預かってくれねぇか? 何でお前かって言うと、この学校の中で一番想像源が多いからこの世界の奴でないとはいえ多いには変わりねぇし」
「そんなに多いの? でも何の関係が?」
頬杖を止めいつもと違い普通の人と同じように微笑んでいた。違ったものだから逆に不気味に感じるほど。
「主人公補正って知ってるか?」
「うん……何あっても死なないとか?」
「まぁ、そんな感じだな。この世界は知っての通り想像された世界だ、ゲーム内か漫画やアニメかは定かじゃねぇけど」
美来は首を傾げて聞いていた。カクランに説明された事をほぼ忘れていたのだ。
「理解しろよ! 主人公は設定とか凝ってるだろ? そこで想像力を一番注がれてる訳でそれが想像源の多さに関係するって考えなんだ、んでお前なら何かない限り生きてるだろうし荷物も無事だろうしって事で預かってくれって頼んでんだ」
「いいよ、預かるよ。よく分かんないけど」
「は? ……今までの説明聞いてたか? そもそもいきなり現れた良く知らねぇ男の荷物なんて簡単に預かるもんじゃねぇだろ」
美来があまりにもあっさり受け取る気になったのでルウブは自分の荷物を預かるなと言ってしまっている。
「あの、預かって欲しくないの?」
「いや、預かってもらいたい。頼んだぞ、あとよ……その」
ルウブは言いづらそうにしながらも自分とカクランについての事で頼み事をした。
ルウブが帰った後、もし、カクランが捕まったらある監獄まで来てほしいという事だった。
「じゃあ中身わからないの? まぁ、先生のお兄さんだし重要な物なんじゃない?」
「うん……」
バムが言う通り、カクランのお兄さんだからこそ美来はあっさり荷物を預かったのだ。
「ん? けどよ、あのキツネが何で捕まるんだよ?」
確かにその通りだ、カクランはナンパなどはしているものの心配をされるような羽目を外した事をした事はない。少なくとも美来達が入学してからは。
レゲインは二人から返事が返ってこないので一人で考え込んでいた。素行の悪くないカクランが意外と人に避けられているのを目撃していた。
けど、あの避けられ方は……まるで怖がられてるみてぇだったよな




