逃げた理由
「もう大丈夫だね」
レゲインはヤギに包帯を外してもらい服を着なおしていた。
「レゲインちゃん、昨日暴れたんだってね」
「……それが?」
「シェフの人が困ってたよ〜片付けに、初めてだねぇ〜レゲインちゃんが食堂荒らすなんて」
レゲインはヤギを見て固まっていた。
何で俺だけのせいとしてこいつの頭に刻まれてんだよ……
「ん? どうかしたのかなぁ?」
「別に」
「けど、レゲインちゃん、二人になら言ってもいいんじゃないのかな? ドラゴンだって融通が利かないわけじゃあないしねぇ〜」
「……そんなの信用できるかよ」
レゲインは寂しそうな目をしてどこか空中を見つめていた。
この日忘れやすい美来は昨日の出来事を忘れる事ができずあるノートを見て表情が暗くなっていた。
そんな美来を元気付けようとでもしたのだろう、できればこうあってほしいという感じで元気にバムが話しかけてきた。
「美来ちゃん、どーしたの? 熱でもある?」
「うんん、大丈夫……熱はないよ」
バムは机に肘をつき自分と美来の体温を比べる。
「……熱ないね」
「バム、レゲインどうしちゃったんだろ? 私、レゲインに何かしちゃったかな?」
「何かって?」
「例えば……何か相談してくれたのにすぐに話忘れちゃって怒らせたとか」
美来の例えを聞いてバムはキョトンとしていた。
「ゲレインが? 人に相談?? 大丈夫だよそんな事あるわけないじゃん」
「でも……」
「心配事とか口に出したことないじゃん、あっても人に相談なんてしなさそうだし」
バムがそう言っても美来の不安や違和感は全く払えず体術などの授業が身が入らない。
みんなが崖を上がる中一人崖の下の木の根元に座り空を見上げてぼーっとしていた。
「美来……」
「レゲイン? えっと……欠席じゃ?」
レゲインは幹の裏側に立って美来に話しかけてきた。
「途中参加しようが勝手だろ? あのよ……っやっぱりなんでもねぇ」
「えっ?」
美来が反対側を覗いた時にはレゲインはその場に居なかった。
昼食後にバムと美来はグループルームに行くがやっぱりレゲインは居ない。
「依頼、どうする?」
「へ? えっと、レゲインが戻るまでやらなくていいよ?」
「……ねぇ、ゲレインが話しかけてきたんだけど、何でもないって言ってどっか行っちゃうんだよ、気持ち悪い」
レゲインは美来だけではなくバムにも話しかけていたようだった。しかし、バムはその後レゲインをつけており、教頭とレゲインが話そうとしているのを見たらしい。
「気がつかれちゃったみたいで、ゲレインが教頭放って逃げちゃった」
「何で気がつかれたの?」
「盗撮しようとしたから、でも逃げられて写ったはいいけどブレてる」
何がしたかったのバム!?
「レゲイン、聞いているのかね!」
レゲインは教頭に自分から逃げたのだと思い込まれ本題とは別に怒っていた。
「聞いてるつってんだろ」
「その態度が駄目だと言っているんだ! もう良い、それで、君は退学になっても良いのかね?」
「……どうせ退学になんだ、いいよ。けど違法でもこの世界から抜け出すつもりだからな」
レゲインは教頭を睨みつけ行ってしまった。
「ことばにはきをつけろ!!」
夕食時、美来は食欲が出ずバムに断って先に部屋に戻っていった。
「どうしちゃったんだろ……ゲレインも美来も私が聞きたいよ……」
バムは仕方なく一人で食べていたが全てが壊れてしまいそうな不安を覚えていた。
まるで昔の自分のように……
その様子を陰で見ている者がいた。
その後ろからファルが近づきその者のもたれている柱の横の面にもたれる。
「何してんだよ、お前のせいであの子達めちゃくちゃになりかけてるだろ、ルウブ」
「そーだな、まぁいいんじゃね? あれで魔女の誘惑に負けたら所詮その程度なんだろーし」
「偶然ルウブのせいでこうなったのに悪趣味だな」
ルウブは口元にだけ笑みを浮かべ、それを隠すようにマフラーを上に上げた。




