喧嘩の理由
「ヘルバ、あと少しだったというのに! アンに命令しただろう」
ヘルバは遠くを見たままメランの問いに答える。
「当然じゃない、あなたは私の計画を邪魔するのでしょう? なら私はそれに抗うのが普通。レゲインちゃんを殺さなかったことを後悔するのね」
「あのガキになにがるんだい?」
「第二級魔女に匹敵する魔力よ」
メランの方を向き不気味に微笑んだ。
突然携帯が鳴ったのでヘルバは確認し顔をしかめた。
「この仕事はしばし延期みたいね」
昨日の騒動はファル、その他数名の生徒の前に魔女が現れ始末をた後、一切なにも起きなかったので治った。そのため翌日は普通に授業が行われた。
美来達のクラスでは長期にわたるカクランの失踪で模擬戦前に予定されていたテストが行われていなかったため、抜き打ちテストのようにテストが行われた。
「美来ちゃん、大丈夫だった?」
バムがテストの出来を聞くと美来はダメだったのか震えている。
「へ……バム……どうやら俺はここまでのようだ……」
「美来ちゃん!? 人格変わってる!」
隣で騒いでいるバムを鬱陶しく思ったレゲインは立ち上がり美来の頭の上に魔法陣の紙を置く。
「ヴァッサー」
紙を中心に魔法陣が展開しそこから水が流れた。
「ぐぶっ……ケホッあれ? 何で水浸しなの?」
「戻ったけど?」
「戻ったけどじゃない! 美来ちゃんびしょ濡れじゃん!! 風邪引いたらどうするの!」
「殴りゃあ良かったか?」
呆れたように美来の頭の上に離しておいていた手をどけ、バムに何かを言おうとした時気になるものが目に入り扉の方を向いて口を閉じた。
美来はレゲインに違和感を覚える。
「レゲインどうかしたの?」
レゲインはじっと美来を見下ろし、きびすを返し扉の方に歩いていく。
「どこ行くの? グループルーム行かないの?」
「別に……今日は行かね」
レゲインはそのまま教室を出て行き夕食まで会うことはなかった。
その日も魔女が一人現れたが直ぐにルウブ達が駆けつけ始末した。
「レゲイン、何で今日は一人で食べてるの?」
美来はバムと先に夕食を食べ終え、いつもとは違い食堂の端の席で一人静かに食事をするレゲインの所へ行った。
「俺の勝手だろ、てかそういう事は覚えてんだな」
「えっ……? だ、だっていつもの事だからさすがに覚えてるよ」
レゲインは食べる手を止め美来のほうを睨むように見る。
「あっそ」
レゲインの冷たい態度にバムは黙っていられなかった。
「ゲレイン、さっきから何なの? 美来ちゃんはゲレインを心配してるのにその態度はないでしょ!」
「だからなんだよ?」
ーーガシャッ!!
バムがレゲインの胸ぐらを掴み机に押し付け殴ろうとするがレゲインは頭を横に避けバムはレゲインではなく机を殴り壊した。
「ば、バム! やめてよ」
美来の声など聞こえずバムはレゲインを投げ飛ばす。レゲインは机に手をつき机の向こう側に着地する。
周りは巻き込まれないよう自分の夕食を持って端の方によって見ている。
更に攻撃にかかるバムを見てレゲインは紙を投げバムが紙に近づいたところで"カステン"と唱える。
「っ……!」
紙を中心に魔法陣が展開しバムを囲むように辺が紫に光る箱が現れる。
バムは前に出ようとするが箱からは出られずカメラを取り出し箱の辺を消してしまってレゲインに掴みかかる。
「バム! レゲイン! やめてって!!」
レゲインは紙を取り出しバムは拳を振り上げた時、間に誰かが入り紙を持つ手首と振り上げた手首を掴んで止めた。
「二人とも何してるんだ?」
カクランが間に入っていた。
意外と強い力で握られていたのでバムは拳が緩みレゲインは紙を落とした。
「キツネ……」
「先生……」
カクランが手を離すと二人とも手首をさすってお互いそっぽを向いていた。
「聞いてるのかよ? バム、レゲイン……なにしてんの?」
カクランは聞くも二人ともふくれっ面で答えようとしないのでため息をつき立ち上がり美来の方へ行く。
「か、カクラン……私、何かしちゃったかな?」
「そんなの僕に分かるわけないだろう? 二人に聞けば分かるよ、おやすみ」
カクランはその場を放って部屋に戻っていった。
「バム、レゲイン……」
美来が寄ってくるとレゲインは立ち上がり服を払い部屋に戻っていった。
バムは立ち上がり申し訳なさそうに美来の方を向く。
「ご、ごめん……美来ちゃん……つい」
「いいよ、だって明日には忘れてるし……」
「そうだね」
「っ……」
レゲインはイライラしながらも部屋のドアノブに手をかける。
「レゲイン……いきなりどうしたんだ?」
ナーゲルが話しかけてくるがレゲインはナーゲルの方を見て何も答えない。
「……君、こないだ教頭と話してたこ……!」
その話題を出した途端レゲインに鋭い目つきで睨まれ言葉に詰まった。
「その話、盗み聞きしてたのか?」
「い、いや、やけに怒鳴られてるなって思っただけだから……大丈夫か?」
「そう……俺に関わるな、他人を心配するやつじゃねーくせに」
ナーゲルはただレゲインが部屋に入るのを見ていた。




