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イラつく理由

あの眠そうにしていた子が遠くの席で食事を前にして居眠りをしている。その横では、犬の男の子が駄々をこねるように彼の肩を揺すっていた。

「ご飯中だよ、起きてーねぇ、起きてよ」

眉を寄せると眠っていた彼は重たい瞼を開け手の甲で擦る。

「寝不足なんだよ……」

「ご飯冷めちゃうってば!いつも俺に言ってるのに寝ちゃダメ!」

「おまえらの生活習慣にはついていけないんだよ」


「美来ちゃん食べないの?貰っていい?」

そのやりとりに集中していると隣から手が伸びてきて美来の食事を掻っ攫おうとしていた。

「え?食べるって駄目だよ!」

なんとか寸前の所でとめることができたが、ホッとしたのもつかの間、


「ぁああ!!」


驚くような叫び声が聞こえ手元に白い石が飛んできた。掴んだ瞬間バチッ!という音と手にピリッと痛みがし思わず落とす。

「きゃっ!」

美来の声が大きかったのかその場が静まり返り皆んながこちらを見ている。

叫んだ本人も唖然とする中、フードを被ってる生徒は来て何も言わず石を拾って戻っていった。

次第に周りは賑やかさを取り戻し、我に返ったバムが顔を覗き込む。

「美来ちゃん大丈夫だったぁ〜?」

「うん……大丈夫だけど……」

フードの生徒の方へ目を向けると騒いでいた生徒二人が俯いている。

多分フードの子をからかっていたのだろう。

「寒気とかしない?」

「え?大丈夫だけどなんで?」

「さっきの石、知らないの? 白い透明の石は霊石っていって霊力がこもってたり、乗り移られたりするんだよほら。こないだカクランが言ってた」

「そんな事言ってたっけ……?」

それを聞いたバムは驚いた表情で固まってしまった。

「美来ちゃん?」

「え?何?」

「ううん、なんでもないよ。私食べ終わったから先に戻るね」

「あ、うん、おやすみバム」

バムの後ろ姿を見送り食器を返却し、自室へ戻ろうとした時、何処からか声が聞こえた。

「美来……」

周りを見渡すと入り口の陰から誰かが手招きをしている。

「誰?」

「美来ちゃんって」

はっきり聞こえた声はカクランのものだった。

小走りで外へ駆け出ると誰の人影も見当たらない。

何故ここへ出てきたのかと首を傾げ戻ろうとすると木の上から声がした。

「今日は、曇ってるねー」

心臓が縮むような感覚に身を硬ばらせ、咄嗟に上を見上げるとカクランが木の枝に腰掛けている。

「こんばんは、美来ちゃん」

優しく微笑みかけてくるが、此方はまだびっくりした余韻がまだ残っており冷や汗を拭うことしか出来ない。

「驚かせ過ぎちゃったかな? 怖がらせるつもりはなかったんだ、ごめんね?」

「か、撹乱……先生?」

「カクランね? 僕そんな事しないから。あと、美来ちゃんなら先生つけなくてカクランでいいよ」

実際、今まさにしたと思う。

「そ、それで、先生何の用ですか?」

後半は無視して本題に持って行く。

「あ……うん、ごめんね、僕が逆に言いくるめられちゃってさ。本当にごめんね」

手を軽く合わせ首を傾げて申し訳なさそうに苦笑いをしている。まるでおねだりをする女子だ。

しかし、美来は全く身に覚えがなく何を言いくるめられたのか、何を頼んだのか分からなかった。

「なんの事ですか?」

カクランはポカンとしていた。

「へ?」

「先生……実は女性ですか?」

突然の質問に当然のように答える。

「何をどう見てそうなったの!? 僕は普通に健全な成人男子だよ」

「健全……?」

「美来ちゃん? 僕をなんだと思ってるのかな……」

彼は困り笑みを浮かべていた。

「あ、私もう寝ますねおやすみなさい」

「ん? ぁあ、おやすみ」

当たり前のように挨拶をして返って行くのでカクランはつい挨拶を返して話をせずに返してしまった。

「え。ちょっと、まだ話し終わってないよ!?」

時すでに遅し、もう声の届く範囲に彼女はいない。

しかし、今の様子を見る限り彼女は今の現状を特に問題視していなさそうだった。その様子を思い出し思わず安心してしまう。

「今のまま何もないといいんだけどね……」

彼は独り言を呟きながら同じ寮に入っていった。




カクランは飛び起き、時計を見て一瞬慌てた。

そうだった、今日は休みだ……。

何かをやり直したかったのか。よく同じ夢を見ていてそれに夢中になり寝坊することが多い。

安心してもう一度眠りにつくがすぐにノックが聞こえる。

無視をすると、

「コーンコーン カクちゃ〜ん アウラーが伝言に来ましたよ〜?」

ドア越しにそう聞こえてきた。

「うるさい、寝かせて」

声には出さずドアを開ける。

ニコニコしながらアウラーが立っていた。

「朝から元気そうで……」

「朝から元気ないとやってけないよ? 寝癖ついてるけど今起きたばっかりなの? 耳外して寝てるの?」

笑顔でそう聞いてくる。

眠くて反応する気にならない。

「二度寝しようとしたところ、カチューシャ邪魔だから外して寝てる。普通でしょ? それで、伝言って?」

無感情に答えた。

とりあえず、伝言を言って欲しい。

「魔女が紛れてるから先生達は見回りなんだよ? 寝てたら怒られるってさ」

怒られるだけで済むなら寝ていたい。

「分かったよ」

嫌だが答えるとアウラーはにこにこして続けた。

「ありがとう! 実は、もし私が遭遇したら戦えないからって護衛を探して来いって言われてたんだ」

……そういやあ、こいつ戦えなかったな、てか、俺もあまり戦いたくない。



休みだということで、美来はバムと一緒に店街を回っていた。

よく見ると学校なのにゲームやなんかのアニメのグッズがかなり売っている。

「ここの先生達どうかしてるのかな? 普通、ゲームとか禁止にされそうだけどな」

小さい声で呟いたつもりだった。

「多分、買う人少ないと思うけど。ほら、創造した世界だし」

つまり、この世界の創造者はアニメオタクなのだろう。



「ねぇ、クラスの子以外人見ないね…」

「美来ちゃん知らないの? 他のクラスの子や学年の子とは滅多に予定が被らないようになってるんだよ」

と、指をさしてこう言う。

「ああいう人が居るから」

指さした先には見覚えのある人がナンパをしているように見えた。

「バム? あれ、カクランだよね……」

バムは目を凝らして見る。狐耳のカチューシャを付けてはいないが確かに先生だった。

「カクラン先生〜」

バムが呼ぶとこちらに気がついて、走って来た。

「ん? どうした? 僕に何か用?」

何もないように聞いてくるが、さっきやっていたことを問うと。

「な、ナンパなんて学校でするわけないだろ、誰も相手にしてくれないし。じゃなくて、オレはまともに仕事してたんだよ」

美来とバムは声をそろえて言った。

「仕事?」

「ぐっ…なんだよ…その疑った目は」

「この人のせいで予定が被らないようにされたんだね」

納得したように美来が言う。

「いや、前からだから俺のせいじゃないぞ。

それに、ちゃんと仕事だよ」

「ナンパが?」

バムが心無しにそう言う。

美来は笑いをこらえていた。

「……二人ともそのワードから離れてくれないか? 見廻りだよ」

少し近づいてきて小声で教える。

「魔女が紛れてて、一人倒れたんだってさ」

「魔女って?」

美来の一言でカクランとバムがシーンとした。

気まずくなってからカクランが説明を始める

「魔女っていうのはな、女性だけの種族なんだけど、普通の人間とティーアンの女性と見分けが付かなくて、魔力しか持たない奴らだよ」

説明してくれたが。そのままのことを言っていて逆によく分からなかったため、まぁ、普通に魔女なんだろう。

と美来は理解する。

「倒れたって?」

もう一つ疑問に思ったことを聞く。

「魂抜かれたつった方が正確だな」

バムは普通に驚いていたが、美来にとっては現実とかけ離れ過ぎて驚く前にポカンとしていた。

「まぁ、美来はそのうちわかるよ。お前ら二人とも気をつけろよ?」

バムも美来も素直に「はーい」と返事をした。

カクランは何処かに行っ……さっきの場所へ戻り同じ事をしていた。

「可愛いのにねー」

バムが冷めた表情をしてそういった。

「何が?」

「ん? カクランのことだよ?でも好みじゃないなぁ〜」

いつから好みの話になったのだろう?

でも、可愛いとは思う男だけど。いつも明るいなぁ……ペットとかっていつも明るいし。

あれ? 狐って犬じゃない?

「美来ちゃん美来ちゃん」

バムが名前を言いながら肩をトントンと叩いて呼んだ。

「あれ、怪しいよね、追ってみよ?」

フードの子を指差し楽しそうにバムが誘う。

怪しい奴に関わるなんてフラグでしかない

アニメでしかないような展開。でも、今こころよく話せる相手はバムしか居ない。断って嫌われるのは避けたい。

美来は、考えて行くことにした。

「うん、行こう」


森の奥まで行くと立入禁止という看板とロープが張ってある。そこに、入って行くのが見えた。

「あの先行っちゃいけない所なのに」

そう言いながらもバムは奥へ行こうとする。

「バム? さすがにやめた方がいいよ」

美来は袖を引き引き止める。

「えー、でも」

すると、すぐそばから水溜まりに水滴が落ちる音がする。

バムと美来はしばらくその音を聞いていた。

ふとバムが聞いた。

「水の音? あんまり綺麗な音じゃないよね」

言われてみればネットリとした音だ。結局、ロープの向こう側に行き音の正体を確認する。

木下に赤黒い水溜りができていた。美来は匂いに思わず顔をしかめ、手で鼻を覆う。

「うっこれって血だよね?」

バムは特にさっきまでと変わらない。

「そうだね、美来ちゃん大丈夫?顔色悪いけど」

心配そうに覗き込んでくる。

「うん、大丈夫……」

チラッと木の上を見たが、死体が枝に引っかかっているのが見え直ぐに目線を血の方に移す。

「ねぇ、本当に大丈夫?」

大丈夫って……バムは頭がおかしいのだろうか? こんな物初めて見た。何故、バムは平気な顔をしているの?

「美来ちゃん、こういうの見るの初めて?」

美来は無言で頷く。

バムは死体を見るのは初めてではないようだった。

バムに、恐る恐る尋ねる。

「こ、これってさっきのフードの子?」

「うんん、違うよ、見たことない人だよ」

「ってことは、その、フードの子が殺ったのかな?」

「ねぇねぇ、確認してみようよ」

バムは何故かワクワクしたようにそう言った。

美来は唖然としていた。、

「な、何で? あの子が犯人だったら私達も危ないよ!? そ、それに魔女だったらどうするの?」

魔女と言うとさすがにバムはひきつった表情をする。

魔女に対していまいちイメージができないが、肌が黄緑なのかな?

「ほ、ほらぁ〜犯人見つけた方がぁ〜ひ、評価してもらえるんじゃないかなぁ〜?」

意地でも探究心を優先したいようだ。声が震えている。

「わかったよ、どこいったかわかるの?」

バムについて行く事にする。バムは周りを見て歩き出した。



「せ、先生? 何をいっているのですか? おごってくれるのですか?」

女子生徒がカクランの一言で困っていた。

「そうそう、空いてないかな? 皆んなこうやって誘うと何故か逃げちゃってさ」

にこにこしながらそう誘う。

「あ、当たり前なのですよ、お母様にそういう人には関わってはいけないと言われたのですよ」

申し訳なさそうにカクランにそう言う。

あ、危ない人か、オレ……。

「駄目かな?」

困った顔でそう聞き直す。女子生徒は、本を抱え直し丁重に断る。

「あーえっと、お誘いはありがたいのですが……私、薬品調合に忙しいのです。もう行かないといけないのです」

そう言い、何処かへ向かっていった。

「あー……」

行ってしまった後にカクランは明らかに落ち込む。

あいつの方が人気あるよなぁ。会いたくねぇ……。

周りを見渡して気がつく。

そういやあ、あの二人どこ行っても見当たらないな。あと、あの暗い奴も。



「ねぇ……暗いよ? 入るの?」

美来とバムは結構奥の深そうな洞窟の前に来ていた。

「大丈夫だよ魔石を持ってきたから!」

と、紫色の石を取り出す。

「それ、どうするの?」

「ん? これは、呪文を唱えると明かりになるんだよ」

石を両手で包むように持ち「リヒト」と唱えると、浮かび光りだした。

「おー……どうなってんの?」

と美来は不思議そうに光を眺める。

「どうなってるって、魔法だよ」

さすがに呆れたようにそう説明される。

「私にもできるかな?」

石を投げ渡され思わず避けた。

「美来ちゃん? それ、触っても大丈夫だよ」

そう言われ恐る恐る取り上げる。そして、同じように唱える。

「リヒト……」

一瞬にぶく光ったがすぐに消えてしまった。

「あれ?」

失敗したらしくがっかりする。

「信じることと、イメージが大切だよ?」

バムにそう言われるがよく分からない。

「信じるって、イメージって、んぅ」

自分の中にも魔力は一応あるらしいが、これは石に内積されている魔力しか使わないので誰でもできるらしい。

私もちゃんとできるのかな?

洞窟の奥へ進んで行く。あの光も一緒にふわふわと浮いてついてくる。

夜中に見たら人魂と勘違いしそうだ。

しばらく進むと、奥から物音がする、何かを掘っているような……。

「死体埋める穴でも掘ってるのかな?」

縁起でもないことサラッと言わないでほしい

私達も埋められてしまうかもしれない。

奥に行くにつれて音が大きくなる。

すると、美来が何かにつまずきこけた。

「きゃっ!?」

「うわっ!?」

美来の声に重なってもう一人誰かの声も聞こえた。

「美来ちゃん!? 大丈夫!?」

美来は一息つき前を見る。

そこにはあのフードの子らしき人がいた。

というのもフードが外れていてイメージに合わない箇所があったからだ。

綺麗な金髪のショート、少し睨んでいる気もするが鋭いような目つきで透き通るような紫色の瞳をしている。頭には何かの耳が付いた布をカチューシャのように巻き、後ろで結んでいた

それに……男の子のようだ。

バムもジーとその子を見ている。

獣耳がついた物を着けているとさすがに拍子抜けする。怖がって損した気分だ。

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