戦えない理由
授業が始まった途端校内放送が流れた。
『魔女数名による上級生クラス襲撃が起こりました、一年は人クラスで行動、二年は三班一組で行動、三年はニ班一組で行動し魔女に遭遇した場合ただちに討伐するよう。尚、この襲撃による犠牲者は不明、行方不明者は他クラス合わせて数十名です』
その放送を島に来ていたドラゴンのリーダー達も聴いていた。
「本当嫌われてんな……」
「気にすることないですよ、私達は私達なんですから」
ファルは肩に担いでいたレモン色の髪をした男の子を地面に落とした。
「ノイモーント・クレセント、起きろよ」
「なんでフルネーム……起こし方考えてよ、昼間は僕が活動する時間じゃないんだよ」
眠たい目を開けて起き上がり服についた土を払う。
「ノイちゃんは駄目ですよ?」
「ちゃん付けないでよ」
「昼間は全く戦えないのですから」
「戦えないんじゃなくて寝る時間なんだ」
すると三人の前に魔女が現れた。
「わお、ドラゴンが三体もしかも人の姿」
魔女の周りに炎の円ができる。
「フラサ、相手悪いな」
「ですね、どうします? 私は別に相手をしても良いですが?」
「いや、俺が行くから二人は別の方に行け」
フラサは頷いて寝直してしまったノイを抱えてファルと魔女から離れる。
ファルは帽子の飾りの紐を引く、すると飾りは解けファルの手の中で細かい針のついた棒に変わる。
「フフフッ……色を司るドラゴンがまともな攻撃できるのかしら?」
「うるさいな、魔女、俺は色を消すことも可能なんだぞ?」
魔女は四方を炎で囲み、火柱を何本も立てる。
ファルはそれを避け魔女の背後から棒を振り下ろすが魔法陣に止められる。その魔法陣を足場にして距離を取り武器を戻し火柱の間を走り回る。
さすがに直接攻撃対策はしてるか……
「それで撹乱してるつもり?」
炎でファルを追うだが、水色に変わった針のついた棒を振りかざされ炎が水蒸気になり消えた。
「!……何したの?」
ファルは黙ったまま棒を白色にし、地面に立てる。すると地面だけ白色へと変わった。
「ルーブルさ〜ん、グフッ……」
ルウブがいきなり洋館の前で立ち止まったのでバムはルウブにぶつかった。
ルウブは気にすることなく携帯を取り出し電話に出る。
「何! 魔女が……悪いけどそっちで耐えろ」
『耐えろって何だよ、僕が背低いからって弱いって思ってるよね? まぁ、耐えるんじゃなく事を終わらせるけど、じゃね』
携帯をしまい扉に手をかけるがバムが動かないのに気がつき止まる。
「なしてんだ? 早くしろ」
バムが頷くと洋館へ入っていった。
「バム? どうしたの?」
「いい匂いした……」
「気持ち悪い……バム」
美来は時々毒舌になる。
洋館の中に入ると左右にずらりと扉が並んだ長い廊下が続いていた。
「何これ……」
「すごい広いね、バム」
「いやいや、美来ちゃん外観もっと小さかったって」
廊下の扉には手を触れず真っ直ぐ進むルウブの後をついていく。
「ねぇ、ルーブルさっきの電話って?」
バムの声は無視され歩き続ける。
「ルウブ? さっーー」
美来が質問しようと名前を呼ぶとそれには答えた。
「校内に魔女がでたっつってた、ん? おめぇらこんな所にいていいのかよ? 行方不明だと思われんぞ」
ルウブに言われバムは美来を連れて戻ろうと振り返る、だがその先は廊下が続いていた。
「えっ……」
「残念だな、ハム……入った後直ぐに廊下にかわったぞ?」
あざ笑うように見下ろされバムは頬を膨らませた。
一時間ほどだっただろうか、行けども行けども廊下が続いている。
ルウブはさすがに真っ直ぐ進むのを諦め携帯で時間を確認する。
「何で時間確認するの?」
「……丑満時までに寝たいから」
バムは質問の答えに驚いてルウブの目を見るが、無表情で表に出さないので冗談か判断がつかない。
ルウブは適当に目の前の扉の先へ進む。
その部屋は真っ暗な空間で向こう岸まで吊り橋がかかっている。
「ねぇ、美来ちゃん吊り橋効果って知ってる?」
「知ってる……何で?」
「これ……この人が女好きがどうか確認……」
ルウブはバムの襟をつかみ掴み投げる用意をしそのまま吊り橋の向こうに投げ飛ばした。
「へっ!? キャー!」
バムは向こう側の壁に激突して床に落ちた。
「お前も飛ぶか?」
「い、嫌だ」
美来はルウブの後ろをついて渡ったが何故だか吊り橋が普通以上に揺れ、美来はつまずいて転けた。
「いてて……うわぁぁ、お、落ちる! ルウブ」
そう美来が訴えかけた途端ルウブは走り出しって向こう側まで渡った。
「えっ!?」
バムが怒ってルウブの胸ぐらを掴みかかるがルウブは顔をそらすだけだ。
ルウブが渡った後美来が一人で渡ったがあまり揺れなかった。