付きまとう理由
「あっれ〜あのドラゴン、俺より魔力と想像源高いじゃん……っははは、あいつの体欲しいな……今より強そう」
「メラン? 何を見ているの?」
ヘルバがメランの隣に現れる。
メランが見ている者を見てなるほどと笑みを浮かべた。
「あれはダメよ? 依り代にちょうどいいのだもの……ぁあ! いい作戦を思いついたわ」
「ダメなんですか……勿体無い、ヘルバ、今回は私は手を貸さないその作戦失敗して欲しいからね」
メランは木から降りある場所へ向かう。
いいさ、手の空いてる魔女ぐらいいるだろう……助けるか……あのチビ
「平凡な日常の裏で巻き起こる密かな計画!! な、ソテ! これ程面白いシナリオはないだろう?」
「知らないわよ、久しぶりに教室に来たと思ったら何よエリ! あなた寮の自室にこもって物語書いてたの?」
ソテ達の班は美来の所と同じように女二人男一人の班だった、その為か男のエリスンは欠席気味で依頼へ行っても全く仕事をしなかった。何処から一万円で足りなくなった時の生活費を補っているのか不思議なほどだった。
それなりに強く足手まといにはなっていないのでソテとクロは口出しなどはしていない。
「クロ、エリを教室から追い出して今日も欠席にしていいわよ」
「そうですね……エリさん、この世界に平凡なんてないじゃないですか」
ルウブが教室に入ってくるとソテは黙って席につき固まってしまった。
「ねぇ、美来ちゃん、ルウブってなんでこの三日ずっとこのクラスにつきまとってるんだろ?」
「えっ? そんなに経ったの?」
最近ではカクランだけでなくごく一部の生徒がいたぶられているのを眼にする。
教室では時々槍を出してそれをたてて抱え込んで資料のようなものに目を通したり短い休み時間に行儀よく座り何処から出したのかかき氷を食べていたりする。それも常に無表情だ。授業の邪魔は全くしない。時々居眠りをしているが息をしているのか疑うほど静かだった。
ルウブを見て怯えているのはソテ、カクランにレゲインぐらいだ。
「あ、見て美来ちゃん、またシャンが居眠りしてる所襲おうとしてる」
「その言い方やめろよ、気持ち悪い……」
シャンは後ろからマフラーの先をつかみルウブに飛びかかったが、ルウブは寸前で目を覚ましマフラーを握りシャンを振り飛ばした。
シャンが壁にぶつかりめを回しているのを確認し何事もなかったように座って眠り直す。
「何のアトラクションだよ……」
「アトラクションにしては危なよ……ナーゲル止めないのかな?」
いきなり扉が勢いよく開き教頭が入ってきてルウブの前に立つ。
「おい、脱獄犯……どういう事だ!? 魔女が逃げ出しただろ!!」
ルウブは目を開け教頭を見上げ姿勢を正す。
「脱獄犯? 侵害じゃねーかお前らの操作で冤罪くらってんだ、そんなにもあいつを殺してぇのか?」
「何の事だか分からんな、若いリーダーよ常識を知らんのかね?」
立ち上がり教頭を上から睨みつけた。
「馬鹿だな強気を装って事故が起きて、それを全てドラゴンに押し付けて……まともに助けようとなんて思えねーな」
「何が言いたいのかね?」
「そりゃあもちろん……」
ルウブは報酬の金を要求していた。
美来は今、一八歳の若者が大人の影の部分に堕ちているところを見てしまった気分になった。
教頭はこのまま帰られるのも困るという事で報酬を出し、必ず魔女二人を始末するよう取り付ける。教頭が悔しそうにしているのを見てルウブは口だけ笑っている。不気味だ。
「それと、もう一つ……内部の敵に気がつかねぇのは変だろ」
「何の事……を?」
ルウブはレゲインを目の恥で捉えて教頭に視線を戻す。
レゲインはそれを見て教室からゆっくり出て行った。
「教頭、このクラスの生徒の母親の種族をしっかり確認するべきだと思うけどな」
「分かった、ルウブの言う通り調べておこう」
教頭は了承をして教室を後にした。
バムは美来の袖を引っ張ってレゲインを追いかけようと訴えかける。美来がそれに頷くと美来の腕を引いて教室から出て行く。