見張る理由
「何で俺らがこいつ見張ってんだよ?」
「私に聞かれてもルーブル見張る理由無いし」
前を歩いていたルウブは後ろを向き口元をマフラーで隠しバムを見た。
「ルウブだ、伸ばすな。何でさっきからオレの後ろついてくるんだよ? 気持ち悪いな」
それだけ言ってまた進み出す。
「キツネに言われただけだっつーの」
カクランは自分がボコボコにされる授業が終わった後、美来にルウブが他の誰かに怪我を負わせないよう見張っていろと頼んだ。
「あの、ルウブって何してる人なんですか? 生徒?」
「に見えねーだろどう見ても、ドラゴンだし俺らより強そうだしよ」
レゲインはまだ怯えているのか少し後ろの方を歩いている。
「ルウブ?」
「……うるせぇな、答えるから黙れ。ルウブ・グラシエース、ブリザードラゴンのリーダーだよ。これでいーな」
「ルーブル、じゃあリーダーに渡される花紋章見せてよ?」
バムがドラゴンと聞いてやけに嬉しそうだ。
そんな大切な物を簡単に見せるはずがないとレゲイン、美来は思っていたが、ルウブはポケットから紐につながれた手のひらサイズの鉄の板をバムに渡した。
「はぁ!?」「えっ?」
「えっ!? いいの!? 凄い本物だぁ〜見て美来ちゃん、ほら」
丸い鉄の板にはうす水色の氷のような花が彫られていた。
「お前馬鹿じゃねーの!? そんな大事なもの……権力に忠実そうに見えるのに」
「大事なもの? そんな鉄くずが? 馬鹿言うなそんな物誰かに投げつけてぇよ」
ルウブは当然のように道を外れ飲食店へ入った。美来とバム、レゲインもルウブに続いて店へ入る。
「かき氷イチゴ味でお願いします。お前らも食うか? そこのコウモリ、ケーキとか」
三人ともいらないと首を振るが、そのシュールな光景を目にしてバムは堪えきれず小さく笑っていた。
「ルウブが奢ってくれるんですか?」
「ぁあ、そいつらが」
ルウブが指さした店の奥を見ると上級生の三人がボコボコにになって倒れている。
おいおい! キツネに頼まれたはずなのに犠牲者でてるぞ!?
「ゲレイン私たち安全なのかな?」
「お前らは安全なんじゃね? 俺は危ない」
「ルウブってカクランとどういう関係ですか?」
バムとレゲインは信じられないという目で美来を見ている。
ルウブはかき氷を食べる手を止めスプーンをくわえたまま考え込む。
「どういう……? 異父兄弟? まぁ、そんな所だ」
にしては目の形と色以外は双子並みに似ている。
その後もルウブは美来達が止めようとしても突っかかってくる奴を殴り飛ばしてしまっていた。顔色一つ変えずに。
「魔女の気配なんて一人と牢獄の奴らしか感じねーじゃねぇか」
しかも柄の悪くなさそうな奴らもつけあがってかかってくるし。
「あー! 昨日助けてくれた人!」
美来が昨日の出来事を今思い出しルウブを指差して叫ぶように言ったのをルウブはおかしなものを見るいつもの目で見下ろしている。
「美来だっけ? 頭打ったのかよ? 一応、被害でねぇように魔女始末したつもりだったんだけどオレのせいか?」
美来の頭に手を置いて髪をかき回すようにしながら顔を覗いている。声のトーンなどさっきと変わらないので心配しているのかもわからない。
美来は棒立ちになって魂が抜けたようになっている。
「美来ちゃんは忘れっぽいのでそれが普通だよ。離してあげて」
「え、何か犬みてぇだな」
ルウブは美来から手を離した。
レゲインは三人と距離を置いて見ていた。
あのドラゴン冷静すぎだろ……逃げたい