外せない理由
「な、泣くなって! やめて、僕誤解される」
「ご、ごめんね……」
カクランは顔を上げアイレが死んでいるのに気がついた。
「誰が……てかまた面倒な……美来、行こうかこの事は僕が部屋でシャワー浴びた後に報告しておくから、お腹すいたし」
「ふぇ?」
よっぽど疲れているのだろう、美来に笑いかけているが少しだるそうだ。
そこにシャンシャスが走り寄ってきた。インコも一緒だ。
「先生! み、美来ちゃん魔女に襲われてるの見て逃げてごめんね……」
美来はシャンを見て頷くのが精いっぱいだった。
カクランは立ち上がりシャンの肩に手を置いた。
「おっ、ちょうど良いあの魔女の事近くの先生に伝えてくれるかな?」
「えっ? 良いけど……分かった伝えてくる」
カクランは上手いことシャンに面倒な事を押し付けて美来を連れ自分の部屋に戻った。
「あれっ?」
なんで私カクランの部屋に上がりこんじゃったんだろ? お茶まで出してもらって……
脱衣所の方からカクランの叫び声が聞こえたりもしたが美来は気にせず座っていた。
カクランは頭にタオルをかぶり耳を気にしながら出てきた。
「耳が痛い……」
「ピアスなんてつけるからだよ、外せば良いじゃん」
「僕だって外したいよ、その辺に置いて無くしたら殺されるし……まぁその時が来たら外せるし良いよこのままで」
傷がふさがっていないのか穴の周りは赤くなっている。
「耳腐るよ」
「怖いこと言わないで!?」
バムもレゲインも一人で取り込んでて邪魔できないし暇だったんだよね……にしてもカクラン何してたんだろう?
カクランはさっきまで着ていた服を丁寧にたたんでマフラーと一緒に隣に置く。そばのワイン瓶を取り栓を抜く。
美来はそれを見て止めに入った。
「カクラン!!」
カクランの目の前にナイフを突きつけた。
「えっ……な、何?」
「家族でもない未成年者の前で飲酒しないで!」
「分かったよ、ナイフ下ろして……? なんでそのナイフから血の匂いがするの?」
美来は持っているナイフがどう使われたか思い出しとっさにしまう。
なんて物を人に向けちゃったんだろ……
「何があったんだ?」
「えっと……カクランに似た人が居て追いかけたら魔女にあって、その人に助けてもらったんだけど武器が使えなかったみたいで貸せって……」
顔をあげるとカクランの顔が引きつっている。
「オレに似た奴……ね……マジかよ、美来が殺したんじゃないんだから気にしなくて大丈夫だよ」
そう美来の頭を撫でて笑いかけた。
美来は一瞬安心感を覚えるがどういう状況かというものを理解して後ろに引きさがりカクランを蔑んだ目で見た。
「何してるの!?」
「あれ? ごめんごめん、そういえばレゲインとバムはどうしたの? 模擬戦?」
「うんん、二人とも個室と自室に閉じこもっちゃった、あの、カクランのお母さんって人間なんだよね?」
「えっ! なんで知ってるの?」
「どんな人?」
カクランは美来が母親の話を持ち出したのに驚きしばらく固まっていた。ゆっくり立ち上がり机の引き出しの中から写真を取り出し美来に渡した。
写真にはカクランと髪の色が同じ母親らしき女性と女性を挟むようにして二人の男性が写っていた。
右側の青い髪の男性から順に指をさし名前を教える。
「ブリザ・グラシエース、サラン・カランス、ラクカ・アニール」
「えっじゃあこの銀髪の狐のラクカって人がお父さんなの?」
カクランは美来の目を見て頷いた。
「僕の本名、カクラン・アニール・カランス」
苗字の部分が長くなった。
「なんだけど、まぁ長いからどっちでも好きな方名乗れるんだよ母さんが二人と結婚しなければアニールだけだったんだけどね」
「二人!? じゃあこっちも父親!?」
「実ではないけど」
ここのひとはどうなっているの!?
この世界では妻か夫のどちらかが合意のもとでなら二人と結婚できる。その場合子供は好きな方の苗字を名乗れる。
美来の反応を見てカクランは笑っていた。
予想通りの反応が来たので嬉しかったのだ。
「僕はそんなの御免だけどね、明日には授業の方に戻るから」
「うん……良かった〜これでレゲイン踏み潰さなくて済みそう」
「??」




