あの回る遊具
美来「この世界って成人式とかあるの?」
レゲイン「あるのか?」
バム「あるんじゃない? 二十年生きたらとか?」
「…………」
レゲイン「この中で二十年生きてる奴いねぇだろ」
美来「成人の日って新成人の人がやたらと事故起こすように見えるよね」
レゲイン「間引きされてるみてぇだよなそれ」
バム「あるかどうか、先生に聞けばいいのに」
レゲイン「どうかって話はもう過ぎたのかと思ってたんだけど……」
バム「へ?」
美来「本編よろしくお願いいたします」
「マジですか!?」
店街内の広場のベンチの前でシュウイは思わず大きな声を上げてしまった。
「マジマジ」
シュウイの前でベンチに座り携帯を見ていたカクランは適当に相槌を打つ。
「で、でも私、魔女ですよ?」
「魔女だからでしょ、校長は魔女対策用の教師って言ってるけど僕に協力しての事だと思うよ」
シュウイだけでなく牢屋から救出されたあの男もヤギの補佐役として使われていた。ヤギ自身は薬の調合ができなかったので助かっているとの事だ。
「魔女対策ですか……間違えて殺されませんかね?」
「大丈夫だって、君一人じゃなくてもう一人教師つくし、その人は魔女嫌いじゃないからさ、色々と大きい人だけど」
「い、色々とですか……不安しかないですね」
不安がるシュウイにカクランは座るよう促し、近くの店で買ったケーキを渡す。シュウイは勿論そのブルーベリーケーキに食いついた。カクランが軽く引く程に。
「魔女って本当に甘いもの好きだったんだ……」
「はい! 大好きですよ。幾らでも食べられますって言ってくどくて気持ち悪くなるんですけどね」
その様子を影からアウラーが見ていた。
カクランと普通に話しているシュウイを見て不安しか浮かばなかった。カクランが女性といるのは珍しくないが、対応の仕方が違うのだ。
はたから見れば少し距離を置いた感のある接し方だ。アウラーには照れ隠しにしか見えなかった。
「あれ? 先生。何してるんですか?」
突然、背後から話しかけられアウラーは驚き、飛び跳ね隠れていた建物の壁に背を付けた。
「どうしたんですか?」
「えっ、な、キャロットちゃん……驚かさないでよ」
「あたし、普通に話しかけただけですよ?」
キャロットは建物の影からその先にいるカクランを見て首をかしげる。
「もしかして、狐の先生見てたんですかぁ?」
キャロットが口元を袖で抑え笑うとアウラーは誤魔化すためキャロットに飛びついた。
「ぎゃうっ!?」
「そんな事するわけないじゃん」
「せ、先生っ! 苦しい……オレ男だからやめ……て……」
「止めろって! おい! ディネ!!」
円形の遊具を改良した物の中で叫ぶレゲインを無視してディネは機械を動かしていた。
廃材から見つけたそれを見て乗りたいと言ったのはレゲインだが、延々と回せとは言っていない。
「あの遊具って危ないって理由で消えたんだよね」
「バム、詳しいね。レゲイン大丈夫かな?」
かなり勢いよく回っている。
「大丈夫大丈夫、楽しんでるじゃん」
ただの勘違いだ。
「やめっ! きっ……」
その言葉を最後に遊具の方から声が聞こえなくなった。
美来とバム、ディネは呆然として固まっていた。
「は、早く止めないと! 絶対酔ってるって」
そう言っても誰も止めないので美来が慌てて機械を止めると、遊具は減速していく。だが、それが逆に酔いを促進させた。
止まった遊具からは顔色が悪くなって歯を食いしばり口を押さえたレゲインが這い出してきた。
「回せって言ったから。ぼくは限界に挑戦するのかと」
ディネの言葉にレゲインは眉を寄せ目を瞑っているだけで反応をしない。
バムが軽く揺さぶると苦しそうに横向きになる。美来は流石にダメだと思い止めに入る。
「やめてあげなって、我慢してるんだから。揺さぶると……中身が」
しばらくして酔いが治りレゲインは起き上がった。
「気持ち悪りぃ……こんな事になるとは思わなかった」
「回って酔うって人間と同じだよね」
「回ったら酔うのか?」
美来はレゲインを見て苦笑いをした。
まず、そこを知らなかったんだ……。
バムが不意に聞いた。
「そういえば、ディネは何年生きてるの?」
「ぼく? ……二十一? ぐらいかな」
美来とレゲインは自分より年上だと知り驚き顔を上げた。
「マジで?」
ディネは頷き、戻ってきたインコの方に手を伸ばし腕にとまらせた。
「あ、バカにしてる? 一六歳で君より背が低いからって」
「被害妄想だ。ところでよ、エリオスは?」
ディネが視線を落とし口を開こうとするとインコが話した。
「どっか行った。どっか行った。ディネ寂しい? 寂しい?」
それを聞いたレゲインとバムが笑い出した。
ディネは二人から目をそらしムッとしていた。




