いた理由
「皆んなどうしたんだ?」
いきなり誰も居ないはずの部屋で声をかけられ未来、バム、レゲインは驚いた。
振り向くと怠け者を模したアイマスクを頭に付け枕を脇に抱えたナーゲルが立っている。
「何驚いてんの?」
「ゲレイン……?」
バムはナーゲルをレゲインがグループルームに入れたのだろうと睨む。
レゲインは呆れた目でバムと目を合わせる。
「俺が友達いるとでも?」
「あれ? ナーゲルっていつもシャンシャスといたよね?」
「未来ちゃんってそういうのは覚えてるよね」
ナーゲルは寝癖のついた頭をさすり困ったような顔をしている。
「それが……シャンの奴さっきからどこにもいないんだよ見てない?」
「んな奴見てねーよ、捜しゃあいいだろ?」
レゲインの冷たい対応にナーゲルはさらに困ったように頭を抱える。
「俺一人で捜すなんてむりだよ、もう一人は医療館行きになったし……」
きっとワニの男子の事を言っているのだろう。
「美来、鍵無くしてねーよな? こいつが入ってるって事は鍵閉まってねぇって事だろ?」
「ゲレイン、無駄だよ閉めたかどうか覚えてないって」
美来の鍵の閉め忘れを疑ったが、ナーゲルが小道具を取り出し白状した。
「俺がピッキングした自分のルームだと勘違いして、謝るから捜してきて」
美来はそれを請け合おうとするがレゲインが制止する。
「やめとけ、魔女に遭遇したら死ぬぞ。どうせ立入禁止のエリアに入れってんだろ?」
「何でわかるんだ?」
ナーゲルは不思議そうに首をかしげてレゲインを見る。
「何でって、入ってくの見たし」
「はぁ!? 何でシャンを止めなかったんだよ!!」
ナーゲルはレゲインの胸ぐらを掴んで軽く持ち上げ揺する。ダラっと力を抜いて顔を背けているレゲインは呆れた表情をしている。
「あいつ鬱陶しかったし馬鹿だなぁ〜って。子供から保護者が目を離すからいけねーんだろ?」
ナーゲルはいつもシャンシャスといる自分に対して癪にさわるような発言をされレゲインを投げ飛ばしそうな勢いで突き放した。
ーーゴツッ!
バムがレゲインの頭を殴る。
「いっ……何すんだよ」
「ゲレインだって悪いじゃん! ほら、報酬は美来ちゃんと私で分けるからレゲインは無償で来るんだよ!」
バムがレゲインを引きずりグループルームを出て行こうとするのを見たナーゲルは軽く手を振る。
「よろしく」
「え? ナーゲルも行くんでしょ?」
「はい?」
ナーゲルは三人に任せて留守番をしようとしていたらしい。美来はそんな事はつゆ知らずナーゲルの腕を引いてバムとレゲインを追いかけた。