降参
美来「ルウブは自分のお父さんの事どう思う?」
ルウブ「オレの父親? それは……カクの父親の事か? それとも」
美来「両方」
ルウブ「カクのお父さんは好きだよ。育ての親で優しいし多分。よく一緒にいたからな……自分の親父はあんまり好きじゃない一緒にいた時間も短いしよく分からない人だからな。お前は?」
美来「記憶がないから分かんないけど、多分好きだよ多分ね」
ルウブ「お互い様だな。オレも親父の顔見たの産まれて何十年か後が初めてだったからな。写真では見たことあったけど」
美来「若い時らしき写真なら私も何度も見たことある。複雑だね……家族関係が。本編よろしくね」
美来は朦朧とする意識の中ぼんやりと光る視界の中を覗き込むマスクをした人の姿を見ていた。背中には冷んやりと冷たい台の感覚が伝わってくる。
ここは……? 夢の中じゃ無い。バム、カクラン……レゲイン? 何処に……。
一度味わったことのあるような喪失感を感じ涙を流した。
バムとカクランは見張りを気絶させ館の中に堂々と侵入した。
「僕は少殺主義だけど、バムは……」
「焼殺? 焼き殺すの?」
「違うっ! 出来るだけ人は殺したくない派なの。バムは?」
「私は、その時次第かな。美来ちゃんが止めればやめるよ?」
バムは顎に当てていた手を離すとカクランを見上げ満面の笑みでそう言った。
「だからってレゲインの家の使用人殺すなよ?」
「勿論」
カクランは黙ってバムを見ていた。そして深く息を吸いため息をつく。
「さて、誰もレゲインの居場所を知らないわけだけど、僕も君も探索能力はないわけでどうする?」
「お父さんの居場所なら聞けるんじゃないかな?」
その時、二人の前に黒髪の男が立ち塞がった。テラスだ。
「私は戦闘向きじゃないんだがね。君ら二人にレゲインを渡すわけにはいかない」
テラスはネクタイのように着けていたコールを外し頭に付け直す。コールの形はレゲインの物と同じだ。
「噂をすればってやつだね。バム、僕が足止めしてるからレゲインを捜してきてくれるかな?」
バムは黙って前に出るがカクランを確認するように見る。
「大丈夫、生徒の親を殺したりしない。ルウブじゃないしね」
それを聞くと黙っておくへ向かった。バムを攻撃しようとしたテラスの武器をカクランが槍で弾いた。
「バム達を殺させるつもりもないし、お前に負けるかもない。ガキが」
テラスはその言葉に目を見開き驚くが短剣が落ちる前に表情を戻し体制を立て直すと同時に短剣を握り直した。そしてカクランの槍を押し返す。
カクランは弾かれた腕を上げたまま後ろに跳びのき腕を下ろした。
「誰がガキだと? お前こそガキだろ」
「お兄さん、正々堂々と戦ってあげるよ」
肩に槍をかけ余裕の笑みを浮かべるカクランにテラスはムッとした様子で二本の短剣を構えた。カクランもそれをみて足を一歩出し片手で槍を構えた。
目が覚めたレゲインは壁に投げ飛ばされ噎せながら滑るように座り込む。視点の合わない中で男が頭を壁に押さえつけた。ゴツっという音と衝撃が頭に響いた。そのまま壁にするように立ち上がらさせられる。
痛い、苦しい。
「やめて……母さん……」
腹部を殴られ床になぎ倒される。
「ゲホッゲホッ……!」
起き上がろうとした時に自分に向けられるつま先が見えた。次の瞬間腹部にさっきよりも強烈な衝撃が加わる。
駄目だ、目の前を見ろ。アレは母さんじゃない。
立ち上がろうとするレゲインを殴り飛ばす。
「あぁ、間違えて顔殴っちまった」
口の中に更に血の味が広がり舌が痺れる。少し口を開くとコップの水でも含んでいたかのように血が流れ出た。口を閉じると歯茎に違和感を感じゴリっと何か硬いものを噛む感覚がした。
「うっ……!」
それを口から出すと二本の歯が血の水溜りに転がった。驚き震える手で殴られた頰に触れる。
そこでレゲインは拷問を受けて初めて目に涙を浮かべた。
今までレゲインが無抵抗だったのは魔力が使えないからではなく磁力の働くものがその場になかったのだ。
「やめて……くれ。もう」
駄目だここで折れたら。今まで耐えてたのは、自分が何も出来ないって認めたくなかったんだ。じゃあ、歯向かわないと……。
壁に手をつき震える足で立ち上がる。
「もう、分かった。父さんの言う通りにする。やめて……」
立ち上がったにもかかわらずその場にベッタリと座り込んだ。




