逃亡
海にて
カクラン「なぁ、ルウブ」
ルウブ「クシュンッ!! あ? 何って? 寒くて耳が暑くてさらに汗で冷える」
カクラン「ルウブ、夏向きじゃないよ。泳げないんだし普段着でよかったんじゃ? 水着にマフラーって」
ルウブ「今は泳げる。普段着着ると暑くて今より冷えるってんの」
カクラン「それよりさ、ブーメランの水着って皆んな下着トランクスとか何とか言ってるのに何でアレ履くんだ?」
ルウブ「知らね。その話題付いていけねぇよ」
カクラン「僕らズボン型で上着派だからね……あっ!! 女の子達居る! 行ってくる」
ルウブ「あいつ、何でチャック開けて上着、着てんだ? 暑いならやめればいいのに……クシュンッ! あ、本編よろしくな」
バムはいつものメンバーでお昼を食べに来ていたが初めて感じる気まずさに食事どころではなかった。
レゲインと美来はあれ以来口を聞いていないようでお互い目すら合わせようとしない。
「み、美来ちゃん。怒ってる?」
「怒ってないよ」
レゲインは未だに子供の姿のままだ。他校の生徒もウロついているので嫌でも三人で行動する。
食事を終えグループのメンバールームへ向かう。
「ゲレイン、怒ってるの?」
「は? 何で俺が怒んなきゃいけねぇんだ?」
バムは変化のない二人の返事に肩を落とす。すると、レゲインが足を止めた。バムと美来も立ち止まる。
「やっと見つけた」
突然響いた声の方を向くとリュネルが立っていた。反対方向にも人が立っているのを見ると三人は挟み撃ちにされたのだと悟る。
「バム……あいつら」
バムがゆっくりカメラを取り出そうとすると後ろから飛んで来た針に手を刺される。
「っ!?」
「下手な真似したらお前は殺すぞ」
リュネルが魔石が埋め込まれた白い手袋を着けるのを確認したレゲインはポケットから魔石を取り出し男の方へ投げる。その瞬間、リュネルが前に踏み出した。美来はとっさに後ろに退いたお陰で赤い炎を纏った拳に殴られずに済んだ。
後ろの男は大剣を掲げ、レゲインが展開させた魔法陣から放たれる矢を防ぐ。バムは迫るリュネルを確認してから針を抜きスライデングをし、リュネルの足を蹴り飛ばした。
レゲインは二人が抗戦する中、男の脇を駆け抜けて逃げ出した。美来もそこから逃げようとするが効力が尽きた魔石が落ち、矢を防ぐ必要のなくなった男はレゲインを諦め美来の腕を掴んだ。
バムが美来の元へ行こうとするとリュネルは男に何かを投げ渡した。それを掴んだ男は下から上にそれを振り上げた。すると空間に切れ目ができ美来を連れその中へ消えて行った。
「美来ちゃん!!」
バムが伸ばした手は空を掴み間に合わなかった。すぐに後ろから感じた熱に反応し横に飛び退く。バムのすぐ横を炎が飛んで行った。
「何で美来ちゃんを!」
「ついでだから二つ依頼を受けてたのよ。何故あんな人間に多額の金をかけるのかは知らないけれどね」
リュネルは腕を組みレゲインの向かった先へ歩いて行った。
レゲインはその後一日中逃げ続け五班のグループルームへ駆け込んだ。
レゲインを見たルネンは慌てて丁度出来上がった薬を持って来る。
「あ、あの。できましたよ。元に戻るのに時間がかかるので……その早めに飲んだ方がいいかと」
レゲインは薬を受け取るが予定より早く出来上がっていることに驚いていた。するとキャロットが立ち上がりレゲインに近寄る。
「リア学園の奴らに襲われる前に完成させてあげようとしたんだけどねぇ〜その様子だと遅かったみたいだね」
レゲインは目をそらし薬を無理やり呑み込んだ。
「それで? 二人は?」
「……襲われてからどっちとも会ってない。バムの事だから大丈夫なんだろうけど、美来は」
「まぁ、戦争の真っ只中で同僚置いて逃げた兵を責める気は無いけど」
キャロットの例えにレゲインはムッとする。それを見たキャロットは誤魔化すように手を口元に当ててニッコリとした。
「あたしはね」
誰かにとやかく言われる筋合いはねぇよ。
「そんな顔されても。あたしは一人で逃げたりしないもん」
今までの事を見られ心を読まれた嫌な気分になりレゲインは黙ってグループルームから出て行った。
「先生!!」
ようやく見つけたカクランにバムは勢いをつけ過ぎ思いっきりぶつかった。
「っ……どうしたの?」
「み、美来ちゃんが」
慌てて話すバムの言葉は聞き取りづらくカクランは落ち着かせ方を考える。バムを受け止めた後に自分から離すため掴んでいた腕の先に視線が行った。
「バム。これ、血が滲んでるけど、止血できてないんじゃ?」
「こ、これは」




