暴走
カクラン「まぁ、レゲインは見ため十六歳でも中身十三歳だからね。他人の色恋沙汰見て面白がる年頃なんだろ?」
美来「その内無関心になるみたいな言い方だね」
カクラン「レゲインなりそうだろ? 僕はどっち付かずだけど」
美来「カクランは色恋沙汰じゃなくて女性そのものに興味がーー」
カクラン「言わなくていいから!! 連れて帰ってはないからね!?」
美来「唇に興味があると……そういう」
カクラン「もうやめて美来! 僕のイメージが崩れるから! 頼むから……」
美来「カクランなく前に察してあげて。本編よろしくね」
店ではまだ一時間も経っていないというのにルウブが席を外していた。
「全く、ルウブってば慣れないことするから」
トイレは存在しないもの手を洗ったりする為の水道と椅子だけ設置された部屋はあった。ルウブはそこで休んでいた。
ドラゴンの二人が五人の女性の相手をする中カクランは隣の一人に耳打ちをする。
「ルウブって何かあったの?」
「分からんな……正直俺らも心配なんだ。今までこういう場にすら行きたがらなかったリーダーが行く気になるなんて」
カクランは眉間にしわを寄せワインを一口含む。すると隣のドラゴンがそっと言った。
「自分の身に危険を感じて、リーダーの居ない群がどうなるかまで考えた結果なら何となくだが……」
「それって後継者の問題? それでルウブ緊張してるわけだ、慌ててるのかな?」
ドラゴンはさあなというように肩を竦めた。
カクランはルウブと話をしようと考えたが今行けば無視されるのが目に見えていたのでやめた。
美来たち三人は丘の上にある家に来て居た。
「ねぇ、血の匂いがするんだけど」
バムとレゲインを見るが二人とも何も言わない。家の窓のガラスは割れ、板が乱暴に打ちつけられている。バムが先導し軋む扉を開け中に入る。
家の中は荒れ血の匂いが漂っていた。
「こりゃあ生きてねぇかもな」
「レゲイン、生きてるって奥で」
美来が言うように奥へ行こうとするとソファーの横に血痕があった。
「誰の血だと思う?」
「バム、聞かないでよ」
奥の方へ向かうと泣くような笑い声が聞こえてきた。声の聞こえる部屋の半壊した扉を開けると割れたガラスなどが散らばっている中、男性が棚にもたれるように座っていた。
「これで安定だ……ケイヴ帝国にも生贄を渡せた、薬を金に換えて借金も返せたんだハハッ」
三人は無様な男を見下ろす。男のコールは襲われた時にやられたのか床にビリビリに破け散らばっている。
「こいつの血じゃなさそうだな」
レゲインはそう言ってバムを見上げた。
「なぁサティ……ケイヴ帝国の奴らが攻めてくることもなくなった死なずに済んだんだ、ただの薬剤師が敵わない相手を追い払ったんだハハハハッ」
男の精神状態は末期のようだった。レゲインはため息をつき男からは薬の情報を聞き出せないことを悟ると手の届く棚を漁り始めた。美来は台の向こう側にあるモノを見つけ気まずそうにバムを見る。
「あのさ、サティってこの人の奥さんかな?」
「子供かも」
「だとしても、二人とも……」
バムは美来が見ている台の向こう側を覗き込んだ。そこには無残に刺し殺されたであろう子供と母親の死体が倒れていた。レゲインも台の上に乗りそれを見ていた。
「こいつ、精神的に死にかけてるけど回復すると思うか?」
「映画とかでこういう人回復した試し無いよね?」
「美来って意外とそう言う話合うのな」
バムが男に近寄り何かを話そうとした。それを見た美来は慌ててバムの腕を引く。
「バム、やめた方がいいよ。暴れ出すから」
「……美来ちゃんの予知夢ってある意味便利だね」
バムがそう言うと美来は俯いて黙り込んでしまった。
「おい、美来……教えなくてもヤバそうなんだけど」
レゲインがまずいと言う表情で男を見る。バムと美来が男に目を向けるとレゲインは慌てて資料らしきものを漁る。
「予知夢よちむよちむ……」
表情が消えた男の口が忙しなく動いている。固まっている美来とバムの目の前で男はゆっくりと立ち上がった。
「げ、ゲーム。四時半ってそんなヤバい団子だったっけ?」
資料を漁り続けているレゲインはバムの言葉を聞き取り呆れる。
「バム、お前、焦り過ぎて単語が無茶苦茶になってんぞ」
そう言った瞬間、男の口が止まった。しばらくの沈黙の後いきなり男が美来の肩を掴みにきた。
「えっ!?」
「お前だ! お前があいつらの探していた。お前さえ連れて行けばサティは!!」
男の罵声に美来は心臓が縮こまる様な嫌な感覚に襲われ目を瞑った。立った拍子に台の裏で隠れていた二人の死体が男の目に映った。
「あぁぁあああ!! 俺は俺は! まだだ、まだサティは死んでなどいない!!」
美来を突き飛ばし側に落ちていた鉈を手にする。それを見た美来は慌てて立ち上がった。その瞬間大きな音が響き渡り、バムが見た時には美来が倒れていた場所には深く鉈が突き刺さっていた。




